高知工科大学が走行エネルギーの低減にこだわった超小型電気自動車を公開

北村 俊之

tag: 組み込み 電子回路

レポート 2013年6月11日

 高知工科大学 システム工学群 大塚研究室が,2013年5月29日~31日に東京ビッグサイト(東京都江東区)にて開催された「スマートコミュニティ Japan 2013」で,1人乗りの超小型電気自動車(EV)「MicroAERO(マイクロエアロ)」を展示した(写真1).開発にはTS'Lightning,Blue Impact,高須工業,新東工業,高知県工技センターが協力した.

 

写真1 高知工科大学の「MicroAERO(マイクロエアロ)」

 

 

 電気自動車(EV)の分野では,蓄電用としてリチウム(Li)イオン電池などの改良が進められているものの,十分な航続距離が得られない,電池のコストが高い,充電インフラが不足しているなど,まだ課題は多い.同研究室は,EVの本格的実用化が可能な分野は超小型のマイクロEVによる近距離コミュータであると考え,原付一種規格(1人乗り)や超小型モビリティ規格(2013年1月31日公布・施行,2人乗り)をベースとして,オリジナルのマイクロEVを開発した.車体やフレーム,サスペンションなどの製造には,高知県内の町工場の技術者も協力している.研究を主導した大塚 幸男氏(同大学 教授)は,トヨタ自動車で車体設計に携わってきたという経歴を持つ.

 本マイクロEVは,航続距離を確保するために走行エネルギーの低減にこだわった.車体を軽量化するため,サイド・ドアをなくし,車体は繊維強化プラスチック(FRP)で一体成型した(写真2).車体に空気の通り道を作ることによって空気抵抗を減らすと同時に,エアコンの電力消費も減らした.

 

写真2 後部の大型ハッチを開けて車内に乗り込む

 

 

 後部の大型ハッチは,同大学が開発した鋳造法「SynchroCAST(シンクロキャスト)」(高知工科大学,高須工業,新東工業,高知県工技センターの協業)で製造されている.従来の鋳造法(ダイカスト)では,一つの油圧シリンダで高速・高圧射出するのに対し,シンクロキャストでは,小型電動シリンダを複数使用して低速・低圧で射出する.シリンダを最適位置に配置することにより,大型で薄い鋳造が可能となった.流動距離を短くできるため,品質も安定するという.

 駆動用モータについては,定格出力が0.29kWのDCブラシレス・モータを,左右の後輪ホイール内に収めた.このような,車輪のハブ内部に装備されたインホイール・モータ(ホイール・モータ,ハブ・モータともいわれる)は,次世代自動車の主要なコンポーネントとされている.電池は鉛蓄電池(2.3kWh)を搭載し,最高速度は60km/hである.航続距離は50km程度としているが,充電用小型エンジンを搭載することも可能.太陽光発電による充電も想定しており,車庫の屋根に設置した小規模な太陽光パネルでも,十分走らせることができるという.本マイクロEVの外形寸法は2480mm×1280mm×1170mm,車両重量は300kg.実用性だけでなく,欲しくなるスタイリッシュなデザインを目指した.

 「スマートコミュニティ JAPAN 2013」は,再生可能エネルギーの利活用と省エネルギー技術の展示会として開催された.主催は日刊工業新聞社で,3日間合計の来場者数は42,759人.

 

きたむら・としゆき

 

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