ヒトと協調する産業用ロボットはやはりヒト型? ―― 2013国際ロボット展

Tech Village編集部

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レポート 2013年11月 8日

●軽い力で手をとって動作を教示

 トヨタ自動車は,モータと減速機,トルク・センサを一体化したトルク・サーボ・モジュールを使ったロボット・アーム(先行開発品)を参考展示した(写真5).外部からの力をトルク・センサで検知して柔軟に対応できるため,衝突安全性が高い.また,人間がこのロボット・アームの手をとって動作教示できるのだが,その際にロボット側で減速機やアームの重力負荷をキャンセルすることができるため,小さな力で動作教示が可能.Cr-N薄膜トルク・センサを用いており,感度が高く,温度による影響を受けにくいという.

 

写真5 トヨタ自動車のトルク・サーボ・ロボット・アーム(先行技術開発)

 

 

 このほか同社は,家庭内で「落ちたものを拾う」,「机からものを取る」,「ものを運ぶ」などの動作が可能な生活支援ロボットなども展示していた.また,「移動の自由」という観点で,同社の介護医療支援分野への取り組みを紹介していた(写真6).

 

写真6 トヨタ自動車の介護医療支援に関するポスター

 

 

●筋力を補助するロボット・スーツや歩行アシスト装置があちこちに

 今回の展示会では,大学関連のブースを含む多数のブースにおいて,筋力を補助するロボット・スーツの展示が目立った.東京理科大学 工学部 小林研究室は,空気圧式人工筋肉を使った着用型筋力補助装置「マッスルスーツ」の試用デモンストレーションを行っていた(写真7).

 

写真7 マッスルスーツのデモンストレーション
ストローで息を吹き込むことによって人工筋肉を作動させる.デモンストレーションでは空気ボンベで代用していた.

 

 

 本田技研工業は,歩行機能が低下した人の歩行をアシストするシステム(研究段階)を展示した(写真8).装着者の歩行時の股関節角度センサの情報をもとに協調制御を行い,その人に合わせながら歩幅を広げ歩行リズムを調整する.

 

写真8 本田技研工業の歩行アシスト・システム

 

 

●司会ができるヒューマノイド・ロボット,研究用途にも

 英国Engineered Arts社は,等身大ヒューマノイド・ロボット「RoboThespian」(写真9)とソーシャル対話ロボット「socibot・mini」(写真10)を展示した.RoboThespianは,公共の場で人間とロボットの生き生きとした対話を実現するために開発されたロボットである.合成音声によるテキストの読み上げが可能で,表情や動作,音声のアイコンをタイムラインにドラッグ&ドロップすることでロボットのコンテンツを作成できる.タブレット・パソコンを用いて,ロボットの目に映る映像を見ながら遠隔操作することもできる.

 

写真9 英国Engineered Arts社の「RoboThespian」
歩行機能はない.

 

 

 socibotは,複数の人間と同時に対話できるソーシャル・インタラクションの実現を目的に開発された,上半身だけのロボットである.対話相手の動きを目で追い,その場の状況によって表情を変化させる.同時に12人以上の位置を把握できる.手や体の動作の把握,人の顔の位置の把握,性別と年齢の推定,表情の変化や感情を読み取れる.プロジェクタを内蔵しており,さまざまな顔を顔型に投影することができる.socibot・miniは,socibotから両腕をなくし,よりコンパクトにしたロボットである.

 

写真10 英国Engineered Arts社の「socibot・mini」

 

 

●癒しロボットを見守りにも活用

 ピップは,小さな男の子の姿をしたコミュニケーション型ロボット「うなずきかぼちゃん」を展示した(写真11).話しかけるとうなずき,言葉が途切れたタイミングでおしゃべりする.「おばあちゃん」,「おにいちゃん」などあらかじめ設定した呼び名で呼びかけてくれ,コミュニケーションをたくさんとると言葉が増えたり歌を長く歌えるようになる.本ロボットには,高齢者の認知機能を高め,抗疲労・癒し効果があることを,大阪市立大学大学院医学研究科 システム神経科学 渡辺研究室との共同研究で確認したとのこと.

 

写真11 うなずきかぼちゃん
標準で付属している服は,かぼちゃ色のベスト(下段に展示)であるが,セットにシャツの型紙が2部含まれているので,購入者が服の作成や着せ替えを楽しめる.

 

 

 本ロボットは主に高齢者のメンタル・ケアと生活リズム・メーカという役割を担っているが,内蔵するセンサの検知情報をサーバに送ることができれば,見守りロボットとして活用することもできる.経済産業省のブースでは,平成25年度のロボット介護機器開発・導入促進事業の紹介を行っており,この中で同ロボットに見守り機能をつけた「見守りかぼちゃん」も紹介された.


●認知症患者の夜間の安全を見守る

 エイビスは,「高性能高齢者安全確保みまもりシステム」を展示した(写真12).圧力や振動を検知するセンサを内蔵したシートをベッドのマットレスの下に張り付けることで,ベッド使用者の離床行動やけいれんなどの異常事態を検知できる.本システムも,経済産業省のロボット介護機器開発・導入促進事業の一つである.

 

写真12 エイビスの「高性能高齢者安全確保みまもりシステム」

 

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