ETWest2012 実行委員長に今年の見どころを訊く

「ETWest2012実行委員長 杉山久志氏
に今年の見どころを訊く」
来週からいよいよ「Embedded Technology West 2012/組込み総合技術展 関西」がインテックス大阪で開催される(主催:一般社団法人 組込みシステム技術協会).今年で8年目を迎えるが,今回から「Smart Energy Japan 2012 in Osaka」も同時開催される.そこで,ETWest2012の実行委員長である杉山 久志氏に今年の見どころやテーマを中心に話を訊いた.
開催日:2012年6月14日(木)~15日(金)
開催時間:10:00~17:00
会場:インテックス大阪
ETWest2012実行委員長/
株式会社暁電機製作所 相談役
杉山 久志氏
◆震災後,組み込み技術をいかに役立てるかが重要になった.また関西と東北の企業による連携事業も具体的にスタート
--- 昨年の東日本大震災から1年が経過したことになりますが,ETWestでは震災以降の組み込み業界をどのように捉えておられますか.
杉山:震災発生以降の組み込み業界の取り組みは,Androidなどを活用した放射線量測定器の開発,消費電力を可視化するためのスマート・メータやHEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)の開発,再生可能エネルギーから得た電力の高効率蓄電や交流に変換する装置など,いわゆる「スマートハウス」を実現するための各種機器の開発が,以前に増して積極的に行われるようになったと考えています.また,放射線量の高い場所でも動作可能なロボット,安否確認や遠隔地の状況を把握するための各種通信装置やシステムの開発においても,組み込み技術の果たす役割はさらに重要になってきました.
一方,昨年のETWestには,震災で大きな被害を受けた宮城県,岩手県の企業,計5社に出展していただきましたが,これをきっかけに関西地域の主要企業で組織されている「組み込みシステム産業振興機構」と,宮城県を中心にした東北地方の組み込み開発企業との交流活動や連携事業がスタートしました.これは,ETWestが果たした大きな成果だと考えています.
◆ETWestは関西圏の企業に役立つカンファレンスが充実,また時間を掛けて会場を見て回れる
--- ETWestとET(横浜開催)で,どのような差別化を考えておられますか.出展者や来場者のご意見があればご紹介ください.
杉山:ETWestは,7年前に「関西からの情報発信」をスローガンに立ち上げました.第1回目が終わって出展企業,来場者の方の声を聞いてみると,やはり関西圏での展示会やカンファレンスが少ないので,最新技術に触れる機会がなく,情報取集もすることができない,というものでした.
そこで,ETWestではET横浜と同様に,展示会だけではなくカンファレンスに力を入れ,関西の講演者を中心にしながらも,全国で通用するような講演を行っていただくように調整してきました.そのためか,ETWestでは来場者の90%以上が近畿圏から参加されており,我々の考える「関西からの情報発信」だけではなく,「関西に向けての情報発信」も達成できていると考えています.
--- 来場者の動向や申込み状況はいかがでしょうか.
杉山:そのような経緯もあり,我々が出展企業の皆様に強調させていただいていることは,ET横浜は規模が大きいのですが,関西圏からの来場者は愛知県を含めても10%を超えていません.それでも2,000~3,000名の方に来場いただいているのですが,ETWestでは約5,000名の関西圏からの来場者が2日間に集中しているわけです.したがって,関西圏でビジネスをお考えの企業の皆様には,ぜひETWestにご参加いただきたいと考えています.
また,出展企業の方に出展成果についてお聞きすると,規模の割にブースでのリードが多く,効率が良いという回答をいただくことがあります.150小間前後という,決して大きな展示会ではありませんが,この規模だからこそ,5,000名の来場者の方がくまなく展示会場内を回遊していただけると考えています.
◆ETWestで注目すべきテーマはIT融合
--- 今年のETWestで注目される技術テーマをご紹介ください.
杉山:ETWestに限らずET横浜も同様ですが,すべての産業において利用されている組み込み技術を,どのような分野に活用するか,どのような製品で有効利用できるのか,来場者の方に応用分野を意識していいただけるような展示会を目指しています.
