920 MHz帯を知る ―― 今話題のスマートメータやHEMSで注目の通信技術!!

藤田 昇

tag: 組み込み 電子回路

2014年6月25日

 920MHz帯の特定小電力は,よく使われている2.4GHz帯無線と比べて通信距離が長く,屋外で数100mは届きます.伝達速度も100kbps以上が可能で,スマートメータやHEMS※1等への応用が期待され注目を集めています.
 また,業界団体「Wi-SUNアライアンス」よりHEMS向けの規格も出されています.すでにスマートメータやWi-SUN※2に対応した無線用LSIがロームグループのラピスセミコンダクタから発売されており,今夏にはWi-SUN対応の無線モジュールがロームより発売されます.ラピスセミコンダクタ株式会社 LSI商品開発本部 無線通信LSI開発ユニット 工藤 康氏からお話を伺いました.

※1:HEMS(ヘムス):Home Energy Management System
※2:Wi-SUN(ワイ-サン):Wireless Smart Utility Network

 

ラピスセミコンダクタの工藤 康氏

 

 ●伝搬特性が優れ,高速通信が可能な920MHz帯

 920MHz帯の特徴をこれから見ていきましょう.免許不要でディジタル・データ通信でよく使われている400MHz帯,920MHz帯および2.4GHz帯の比較を表1に示します.920MHz帯の特徴は程よい通信距離と伝送能力にあり,通信距離は2.4GHz帯の10倍,伝送速度は400MHz帯の10倍以上となります.

 別の側面では,2.4GHz帯は,無線LAN,Bluetooth®,ZigBee®などが重複して割り当てられており,干渉や輻輳による機能低下が問題視されていますが,920MHz帯は干渉が少ないことも特徴のひとつです.また,電波の回り込みが大きいのでビルの陰などにも届きやすくなります.920MHz帯は,距離や到達性などの伝搬特性が優れ,高速通信が可能で干渉が少ないため,後述のスマートメータやHEMSでの活躍が期待できます.

 

表1 通信距離の比較


 

 ●920MHz帯への移行で送信出力が増強

 従来のテレメータ(遠隔測定装置),テレコントロール,データ伝送用として950MHz(950~958MHz)が割り当てられていました.しかし,アナログ・テレビ放送の停波に伴う周波数再編の中で,テレメータ関係を920MHzに引っ越しさせました(2012年7月).920MHz帯になって周波数帯域幅が広がるとともに最大送信出力が10mWから20mWに増力されました.


<余談ですが,通信距離を伸ばしたいときのヒントを表Aにまとめました.たとえば,送信電力を2倍にすると距離は√2倍になります.>

 

表A 通信距離を伸ばしたいときのヒント

 

●HEMS規格とWi-SUNアライアンス

 920MHz帯はスマートメータやHEMSでの利用が見込まれ,Wi-SUN規格が策定されました.スマートメータは,発送電を効率よく運用するため,電力の使用量をリアルタイムで収集する必要があります.また一般家庭では,現在の電力の利用状況を知ることで省エネに活用でき,これがHEMSの目的です.HEMS向けの規格は,(社)情報通信技術委員会(TTC)でまとめられています.その中には方式が三つあり,方式Aでは,Wi-SUN規格ならびに相互接続方式を策定している業界団体「Wi-SUNアライアンス」が策定したECHONET Liteプロファイルが採択されています.

 Wi-SUN規格は,物理層としてIEEE 802.15.4gを採用し,その上のデータリンク層,ネットワーク層・トランスポート層を規定しています(表2).

 

表2 Wi-SUNが規定するのは第1~4層まで


 

 

Wi-SUN対応無線LSI&モジュール発売

 Wi-SUN規格は,HEMS以外にもM2MやIoTにも使えるので,多くの分野への応用が期待されます.このような背景の元で,今年の夏にロームからWi-SUN対応モジュール(写真1)が発売になります.一個から購入できるので(現時点ではサンプル価格10,000円),試験運用や少量生産を考えている方にも利用価値は高いと思います.

 

写真1 今年夏に新発売するWi-SUNモジュールBP35A1

↓ このモジュールをプレゼントします!(アンケートで3名様に当たります)

 

 このモジュールBP35A1は,Wi-SUN対応のプロトコル・スタックを搭載し,国内電波法の認証も取得済みのためすぐに使えます.またインターフェースはUARTになっており,既存のシステムにも接続しやすくなっています.モジュールの構成は,無線用LSI ML7396B,周辺回路,MPU,アンテナです.
このモジュールで採用されている無線用LSI は,ラピスセミコンダクタが製造するML7396Bです.コアとなるこのLSIの特徴を見ていきましょう.まず,図1にML7396Bのブロック図を,表3に主な仕様を示します.

 次に無線用LSI ML7396Bの特徴を見ましょう.

 

図1 920MHz帯無線用LSI ML7396B

送信用のパワー・アンプにレギュレータが入っているので安定出力


 

表3 ML7396Bの主な仕様


 


●特徴1:広い電源電圧範囲と高い受信感度

  ML7396Bは,電源電圧範囲が1.8〜3.6V(送信電力1mW時)と広く,乾電池動作など電源選択の自由度が高くなっています.またレジスタ設定によってFEC機能(Forward Error Correction,前方誤り訂正方式)を使えば,伝送誤りを減らせるので高い受信感度を実現します.さらに,ダイバーシティ・アンテナ対応なので,マルチパスが多くて伝搬特性が悪い環境でも良好な通信特性を得られます.またRSSI(Received Signal Strength Indicator:受信電力)の読み出しやCCA(Clear Channel Assessment:空きチャネル判定)レベルの変更ができ,個々のシステムにとって最適に特性を調整できます.

 

●特徴2:温度範囲が広く,高い安定度

   ML7396Bは,動作温度範囲が−40〜+85℃と広く,過酷な屋外での用途に適しています.また,周囲の温度変化や電源電圧変動に対して回路的に補償(図1)しているので,周辺環境にかかわらず一定の送信電力(図2)や受信感度が安定(図3)していることがラピスセミコンダクタの特性データから理解できます.

 

図2 ML7396Bの送信電力の温度特性 


 

 図3 ML7396Bの受信感度の温度特性


 


●特徴3:開発に役立つ資料が充実

 ML7396Bには開発に必要な多くの資料が用意されています.例えばデータシートには,ユーザ設定レジスタの詳細に加え,内部フィルタ周波数の選択方法,内部シーケンス・タイミング,フローチャートなどの設計に必要な情報が満載されています.


 またデータ付きサンプルといって,サンプル用のML7396Bを実測したデータとそのLSI本体を提供してくれるので,試作基板を作ったが特性が出ないなどの問題解析に大いに役立ちます.実測データは,送信電力,不要輻射,受信感度,選択度,消費電流など約30項目があります.

 

ふじた・のぼる

 

記事中のWi-SUN対応モジュールをプレゼントします!
(アンケートで3名様に当たります)

 

この記事に関するお問い合わせ先


 

ローム株式会社 http://www.rohm.co.jp/
〒615-8585 京都市右京区西院溝崎町21 TEL(075)311-2121 FAX(075)315-0172


 



 

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