起業とベンチャ・キャピタル ―― 物作りあれこれ(6)

村山 建

tag: 半導体

コラム 2013年3月14日

 ベンチャ・キャピタルと交渉した経験を持つわけではないが,何年かをベンチャ・キャピタルが集まる米国カリフォルニア州Santa Claraの一角で過ごした経験がある.ご存じの方も多いと思うが,Santa ClaraのBowers Avenueは,IBM社に絡む「FBIのおとり捜査事件注1」の舞台でもある.

 

注1:いわゆる「IBM産業スパイ事件」.FBI(連邦捜査局)のおとり捜査官がコンサルタントと称して,IBM社のメイン・フレーム(汎用大型コンピュータ)に関する技術資料を買わないかと,日本のコンピュータ・メーカの社員に接触.1982年6月に,Santa Claraで日立製作所と三菱電機の社員らが逮捕された.

 

 このあたりには,家の四方を花で囲んだ,のどかな一般家庭が軒を連ねている.鬼の(ように審査が厳しい)ベンチャ・キャピタリストたちの住むところとは思えない.表札や看板のたぐいは全くない.

 ベンチャ企業は別名「ガレージ・ビジネス」と呼ばれている.住宅街の車庫(ガレージ)から車を追い出し,その中が実験室や研究室に早変わりする.ベンチャ企業の草分けであるHewlett-Packard社がそうであったように,ここから一獲千金のエンジニア,あるいは技術系の大企業が生まれるのだなぁ,と感慨深く見とれていたことを思い出す.

 日本では起業に失敗すると後ろ指を指され,肩身の狭い思いをする,とよく言われる.確かに倒産宣告されたら一切の資産を没収され,無一文になると思われているが,本当のところはよく分からない.その前に弁護士に相談して,自己破産するなどして保全措置を図るのだろう.

 だいぶ以前に日本のベンチャ・キャピタルから数度,訪問を受けたことがある.そのとき感じたのは,結局,銀行と同じ手法で融資には根保証(ねほしょう)注2が必要であり,担保が必要になる,ということだった.当時,救済は全くなかったように思うが,今はどうなのだろう.

 

注2:債務者が現在保有する債務,また将来保有する債務のすべてについて保証する約束.

 

 米国では起業に失敗した人が,再びベンチャ・キャピタルに日参して再挑戦する.このあたりが日本と全く違うところで,こういう人たちと話をしていても,経営に失敗したことに対する暗さは全く見られない.すぐに再起を図るのである.

 こうした違いが,「日本ではベンチャは育たない」と言われるゆえんである.米国では注ぎ込んだお金をベンチャ・キャピタルが保証してくれる,ということらしいが,詳細は把握していない.ただし,米国のベンチャ・キャピタルの審査は厳しく,その追求は並々ならぬものだと聞いている.

 

 

むらやま・たけし
(株)テクノクリエート

 

 

●筆者プロフィール
村山 建(むらやま・たけし).日本電気(株) 伝送通信事業部 開発部門で一貫してデータ・モデムの開発などに従事.その後,技師長として十数年間,主として北米に駐在.帰国後に(株)テクノクリエート(http://www.techno-create.com/)を創設.同社社長として現在に至る.

 

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