拝啓 半導体エンジニアさま(42) ―― 撤退と反攻を指揮できる「名将」が今,求められている

ジョゼフ半月

tag: 半導体

コラム 2012年10月29日

 つい先ごろも「パナソニックが欧州の携帯事業から撤退」という報道がありました.シャープも会社の正式発表前に,「予定より赤字が...」といったニュースが流れてしまったようです.ルネサス エレクトロニクスもオール・ジャパンで救済が決まったものの,希望退職者は予定を大幅に上回り,さらに人数の上積みが求められるという,さんざんなありさまです.半導体を作る側も使う側も,国内の業界は暗い話題が続いています.

 

●撤退戦の指揮は難しい

 こういう状況では,「撤退」という文字が目につくことはいたしかたありません.けれども,撤退戦がとても難しいものだということは,歴史をひも解けば,分かると思います.イケイケで前進しているときは,みこしに担がれているだけの人でもそこそこ指揮できると思うのですが(失礼!),いざ撤退戦となると,それでは務まらないでしょう.自身の意図や計画の外で,ビジネス環境が目まぐるしく移り変わり,それに翻弄(ほんろう)される中で厳しい決断を下していかないといけないわけです.ちょっとした判断ミスが,秩序だった撤退を大混乱の敗走に変えてしまいかねません.過去,リストラを重ねて最後には消えていった「かつて立派だった」ハイテク企業の姿も,いくつか思い出されます.

 大事なことは,どこまで撤退するか,あるいはどこまでいったら踏みとどまるか,という「防衛線」の設定だと思います.一歩後退,程度で踏みとどまれるような事態なら良いのですが,そうとは限りません.後ろを向いて駆け出すときに,「ここで止まれ」という線がないと,歯止めが効かなくなります.

 防衛線というからには,そこに「実態」が伴わないといけません.実態というのは,端的に言えば,そこに「人」,「モノ」,「金」のリソースが投入されている,ということに尽きます.きちんと陣地を構築し,武器,弾薬,人員もそろっている.そこに,まなじりを決した指揮官がいれば,耐える戦もできるというものです.けれども,リソースが伴わないところで,ただ旗が立っているだけの防衛予定線では,回れ右して踏みとどまれと言っても,無理があります.そのようなものは,指揮官(経営者)の脳内にある防衛線でしかありません.

 撤退の逃げ足と敵の進撃速度をよく推し測り,適切なところにリソースを集中して防衛線を引かなければなりません.進撃速度の見積もりを誤ると,防衛線が機能せず,逆に敵に攻めたてられることになるでしょう.時間稼ぎも必要でしょうし,その間に防衛線がきちんと機能するかどうかも確かめておかなければならないでしょう.

 防衛線の後ろで持ち場についている現場の担当者を督励して回るのもよいのですが,古今の名将の多くは,防衛線の外側に踏み出して振り返り,味方の布陣を攻める敵側の目線で見ていると思います.撤退戦を指揮する経営者も同じ心境でしょう.

 

●さらに重要なのは反攻の準備

 さて,踏みとどまって一線を防衛するのですが,肝心なことはその後ではないかと考えます.ただただ防衛しているだけでは,消耗を重ねることになります.せっかくの堅固な防衛線もそのうちに傷み,現場も疲れ果てるのは必定です.

 防衛で時間を稼いでいるうちに次の一手の反攻を準備する,できれば最初から反攻を考えて防衛線を引く,というのが理想です.これまた古今の先例の教えるところでは,互いにリソースを集中して攻防している防衛線で無理やり反攻しようとしても,結局は物量だけの勝負となりがちなようです.

 そうではなく,流れを自分の側に引き寄せて逆転するためには,敵の手の内を読んで別の橋頭堡を築き,そこに向かって防衛線からも侵攻する,といった戦略が必要だと思います.防衛線を守りつつ,侵攻部隊を準備し,タイミングを見計らって手薄なところに新たな戦端を開いて反転攻勢に出るのです.

 こういうことができるのは,まさに名将(名経営者)です.今の業界は,切実にそのような名将を求めている,ということだと思います.

 

 

ジョゼフ・はんげつ

 

 

組み込みキャッチアップ

お知らせ 一覧を見る

電子書籍の最新刊! FPGAマガジン No.12『ARMコアFPGA×Linux初体験』好評発売中

FPGAマガジン No.11『性能UP! アルゴリズム×手仕上げHDL』好評発売中! PDF版もあります

PICK UP用語

EV(電気自動車)

関連記事

EnOcean

関連記事

Android

関連記事

ニュース 一覧を見る
Tech Villageブログ

渡辺のぼるのロボコン・プロモータ日記

2年ぶりのブログ更新w

2016年10月 9日

Hamana Project

Hamana-8最終打ち上げ報告(その2)

2012年6月26日