信号線当たり100Gビット/秒の超高速伝送を実現する技術とは? ―― テクトロニクス/ケースレー イノベーション・フォーラム2013

福田 昭

tag: 半導体 実装

レポート 2013年7月12日

●多値化で周波数を下げる

 伝送信号の周波数帯域を下げる手段として考えられてきたのが,多値化技術である.通常のディジタル伝送は2値(論理レベルの高と低)なのだが,例えばこれを4値に増やす.電圧レベルは接地(00ビット),中間電圧(01レベル),中間電圧(10レベル),最大電圧(11レベル)となる.同じ伝送速度であれば,周波数の最大値は2値伝送の約半分に下がる.

 4値伝送では,信号振幅は2値伝送の約3分の1に減る.最大周波数が半分になったときに伝送路の損失が3分の1以下であれば,原理的には4値伝送が有利になる(写真11).ただし酒井氏の講演によると,4値伝送は5Gビット/秒の伝送から提案され始めたものの,現在まで採用されていない.25Gビット/秒の伝送規格にも4値伝送は含まれておらず,長距離伝送(LR:Long Reach)で検討中だという.言い換えると,補償回路技術と伝送路技術によって25Gビット/秒の伝送は実現できるということだ.

 

写真11 多値化技術の概要

 


●ディジタル変調,誤り訂正,光伝送の導入

 さらにその先には,ディジタル変調技術による多値化(多重度の増加),誤り訂正技術の導入,光ファイバ伝送との組み合わせ,がある.

 ディジタル変調技術では,搬送波周波数が少しづつ異なる数多くのサブキャリアに信号を割り振る.そしてサブキャリアをディジタル変調によって多値化する.多値化のビット数は,伝送路の特性によって調整する.伝送路の特性が良好な場合はビット数を上げ,伝送路の特性があまり良くない場合はビット数を下げる(写真12).

 

写真12 ディジタル変調技術の導入により,信号1対で100Gビット/秒を伝送する

 

 伝送速度の向上によって伝送損失が増大すると,伝送路の対策と回路の対策(補償回路)を実施しても伝送したデータの誤り率を実用的なレベルにまで下げられなくなる.そこで,伝送するデータにあらかじめ,誤り訂正符号を付加しておく.

 さらに伝送速度を上げる,あるいは伝送距離を伸ばすための切り札が,光ファイバ伝送である.信号の周波数が高くなるほど伝送損失が増大するので,電気伝送では伝送距離が短くなる.電子システムの筐体やバックプレーンなどでは,25Gビット/秒でも電気伝送で実現できそうだ.一方でシステム・ラック間やフロア間などの伝送距離の長い信号伝送では,10Gビット/秒でも光ファイバ伝送が使われている.今後はバックプレーンやボードなどでも,光伝送が採用される可能性がある.


ふくだ・あきら
フリーランス・テクノロジ・ライタ
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