ワイヤレス給電のセンサや低消費電力通信,920MHz帯通信などに注目 ―― センサエキスポジャパン2013
2013年9月25日~27日,センサの技術と製品に関する展示会「センサエキスポジャパン 2013」が東京ビッグサイト(東京都江東区)にて開催された(写真1).今年は,センサで取得したデータを無線(ワイヤレス)でホスト・マシンに送信する,ワイヤレス・センサ・ネットワーク技術の展示が目立っていた.中でもワイヤレス給電でセンサ・ノードを動かすシステムや,超低消費電力の無線通信技術を導入したモジュールの無線を送受信に利用したシステムなどの展示が注目を集めていた.
写真1 「センサエキスポジャパン 2013」の来場者登録受け付け所

●ワイヤレス給電のセンサ・ネットワーク
日本電業工作は,電池が不要の小型センサ・ノードで無線ネットワークを構成する「電池いりまセンサ『ポータブルONE』」を参考出品した(写真2).
写真2 ワイヤレス給電を利用した電池不要のセンサ・ネットワーク「電池いりまセンサ『ポータブルONE』」の展示

同社はもともと,電池が不要のセンサ・ノード「電池いりまセンサ」を開発し,販売していた.センサ・ノードに対してワイヤレス(マイクロ波)で電力を供給し,センサ・ノードを動作させる製品である.センサ・ノードには受電アンテナのほかにセンサとマイコン,無線送信回路を搭載しており,センサから取得したデータを315MHz帯の特定小電力無線によってホスト・マシンに送信する.
「電池いりまセンサ『ポータブルONE』」は,制御システム(ワイヤレス給電器)とセンサ・ノード群の両方を持ち運び,必要に応じて現場でワイヤレス・センサ・ネットワークを構築できる.制御システムはワイヤレス給電器(写真3)のほか,センサからのデータを受信するレシーバ,パソコンまたはメディア・タブレットとWi-Fiでデータをやり取りするトランシーバ,バッテリなどで構成される.ワイヤレス給電器の出力は4Wである.給電には「電池いりまセンサ」と同じ920MHz帯のマイクロ波を使う.
写真3 ワイヤレス給電用のマイクロ波送電器
1個の送電器から,複数のセンサ・ノードに電力を供給できる.

センサ・ノード(写真4)には,温湿度センサを内蔵したノードや大気圧センサを内蔵したノード,ひずみセンサを内蔵したノードなどがある.棒状のアンテナによって電力を受信する.受信距離(送電距離)は3mくらい.センサ・ノードでは400μFの大容量コンデンサに受信電力を貯蔵し,直流電源に変換してノード内のセンサとマイコン,送信器を動かす.電池は内蔵しない.送信用アンテナは内蔵アンテナである.センサの測定は間欠的で,標準では1分ごとにセンシングとデータ送信を実行する.言い換えると,1分近くかけて大容量コンデンサに電力を蓄えてから,センサ・ノード内部の回路を動かしている.
写真4 ワイヤレス受電機能を備えたセンサ・ノード群の展示

●超低消費電力の無線通信モジュール
丸紅情報システムズは,センサ・ネットワーク用の低消費電力無線通信モジュール「WSN-24GA」(写真5)を出品していた.このモジュールは大阪ガスが開発したもの.丸紅情報システムズが製造と販売を担当している.
写真5 センサ・ネットワーク用の低消費電力無線通信モジュール「WSN-24GA」の説明パネル

開発した無線通信モジュールは,物理層とリンク層に近距離無線通信技術仕様「ANT(アント)」を採用しており,市販のコイン電池で10秒間隔で通信を実行したときに,10年間の通信実行が可能だとする.無線通信周波数は2.4GHz帯で,日本国内では2.4GHz帯の特定小電力無線ネットワークを構築できる.モジュールの大きさは40mm×27mm×8mmである.データ伝送速度は最大で1Mビット/秒.無線トランシーバICにはノルウェーNordic Semiconductor社の「nRF24AP2」を採用した.