近距離無線や高性能プロセッサの開発・評価環境に注目 ―― Embedded Technology 2011
●電子ブック開発用SDKを展示,ePubやPDF,DRMなどに対応
グレープシステムは,米国Foxit社製の「電子ブック開発用SDK」を展示した(写真6).本SDKは,「PDF SDK」,「ePub SDK」,「DRM SDK」の三つの環境から構成される.
PDF SDKは,コンパクトで高速な携帯端末用のPDFレンダリング・エンジンを備えたソフトウェア開発キットである.C++のAPI,ライブラリ,デモ・プログラムから構成されており,携帯機器向けのPDFリーダで閲覧するアプリケーションを開発できる.ページの解析やレンダリングなど,時間がかかる操作については,処理時間を抑えるための工夫が施されているという.SymbianやWindows Mobile,Brew,Linux,ALP,SHPなどに対応する.
ePub SDKは,電子書籍の標準フォーマットであるEPUBファイルの内容をモバイル機器上で表示するためのSDKである.EPUB 3.0とCSS 2.1の規格に対応する.EPUBファイルのパーシングやレンダリングを行うエンジンを搭載しており,リソースの限られたモバイル機器で動作するように最適化されている.携帯電話やeBookリーダ,PDA,パーソナル・メディア・プレーヤなどのモバイル機器の開発に利用できる.日本語や中国語,韓国語,アラビア文字などの言語に対応しており,縦書きや双方向テキストなども実現できる.SymbianやWindows Mobile,Brew,組み込みLinux,Android,iPhoneなどに対応しており,OS間の移植が容易となっている.
●Freescale QorIQプロセッサの評価キットを展示
アドバネットは,米国Freescale Semiconductor社のPowerプロセッサ「QorIQファミリ」の評価キットを展示した(写真7).CPUモジュール(COM Express)やベース・ボード,シャーシ,メモリなどを組み合わせて提供する.CPUモジュールについては,「Adbc7517」,「Adbc7519」,「Adbc7520」の3種類を用意する.CPUモジュールのデバッグはすでに完了しており,開発者はベース・ボードの開発とシステム設計に集中できるという.
Adbc7517は,8コアのQorIQプロセッサ「P4080」を搭載し,ネットワークや通信,ワイヤレス,航空機などのアプリケーションに向いている.Adbc7519は,デュアルコアのQorIQプロセッサ「P2020」を搭載し,主にネットワーク・アプリケーションをターゲットとしている.Adbc7520は,低消費電力指向の「P1021」を採用しており,マルチサービスのゲートウェイやEthernetスイッチ・コントローラ,無線LANのアクセス・ポイントなどに利用できる.
●カメラ機能をマイコンに統合
パナソニックは,カメラ機能を搭載したマイコン「MN103SM2AK1」を展示した.例えば,バーコード・リーダなどの自動認識機器に利用できる(写真8).
写真8 パナソニックの「MN103SM2AK1」を利用したデモンストレーション
本マイコンは,同社の32ビットCPUコアである「AM32H」を内蔵する.動作クロック周波数は72MHz.アナログ・カメラ入力インターフェースの解像度はVGA(640ピクセル×480ピクセル),フレーム速度は30フレーム/s.REC656規格に対応する.外付けのDRAMは不要で,3MビットのSRAM,および画像処理や画像センシングなど,画像を扱う処理に適した高速演算器を備えている.
外部インターフェースとして,LCDインターフェース(SPI:Serial Peripheral Interface),音声出力(PWM),USB 2.0インターフェース,I2Cインターフェースなどを備えている.フラッシュROMを外付けする場合は,SPIを利用する.
きたむら・としゆき