ARMキー・テクノロジー解説01 ―― ついに登場したARM 64ビット・プロセッサ
tag:
2012年11月 9日
2012年11月1日ついにARMは,ARMv8アーキテクチャをベースとした64ビットの新しいARM Cortex-A50プロセッサ・シリーズを発表しました.今回のシリーズ発表で,紹介されたプロセッサは,Cortex-A57とCortex-A53です.Cortex-A57は高性能を,Cortex-A53は高電力効率を特徴とする64ビット・プロセッサです.Cortex-A57とCortex-A53は,それぞれ単独で利用することもできますが,ARM big.LITTLETMプロセッサ構成として併用することも可能です.big.LITTLEプロセッサ構成とは,高い性能に最適化されたCPUと電力効率に最適化されたCPUをキャッシュコヒーレントに組み合わせることです.ソフトウェアの実行をパフォーマンス・ニーズに基づいて動的に適切なCPUに移行することで高性能を維持しながらバッテリ寿命を延ばします.ここでは,Cortex-A50シリーズの概略と本シリーズを用いたbig.LITTLE処理についてご紹介します.
●Cortex-A50シリーズ
ARMは世界で最もエネルギー効率の高い64ビット・プロセッサのCortex-A50シリーズを発表しました.このシリーズは,高性能と低消費電力におけるARMのリーダーシップを強化するものです.Cortex-A53プロセッサとCortex-A57プロセッサは,エネルギー効率の高い64ビット処理テクノロジーをシリーズで初めて導入するとともに,既存の32ビット処理にも改良を加えています(図1).優れた拡張性を生かし,ARMパートナー各社は,スマートフォンから高性能サーバまで多様な市場に対応するシステムオンチップ(SoC)の開発が可能となります.
本シリーズでは,認証ソフトウェアを最大10倍に高速化する暗号化アクセラレーションをオプションとして用意しています.また,ARM Maliグラフィックス・プロセッサ・ファミリとの相互運用性が高く,さらにCCI-400,CCN-504などのARM CoreLink?キャッシュ・コヒーレント・ファブリック・コンポーネントにより,AMBARシステム・コヒーレンシをメニーコア・ソリューションに拡張することができます.
図1 ARMv8アーキテクチャ
●Cortex-A57とCortex-A53
Cortex-A57(図2)はARM最高のシングルスレッド性能を誇る最先端のARMアプリケーション・プロセッサです.スマートフォンがコンテンツ消費機器からコンテンツ生成機器へと移行するにつれ,同じ消費電力下で現在のスーパーフォンの性能を最大3倍に向上させたいという要求が生まれます.
図2 Cortex-A57の構成図
Cortex-A57はその要求に応じる高性能を提供することができます.モバイル機器の消費電力で従来のPCに相当する処理性能を提供することができ,企業ユーザーにも一般消費者にもコストと電力効率の点でメリットがあります.また,64ビットプロセッシング,強化された浮動小数点演算性能及び16コアを超える拡張性により,高性能エンタープライズ・アプリケーションに優れた信頼性と拡張性を提供することができます.
Cortex-A53(図3)は,世界最小の64ビット・プロセッサです.ARMのアプリケーション・プロセッサのなかで最も電力効率の高いプロセッサであり,4分の1の消費電力で現在のスーパーフォンの機能を実現することができます.また,1mm2当たりおよび1mW当たりの性能を最大化し,スレッド当たりの処理性能が低めのアプリケーションでスループット処理を最適化します.
両プロセッサは,単独でも,ARM big.LITTLEプロセッサ構成で併用しても,高性能と高電力効率を実現します.ARM CoreLink 400および新しいCoreLink 500シリーズのシステムIPファブリックにも対応しています.
図3 Cortex-A53の構成図