ピンときたら自動撮影,暗闇でも3次元画像 ―― HUMAN SENSing 2013
2013年10月23日~10月25日,エレクトロニクス技術と素材に関する展示会「Tech & Material Solution 2013」がパシフィコ横浜(横浜市西区)にて開催された.本展示会は「HUMAN SENSing 2013」と「ヘルスケアデバイス展 2013」,「3D プリンタ 2013」,「Power & Battery 2013」という四つの展示会から構成されており,今回が初開催となる.主催は日経BP.「FPD International 2013」および「Smart City Week 2013」と同時開催された(写真1).
写真1 会場のようす
「FPD International 2013」,「Smart City Week 2013」と同じ会場内で開催された.

ここでは,「HUMAN SENSing 2013」に展示されていた製品を紹介する.この展示会は,人間の感覚(「視覚」,「聴覚」,「触覚・力覚」,「平衡感覚」)を拡張する技術やデバイスを集めた展示会である.
●脳波を読み取って分析・表現するガジェットを展示
電通サイエンスジャムとニューロスカイジャパンは,脳波を読み取ってリアルタイムで解析し,感性を分析したり,表現したりするガジェット類を展示した.
「neurocam」は,頭につけたセンサから脳波を取得・解析し,装着者が「気になる瞬間」を自動的に記録するウェアラブル・カメラ・システムである(写真2).今回はプロトタイプによる出展だ.
写真2 気になる瞬間を自動記録する「neurocam」

頭部に脳波測定ヘッドセット(米Neurosky社の「Mind Wave Mobile」をカスタマイズしたもの)をつけ(写真3),専用アプリを起動したスマートフォンを側頭部に装着する(スマートフォンとヘッドセットはBluetoothで通信する).慶應義塾大学 理工学部 准教授 満倉 靖恵氏と共同開発した解析アルゴリズムによって「気になる度」を定量化し,脳波の測定値がしきい値を超える(つまり「気になる」と判定)と,その対象を5秒間のGIF動画として自動的に撮影,保存する仕組みだ.
写真3 脳波測定ヘッドセットを装着したところ
センサ部分を額に,電極クリップを耳につける.

GIF動画には,「気になる度」と年月日,位置情報が記録され,アルバム機能を使った閲覧や,SNS(Social Networking Service)によるシェアなどが可能である.手動で撮影するマニュアル・モードもある.コンシューマ向けライフ・ログ・データ収集デバイスとしてだけでなく,都市設計や店舗設計時の感性調査ツールとしての利用なども考えられているという.今後は,より軽量化を図り,装着しやすいファッション性のあるデバイスを目指して改良を進めるそうだ.
「neurocam」と同じように,脳波測定ヘッドセットを使って測定した脳波から感性を分析し,タブレットなどにリアルタイムで感性情報を表示させるキットが「感性アナライザー」である(写真4).「好き」,「興味」,「ストレス」,「眠気」,「集中」の感性を推定する五つのアルゴリズムを搭載し,指定した感性の分析結果をグラフ表示する.例えば,ヘッドセット装着者に複数の商品を見せて特定の感性の変化を可視化し,商品改良などのポイントを分析するといった使い方が考えられる.本キットは,ユーザの無意識に潜む感性を分析して新製品開発やマーケティングに応用したいというニーズから生まれたとのことである.
写真4 「感性アナライザー」の分析画面
「好き度」の変化をリアルタイム表示している.

エンターテインメント寄りの製品としては,既に商品化されている「necomimi」と,商品化が進んでいる「shippo」が展示された(写真5).「necomimi」では4種類,「shippo」では3種類の感性を分析し,その変化に合わせて耳を動かしたり,尻尾を動かしたりする.
写真5 感性の変化に合わせて尻尾が動く「shippo」

なお,「neurocam」や「necomimi」,「shippo」は,脳波や心拍などの生体信号を利用したファッション・アイテムやガジェットを開発するプロジェクト「neurowear(ニューロウェア)」との共同作業によって開発されているとのこと.
●3次元距離画像カメラで環境に左右されない3次元認識手法を実現
オプテックスは,最速60フレーム/sでエリア内にある対象物までの距離データを約2万点のポイント(画素)でリアルタイムに計測する3次元距離画像カメラを展示した(写真6).太陽光や照明などに影響されることなく,暗闇でもリアルタイムに対象物までの距離データを立体的に計測可能という.
写真6 3次元距離画像カメラ(ZCシリーズ)

同カメラでは,変調光源(LED近赤外線)とCMOS距離画像センサを組み合わせ,対象物の各ポイントに光が当たって戻る時間をリアルタイムで測定し(TOF方式:Time Of Flight),立体的な距離画像イメージを検出する(写真7).ステレオ・ビジョンや2次元画像処理といった既存技術と比べて,強い外光やコントラストの影響を受けにくいという特徴を持つ.得られたデータを使って,複雑な背景から対象物だけを分離,抽出したり,特定の形状物だけ,あるいは特定の方向に動く物体だけを抽出したりすることも可能だ.
写真7 評価用ソフトウェアで描画した3次元距離画像

本技術を使うことで,多目的トイレや浴室,病室といったプライバシー性の高い閉鎖的空間で起きる事故(人の倒れこみや転落)などの異常事態をすばやく検知し,管理者に報告することが可能になる.対象物を立体的な距離情報で把握するため,プライバシーに配慮しながら,暗闇の中でも背景と同系色の対象物や静止した人間の検出などができるからだ.また,最大60フレーム/sで対象物を認識できる点から,広大な施設内で搬送や荷役を行う無人の台車や,セキュリティ用の自律走行ロボットなどに応用して,障害物認識の精度を向上させたり,効率的に搬送作業や見回りを行わせることも可能となると考えられる.
外形寸法は70mm×160mm×75mm(ハイパワー・タイプの場合),重さは600g以下.外部インターフェースとしてUSB 2.0を備える.
いその・やすたか
tag: FPD International, センサ, 市場動向, 研究開発