4K対応CMOSセンサや広角23倍ズーム・レンズなど,先端技術を詰め込んだ業務用ビデオ・カメラが続々 ―― Inter BEE 2012(国際放送機器展)

北村 俊之

tag: 組み込み

レポート 2012年11月22日

 2012年11月14日~16日の3日間,音響と映像と通信に関する技術展示会「Inter BEE 2012」が,幕張メッセ(千葉市美浜区)にて開催された(写真1写真2).今回で48回目を迎える本展示会は,米国のNAB(National Association of Broadcasters) Show,欧州のIBC(International Broadcast Conference)とともに,世界の放送技術の推進役を担っているイベントである.メディアのディジタル化に伴ってコンテンツの多様性が広がる中,本展示会は映像コンテンツ製作技術と配信技術に関する総合展示会へと移行しつつある.

 

写真1 会場全体の様子

 

 

写真2 会場受付の様子

 

 

 本展示会は,4K(水平4,000ピクセル×垂直2,000ピクセル前後),8K(水平8,000ピクセル×垂直4,000ピクセル前後)の高精細映像,セカンド・スクリーン(テレビに対するスマートフォンやタブレット)やスマート・テレビ,V-Low(地上デジタル・ラジオ)やホワイト・スペース(地上デジタル放送の地域ごとの空きチャネル)における電波の有効活用,ディジタル・サイネージ(電子看板),プロジェクション・マッピング(映像を壁や物に投影する技術)など,国内外の企業・団体が放送や映像にかかわるさまざまな提案を行う場となっている.

 主催は,一般社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA) .海外491社を含む871社・団体が出展した.来場者数は31,857人.

 

●業務用ビデオ・カメラにSuper 35mm相当の4K対応CMOSセンサを搭載

 ソニーは,4K解像度に対応したSuper 35mm相当のCMOSイメージ・センサ(有効画素数は約890万)を搭載した業務用ビデオ・カメラ「CineAlta 4Kカメラ PMW-F55」を展示した(写真3).本ビデオ・カメラは,明暗差が大きい被写体や光量が十分ではない環境下でも撮影できる.16ビット・リニアRAW,XAVC,MPEG-4 SStP,MPEG HD422といった映像フォーマットに対応する.

 

写真3 ソニーの「PMW-F55」

 

 

 16ビット・リニアRAWの映像データは,AXSメモリ・カードを介して,同社が本ビデオ・カメラと同時に発売する録画装置「RAWレコーダー AXS-R5」に記録される.その他のフォーマットの映像データについては,本体に装着したSxSメモリ・カードに記録される.4K XAVCや高速(ハイフレーム・レート)撮影などの大容量データの高速書き込みに対応した記録メディア「SxS PRO+(エス・バイ・エス プロプラス)」にも対応する.例えば,4K XAVCとMPEG HD422の映像データを1枚のSxS PRO+に同時に記録することが可能.RAWレコーダで4K RAWの映像データを記録しながら,本体のSxSメモリ・カードにXAVCやMPEG HD422のHD映像を記録するなど,オンライン編集用とオフライン編集用の素材を同時に処理できる.

 撮影時のフレーム・レートを変更できる「スロー&クイックモーション機能」を搭載する.例えば2K RAWデータを240フレーム/sで撮影し,23.98pで収録した場合,最大約10倍のスローモーション再生が行える.4K RAWデータでは,60フレーム/sで撮影し,最大約2.5倍のスローモーション再生が行える.

 装備した4本のBNC端子から4K映像をリアルタイムに出力する.同社の30インチ型業務用4K液晶モニタ「PVM-X300」と組み合わせることで,4K映像をリアルタイムに確認することが可能.

 

●業務用ビデオ・カメラがフルHD,10ビット4:2:2収録に対応

 パナソニックは,フルHDの10ビット4:2:2収録が可能な業務用ビデオ・カメラ「AG-HPX600」を展示した(写真4).記録フォーマットとして,AVC-Intra100(1920ピクセル×1080ピクセル,10ビット4:2:2),AVC-Intra50(1440ピクセル×1080ピクセル,10ビット4:2:0),DVCPRO HD,DVCPRO50,DVCPRO,DVに対応する.オプション機能を後から追加できるシステムになっており,例えば同社が提案する映像CODECの新体系である「AVC-ULTRA」にも,将来対応していくという.

 

写真4 パナソニックの「AG-HPX600」

 

 

 本ビデオ・カメラは肩載せ型で,多彩なレンズを利用できる.本体の外形寸法は144mm×267mm×350mm,重さは約2.8kg.MOSセンサの感度はF12(59.94Hz時),SN比は標準59dB.消費電力は18Wで,同社従来品(AJ-HPX2100)の約半分になっている.ユーザ・インターフェースに「SmartUI」と呼ぶ方式を採用しており,シーン・ファイルやオーディオ・レベル,タイム・コード,MON/HDMI出力映像などの設定を少ない手順で行える.

 オプションとして,カラーHDビュー・ファインダ「AG-CVF15G/AG-CVF10G」を併せて発売する.3.45インチ型,約92万画素の16:9カラー液晶ディスプレイを搭載しており,ビューファー・カバーを開けると液晶モニタとして利用できる.無線LANまたはEthernetによってパソコン(Windows,Mac)やタブレット端末,スマートフォンなどに映像データを転送し,プロキシ映像のプレビュー再生やライブ・ストリーミング伝送,メタデータの表示・入力も行える.

 

●業務用ビデオ・カメラに広角23倍ズーム・レンズを搭載

 JVCケンウッドは,FUJINON(富士フイルム)製の広角23倍ズーム・レンズと220万画素の1/3インチ型CMOSセンサを搭載した業務用ビデオ・カメラ「GY-HM600」,「GY-HM650」を展示した(写真5写真6).ズーム・レンズの焦点距離は29mm~667mm(35mm換算).F1.6~3.0の明るさを実現し,低照度での高画質撮影に対応する.オート/マニュアルの切り換えスイッチ,フォーカス/ズーム/アイリスを調整する独立リング,光学式手ブレ補正装置,4段階(クリア,1/4,1/16,1/64)の減光フィルタなどを備えている.

 

写真5 JVCケンウッドの「GY-HM600」

 

 

写真6 JVCケンウッドの「GY-HM650」

 

 

 記録フォーマットとして,MPEG-2 Long GOP(最大35Mビット/s)とAVCHDに対応する.同社が開発した画像処理LSI「FALCONBRID(ファルコンブリッド)」を搭載しており,このLSIは2D DNR(Digital Noise Reduction)や倍率色収差補正,シェーディング補正,ダイナミックレンジ補正などの処理を行う画質補正回路を内蔵している.また,SDHC/SDXCメモリ・カード・スロットを2個備えている.

 「GY-HM650」では,HDとSD,あるいはHDとプロキシ・ファイルの同時記録が可能.Wi-Fiまたは3G/4G対応のネットワーク・アダプタを接続することにより,取材現場から放送局のサーバへ映像を直接転送できる.また,本体内蔵のGPS受信機による位置情報やFTPクライアント機能で受信した撮影者の情報,撮影内容などの情報をメタデータとしてMXFファイルに埋め込める.これにより,収録ファイルの検索や管理が行いやすくなるという.

 

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