3年後には150億台の組み込みデバイスがクラウドに接続 ―― 分析や提案の能力を獲得し,状況に適応した判断も可能に

インテル(株)

tag: 組み込み

キャッチアップ 2012年1月19日


組み込みデバイスとクラウドの連携が始まっています.組み込みデバイスとクラウド(サーバ)がインターネットを介してつながり,クラウド上でデータ処理や解析が行われ始めました.3年後の2015年には150億台の組み込みデバイスがネット接続機能と多様な解析機能を備えるとインテルは予測しています.ここでは,今後の組み込みシステム開発の動向について,同社の津乗 学氏(写真1)に話を伺いました.

写真1 インテル(株) クラウド・コンピューティング事業本部
エンベデッド/CE事業開発部 プロダクト・マーケティング・マネージャー
津乗 学(つのり・まなぶ)氏


―― 最新の組み込みデバイスでは,今,何が起こっているのでしょうか.

津乗氏:私たちは,最新の組み込みデバイスで起こっている事柄を二つのキーワードで表現しています.すなわち「コネクテッド」と「インテリジェント」です.コネクテッドとは,組み込みデバイス同士がインターネットを介して相互につながった状態を指します.インテリジェントとは,組み込みデバイスが複雑なデータを処理することで,分析や洞察などの能力を備え,状況に応じて判断していくようになることを指します.インテルでは,インテリジェント機能とコネクテッド機能を備えた組み込みデバイスの世界市場が,2015年には150億台になると予測しています.

 

―― 「インテリジェント」について,もう少し詳しく説明してください.

津乗氏:組み込みデバイスがコネクテッド機能,すなわち接続性を備えることにより,組み込みデバイスの能力が高まっていくと考えています.まず,インターネットを介して組み込みデバイス同士がシームレスに接続し,データが流動化していきます.現在の組み込みデバイスは,この段階にあると思っています.次の段階では,クラウド上で大量のデータを処理することにより,分析や提案などの機能を備えるようになります.さらに次の段階では,コンテキスト(現在の状況や与えられた条件など)を認識することで周囲の状況を把握するようになり,状況に適応した予測と判断を実現するようになります.このように組み込みデバイスは,よりインテリジェントになっていくのです(図1).

 

図1 組み込みデバイスは,よりインテリジェントに

 

 

―― インターネットの向こう側にあるサーバがより強力な処理能力を備えることで,クライアントである組み込みデバイスの処理能力はむしろ下がっていくという考え方もありますが....

 

津乗氏:確かに,シンクライアントのような考え方は存在します.ですがインテルでは,コネクティビティが高まるとともに,クライアントまたはローカルでの処理能力の向上も重要になっていくと考えています.

 

●リテール(小売り)分野が変わる

 

―― そのような変化が起こっている応用分野は?

津乗氏:一つの例は,リテール(小売り)分野です.ディジタル・サイネージ,POS(Point of Sales),自動販売機などですね.通信の分野では携帯電話機がスマートフォンになって大きな変革が起こりました.スマートフォンは電話機ではなく,コンピューティング・デバイスに通話機能を追加した機器とみなせます.リテール分野でも,ディジタル・サイネージや自動販売機などがコンピューティング・デバイスとなることで,インフラストラクチャ,デバイス,サービスが大きく変わっていきます(図2).

 

図2 どの生活者にも身近なイノベーション

 

―― 具体的な事例がありましたら,教えてください.

津乗氏:ディジタル・サイネージと自動販売機を融合させたコンピューティング・デバイスのコンセプト・モデルを開発しました(図3).65型の透過型タッチパネル搭載ディスプレイを装備しており,インターネット接続機能を備えています.エンド・ユーザはタッチパネルに触り,ウィンドウをワイプすることで商品を選んでいきます.このコンセプト・モデルはIntel AIM という顔認識技術を搭載しており,カメラを通じて取り込まれたエンド・ユーザの属性を認識し,属性に適した商品をディスプレイのトップにレイアウトする,といったサービスが可能です.また,インターネット接続機能によってリモートでマーケティング・データを収集できます.