最近では,IT融合という言葉が出てきているように,どの分野でもネットワークにつないだ双方向の通信が必須となってきています.そこで,我々としましては,IT融合が急がれている「スマートエネルギー」「オートモティブ/交通システム」「モバイル/クラウド」「ロボティクス」「スマートヘルスケア」「スマートアグリ」の6分野に特にフォーカスを当て,さまざまな企画を実施していきたいと考えています.
その中でも,ETWestでは昨今の電力供給問題もあり「スマートエネルギー」に関しては特に力を入れており,今年からはSmart Energy Japan in Osaka(SEJ in Osaka)を同時開催いたします.SEJ in Osakaでは,新エネルギー,スマートグリッド,スマートハウス,バッテリー,工業/商業施設などの応用分野を見据えた要素技術,ソリューションを主とした展示会となります.今までのETWestでは紹介できなかった分野へのアプローチなど,相乗効果を多いに期待しています.
◆今年からテクニカルセッションがすべて無料に!
--- 新しい企画などはいかがでしょうか.
杉山:新しい企画としては,昨年まで有料だったテクニカルセッションを今年から無償受講にしました.技術的な部分に特化したカンファレンスですが,より多くの方にご覧いただけるよう会場も拡張して実施いたします.内容は,機能安全,Androidなどをテーマとしており,ソフトウェア技術開発者にお勧めです.
--- 今年の基調講演はスマートコミュニティ,Ruby,機能安全がテーマになっていますが,どのようなところに注目すればよいでしょうか.
杉山:そのような意味では,今年の基調講演の経済産業省様,大和ハウス様,三菱電機様の3講演に関しましては「スマートエネルギー」に関連した,組み込み技術を活用する未来の応用分野,スマートコミュニティ/スマートグリッド/スマートハウスについてご講演いただきます.
一方,マツダ様には多くの産業で注目されているモデルベース開発についてご講演いただきます.従来の技術を見直すことにより高効率なエンジンを作り上げるという,まさに日本のモノづくりという内容になっています.また,名古屋大学様,ネットワーク応用通信研究所様には,昨今話題となっている規格についてご講演いただきます.規格化による信頼性と安全性の向上によって,国際化を含めた産業全体の新たな将来像が見えてくると考えています.
◆同時開催のSmart Energy Japan展も見どころ
--- 今年の注目すべきカンファレンスのテーマと内容を教えてください.見どころはどこでしょうか.
杉山:先ほども申し上げました通り,今年はSEJ in Osakaを同時開催いたします.SEJ in Osakaでは,未利用エネルギーの供給と有効活用にスポットをあて,スマートエネルギーセミナーを開催します.
SEJ2012(東京ビッグサイト)の様子
ETWestとの合同パネルセッションでは,電気自動車やスマートハウスなど,エネルギーインフラの問題解決に大きな注目を集めるワイヤレス給電を話題とし,自動車メーカーやハウスメーカー必聴のセッションとなっています.
また,展示会場では,水素エネルギー産業の特別講演や環境発電,HEMS,省エネをテーマに10セッションを開催します.「大阪を元気にするスマートエネルギービジネスの未来」と題した,岩谷産業様,近計システム様,富士経済様のパネルディスカッションでは,今後の燃料電池産業の位置付けや可能性,再生可能エネルギー,将来の関西におけるスマートエネルギー産業の予測などが読み取れます.
未利用エネルギーの用途拡大に期待がかかる環境発電(エネルギーハーベスティング)では,ビルオートメーション,センサーネットワーク,スマートグリッドへの適用が今後加速度的に高まっていくものと予想され,NTTデータ経営研究所様,アルティマ様,村田製作所様の講演は注目のセッションとなります.また,西日本における今夏の省エネ対策に向け,省エネルギーセンターの工場,事業所の省エネ対策や,ビル,オフィスの節電セミナーは,いますぐ始められる省エネ,節電対策の導入ヒントが見つかるものと思います.
皆様のお役に立てる情報が必ずあります.ご来場をお待ちしております.
**************************************** ETWest2012カンファレンスの事前登録は下記より
http://www.jasa.or.jp/etwest/2012/index.html