Kinect for Windowsで機器を作るヒント(7) ―― 実験でもっと深くKinectを理解する
●同時に複数台のKinectを利用する
Kinectセンサーは1台のPCに同時に4台まで接続する事ができます.Kinectアプリケーションからは,PCに接続されたKinectの台数を識別し,個別に操作することができます.(図7)
図7 1台のPCに2台のKinectセンサーを接続した場面
ただし,Kinectを挿入するUSBポートの位置には注意が必要です.Kinectセンサーを複数接続する場合は,接続するポートをUSBのホストコントローラごとに分ける必要があります.従って,多くの場合PCの隣り合うUSBポートに2台のKinectセンサーを接続しても正しく認識しません.この場合は接続するUSBポートを変えてみてください.
USBのホストコントローラの配置は,図8のようにデバイスマネージャ上から「表示」-「デバイス(接続別)」を選択すると確認することができます.図9のように,1つのUSBホストコントローラ配下に2台のKinectセンサーを繋ぐと,1台のKinectセンサーは正常に認識できなくなります.図10のように,別のUSBホストコントローラ配下に接続し直すと,正常に認識することが分かります.
図8 デバイスマネージャでUSBホストコントローラの配置を確認する
図9 1つのUSBホストコントローラ配下に2台のKinectセンサーを接続した場合
図10 USBホストコントローラを分けて2台のKinectセンサーを接続した場合
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●Kinect for Windows がもたらす可能性
「Kinect for Windowsで機器を作るヒント」では,これからKinect for Windowsで何か作ろうと考えている方を対象に,今後の製品開発の参考にして頂けるような情報を紹介してきました.
Kinect for Windows は PC向けのWindows OSだけでなく,組み込み機器向けのWindows Embedded OSでも動作することを紹介しましたが,今後 , 組み込み機器の市場はPCの市場以上に拡大すると言われています.Kinectがゲームのコントローラとしてだけでなく,PCや組み込み機器の世界でも利用できるようになった事で,今後更にKinectの可能性が広がって行くと考えています.
●Kinectで実現するナチュラル・ユーザー・インターフェース
昨今,OSやアプリケーションのデザインを含め「ユーザーインターフェイス」が見直されてきています.誰でも簡単に操作できるようなユーザーインターフェースが求められる中で,ジェスチャーや音声認識などを活用してより直感的に操作を行うNUI(Natural User Interface)が注目を集めるようになりました.KinectはこのNUIを実現するための代表的なデバイスです.また,Kinect以外にもジェスチャーや音声で操作する技術や製品が沢山登場しているので,今後もNUIは大きく注目されて行くでしょう.
●センサーデバイスとしての活用
Kinectは安価なセンサーデバイスとしての魅力もあります.Kinectが低価格で登場した事で,深度センサーやマイクアレイの機能がより身近になり扱いやすくなりました.数十万,数百万円する高価な装置であれば滅多な事には使えませんが,2万円ちょっとで深度センサーが使えるならば,ということで,様々な用途で使ってみようとアイデアも広がります.従来は高価な専用装置が必要だったような場面でも,Kinectを使って安く手軽に実現しようといった動きも多くあります.そのような意味でも,アイデア次第で様々な応用の可能性があるデバイスではないでしょうか.
●最後に
Kinect for Windows SDKは,v1.5でフェイス・トラッキングや「Seated」モードが追加されたように,これからも新しい機能が追加されていくはずです.今後のKinectの機能拡張にもぜひ注目してみてください.本連載は今回で最終回となりますが,このKinect for Windowsの連載記事が,みなさまの今後の新しい製品企画・開発のヒントになれば幸いです.
●Kinect for Windows コンテスト2012 グランプリ決定!
2012年9月14日,Kinect for Windows コンテスト2012が予定通り開催され,グランプリ作品が選出されました.また,このほかアイデア賞,技術賞,奨励賞が各1作品に贈られました.
グランプリ | 東洋大学 メディカルロボティクス研究室 「Kinectによる側弯症計測システム」 |
アイデア賞 | アニマルズ・パーティー 「ジョグ・ザ・ワールド」 |
技術賞 | 千葉大学先進的マルチキャリア育成プログラム TeamCIT 「非接触型咀嚼センシング ~食環境づくり噛むログ~」 |
奨励賞 | 三木 大輔 氏 「KINECTを用いた腹腔鏡下手術支援システム」 |
受賞作品の紹介やコンテストの様子は,コンテスト公式サイトで公開される予定です.
http://k4wa.com
もでき・ゆうや
東京エレクトロン デバイス(株)