 

図3 透過型ディスプレイを搭載した自動販売機

 

―― ディジタル・サイネージもコンピューティング・デバイスになるのでしょうか.

津乗氏:おっしゃる通りです.ディジタル・サイネージ向けには,コンピューティング・デバイスをモジュール化した標準仕様「OPS(Open Pluggable Specification)」を提唱しています.標準化されたモジュールの入れ換えで,保守やアップグレードなどを可能にする仕様です.ディジタル・サイネージを設置した現場での管理性や保守性などが大幅に向上します.

 

―― 組み込みデバイス向けのプロセッサにはどのような製品ファミリがあるのでしょうか.

津乗氏:ワイヤレス・インフラなどのパケット処理を含むハイエンド・ハイパフォーマンス向けにはXeon系プロセッサ,エンターテインメントなどのグラフィックス処理を含むデバイス向けにはCore系プロセッサ,タブレットなどの小型低消費電力デバイスにはAtom系プロセッサを用意しています.

 

―― さきほどのディジタル・サイネージと自動販売機を組み合わせたコンセプト・モデルでは,どのプロセッサを採用していますか?

 

津乗氏:Core系プロセッサです.

 

―― 従来の自動販売機はローエンドのマイクロコントローラを搭載しています.Atom系プロセッサでも十分なように思えますが....

 

津乗氏:それだと単なる,コントローラの置き換えです.Core系プロセッサを搭載することで,顧客認識やリモート管理,効果測定などの高度な機能を実装した新しいコンピューティング・デバイスを実現できる可能性がひらけます.


●2012年の注目は「第3世代のインテルCoreプロセッサ」と「セキュリティ」

 

―― 昨年(2011年)から今年(2012年)にかけて,どのような動きがありますか.

津乗氏:プロセッサでは「第3世代のインテルCoreプロセッサ(開発コード名はIvy Bridge)」が登場します.現行世代は32nmのプロセスで製造していますが,第3世代は22nmにプロセスを縮小します.性能面ではグラフィックス系を強化しています.

 

―― Ivy Bridgeは楽しみですね.ほかの動きはありますか?

津乗氏:もう一つのトピックとして「セキュリティ」があります.2012年の組み込みデバイスにとって大きなキーワードになるでしょう.組み込みデバイスは動作している状態が人間の目に触れません.インターネットにつながっているということは,セキュリティの脅威に常にさらされていることを意味します.セキュリティ機能の強化に向け,インテルでは,セキュリティ専業ベンダであるマカフィー(McAfee)を買収しました.マカフィーでは,組み込みデバイス上で,予め登録したソフトウェアのみを動作させるホワイトリスティング技術を活用した,ウイルス対策機能と不正変更防止機能を実現するMcAfee Embedded Securityを提供します.

 

―― 2012年以降の展開を聞かせてください.

津乗氏:インテル・アーキテクチャによるデバイスの革新がもたらすソリューションの変革を,皆さまとともに実現していきたいと考えています.組み込みデバイスは要求が多岐にわたる市場です.このため,パートナ企業との協業が重要です.インテルは,ボード・ベンダやOSベンダ,開発ツール・ベンダなどと協力して,革新的なソリューションの開発を支援します.国内ではESECやETなどのイベントで実際にソリューションをご覧いただけると思います.

 また,組み込みエンジニアの方を対象としたウェブサイト「インテル・エンベデッド・デザイン・センタ (http://edc.intel.com/)」をご用意しており,最先端の製品や設計・開発の知識を入手できます.さらに,「インテル・エンベデッド・アライアンス(http://www.intel.com/design/network/ica/)」にご加入いただくと,トレーニングやネットワーキングなどの様々な機会を通して新しいビジネスの開拓ができます.ぜひ登録してみてください.

 


この記事に関するお問い合わせ

インテル(株)
東京都千代田区丸の内3-1-1 国際ビル5階
http://www.intel.com/jp/

 


 

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