震災対策を意識した避難車や防災シェルタ,個人向けの線量計などが並ぶ ―― 危機管理産業展(RISCON TOKYO)2012
2012年10月17日~19日,「震災対策と安全・安心未来の創造」をテーマに,危機管理の総合展示会「危機管理産業展(RISCON TOKYO)2012」が,東京ビッグサイト(東京都江東区)にて開催された(写真1).2011年3月11日に発生した東日本大震災から約1年半が経過したが,その間にも記録的な豪雨などの自然災害が数多く発生している.また,東日本大震災における災害廃棄物などの環境リスクも,中長期的に取り組むべき課題となっている.さらに,特定の機関や企業をターゲットとしたサイバー攻撃やサイバー・テロも後を断たず,日常生活における犯罪に対応する危機管理意識の啓発が求められている.
本展示会には国内外から337の企業・団体が出展し,62,083人が来場した(3日間ののべ人数).主催は東京ビッグサイト.なお,特別併催企画として「テロ対策特殊装備展(SEECAT)'12」も開催された.
●歩行困難者も階段経由で避難できる
コーケンメディカルは,英国Evac Chair International社が開発した階段避難車「EVAC+CHAIR」を展示した(写真2).階段避難車とは,地震や火災などでエレベータなどが使用できないような非常時に,階段を使用して歩行困難者を避難させるための器具である.本階段避難車は,モータやエンジンなどの動力を使用していない.本体下部の左右のスキー板に摩擦力の強いVベルトが装着してあり,このVベルトを階段の角2~3段に接地させながら階段を降りるしくみ.搭乗者の重みで適度なブレーキ効果が得られるので,操作者が歩くスピードから小走り程度のスピードで降りることができる.たとえ操作者が手を離しても,降下する速度に大きな変化は生じないという.28~40度の階段傾斜角に対応する.
本階段避難車はアルミ合金フレームで作られており,重量は9kg.一人の操作者で182kgまでの人を搬送できる.収納状態からすばやく開いていす状態に変わる.腹部と頭部を本階段避難車に固定できるため,意識のない避難者や,拘束を必要とする避難者も安心して使える.前方には2輪,後方には折りたためる補助輪2輪があり,平たんな場所では,四輪で車いすのように走行できる.また,狭い階段の踊り場でも,前輪を軸にしてその場で向きを変えられる.
●階段昇降機にリチウムイオン電池を採用
サンワは,介助式電動階段昇降車「ステアチェア SC-38」を展示した(写真3).135kgまでの介護者を乗せて階段を昇降できる.なお,ボタン操作や向きの変更などは操作者が行う.バッテリはリチウム(Li)イオン電池(DC25.2V,240Wh)を使用している.
胸部・脚部固定ベルトにより,搭乗者の転落を防止する.15~38度の階段傾斜角に対応する.階段昇降時は,操作者がスイッチを押しながら階段昇降車を操作する.スイッチから手を離すと電磁ブレーキが動作し,階段上でも安全に停止する.1回の充電で約1時間駆動する.
●大人4人が入れる防災シェルタで水害に備える
ポンドは,大人4人乗りの防災シェルタ「ライフアーマー」を展示した(写真4).本シェルタの形状は球体なので,外部からの衝撃や圧力を分散でき,破裂・破損しにくい.本体の素材にはFRP(Fiber Reinforced Plastics;繊維強化プラスチック)注1を採用した.金属やニッケル(Ni)合金,チタン(Ti)などに比べて,耐久性や重量,コスト面などで優れているという.搭載重量は最大300kgで,大人4人が搭乗しても水面から本体が半分以上浮かぶように設計してある.外部に露出している部品は,折りたたみ式の持ち運び用取っ手と,外部ロック用のパチン錠のみで,いずれもステンレス製となっている.出入り口ドアの蝶番(ちょうつがい)は,衝撃による破損を防ぐため,内側に取り付けてある.内部から外の様子を確認する窓は耐衝撃性の強いポリカーボネートを使用している.ドアはダブルパッキンを採用し,外部からの浸水を防ぐ.床下部分に収納スペースを設けてあり,非常食や水などの災害用品を収納できる.
注1:FRPは繊維と樹脂を用いてプラスチックを補強することで強度を向上した素材である.宇宙・航空産業をはじめ,バイクや自動車,鉄道,建設産業,医療など,さまざまな分野で使用されている.