会社では教えてくれない「ちょっと先進的な」組み込み開発技法を習得 ―― LED-Camp実行委員の高瀬 英希氏,細合 晋太郎氏に聞く

Tech Village編集部

tag: 組み込み Interface

インタビュー 2013年6月26日

 2013年8月20~22日,下呂温泉(岐阜県下呂市)にて,組み込みシステム開発の初級者を対象とした合宿形式の勉強会「LED-Camp(Learning Embedded software Development Camp)」が開催される.これは,2泊3日の日程に組み込みシステム開発の基礎演習からモデル駆動開発の演習,アジャイル開発の演習,チーム開発実習と成果発表会までを盛り込んだ意欲的な勉強会だ.教材費や宿泊費を含む参加費は25,000円(学生の場合).本勉強会のねらいや内容について,LED-Camp実行委員会のメンバである高瀬 英希氏(京都大学 大学院情報学研究科 助教)と細合 晋太郎氏(九州大学 高度ICT人材教育開発センター 学術研究員)に話を聞いた.

 

写真1 LED-Camp実行委員である高瀬 英希氏(京都大学 大学院情報学研究科 助教)と細合 晋太郎氏(九州大学 高度ICT人材教育開発センター 学術研究員)

 

 

●組み込みソフトウェアの同志でつながるネットワーク作り

―― どのような経緯で「LED-Camp」を企画したのか教えてください.

高瀬氏:LED-Campは,「組込みシステム技術に関するサマーワークショップ(SWEST)」という合宿型ワークショップと連携して開催します.SWESTが大学の研究者や学生,企業の技術者の議論の場として企画されているのに対し,LED-Campは学部および修士学生,開発経験3年以内の社会人の方を対象としています.

 実は以前にも,SWESTと連携した学生/初心者向けの勉強会として「組込みシステム技術に関するサマースクール(Summer School on Embedded System Technologies,略称SSESTまたはサマー・スクール)」が開催されていたのですが,これが2010年で終了してしまいました.その代わりになる学生向けの企画を何かやりたいとずっと考えていたのですが,ちょうど今回,「分野・地域を越えた実践的情報教育協働ネットワーク(Education Network for Practical Information Technologies;通称enPiT)」の組み込み分野の活動とも連携して,形にすることができました.いわば,サマー・スクール(SSEST)の再始動ですね.

細合氏:学生たちを集めてワイワイやりたい,組み込みの仲間を増やしたい,というのが自分としては一番なんですけれどね.学生同士がつながり,講師/運営側を含めて人のネットワークが広がる,というのがとても大切です.実は,高瀬さんと私も,学生時代,サマー・スクールでいっしょに実行委員をやってつながった仲です.そのときの人のネットワークは今でも役立っていて,仕事上のやりとりがあったり,TwitterやFacebookなどでつながって,Maker Faire(DIYによるものづくりや電子工作の祭典)をいっしょに見に行ったりなどと交流が続いています.

高瀬氏:この勉強会は,学生にとってのきっかけ作りと考えています.実習で手を動かすきっかけ,そして,人とつながるきっかけです.


―― 参加費が,2泊3日の勉強会としては破格の設定です.

高瀬氏:はい.とにかく,参加者のしきいを下げたかったので….SWESTの企業スポンサによる支援や,enPiTなどの共催団体の存在も大きいです.

 また,LED-CampがSWESTと連携していることは,費用面以外にも参加者にとってメリットが大きいと考えています.LED-CampはSWESTとは異なる会場で開催しているのですが,最終日はSWESTと同じ会場に移動して,SWESTの基調講演(慶應義塾大学 西村 秀和氏の『モデルベースシステムズエンジニアリングとSysMLの活用』)を聴講できます.また,それに続いてLED-Campの成果発表会を,SWESTの会場内で行います.SWESTの参加者の方から指摘を受けたり議論したりと,交流できることにも大きな価値があると思います.できれば,LED-CampだけでなくSWESTにも連続して参加することをお勧めします!

 実際,サマー・スクールをきっかけに組み込み分野に興味を持って,組み込み系の企業に就職した学生もいました.相当いろいろな刺激を受けられると思います.

 

●現場では体験できない「ちょっと先進的な」手法に触れる

―― LED-Campのカリキュラムには,組み込みシステム開発の基礎演習やチーム開発の実習のほか,モデル駆動開発やアジャイル開発の演習が含まれています.このカリキュラムには,どのような意図があるのでしょう.

高瀬氏:以前実施していたサマー・スクールでは,「組み込みならハードもソフトもばりばりできなきゃね」と手を広げ,マイコン・ボードを使って動くものを作る実習を行っていましたが,今回のLED-Campではソフトウェアの開発に重点を絞っています.

細合氏:そして,ソース・コードをがりがり書くより簡単に開発できる手法や方法論もあるんだよ,というのを伝えたくて,モデル・ベース開発などを取り上げました.

高瀬氏:ソース・コードから入って,がりがりチューニングすると,どうしても徹夜コースになってしまいますし….

細合氏:会社に入れば経験できる「現場の手法」ではなく,会社に入ってもできないことを体験してもらいたいです.現場では,モデル駆動開発やアジャイル開発を取り入れているところはまだ少ない印象です.今回の勉強会ではエッセンスだけでも持ち帰ってもらいたいのです.体験した,という記憶が頭の片隅にでも残っていれば,何かの機会に「やってみよう」というきっかけになると思うのです.すぐでなくてもよく,2~3年後に参加した方の役に立てば,と思っています.

 

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