若手よ来たれ! テスト漬けの2日間でモチベーション向上 ――WACATE実行委員長 山崎 崇氏に聞く

Tech Village編集部

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インタビュー 2011年11月 8日

 若手技術者による,若手技術者のためのソフトウェア・テスト・ワークショップ合宿「WACATE(Workshop for Accelerating CApable Testing Engineers)」が,今年も2011年12月17日(土)~18日(日)にマホロバ・マインズ三浦(神奈川県三浦市)にて開催される.本ワークショップ合宿は,1回目を2007年12月に開催して以降,夏と冬の年2回のペースで開催を続けてきた.企画する側も若手技術者ということで,忙しいなかどのように運営をやりくりしているのか,また,今回のワークショップ合宿にはどのようなねらいが込められているのかについて,WACATE実行委員会 実行委員長である山崎 崇氏に聞いた(写真1).

 

写真1 山崎 崇氏(WACATE実行委員会 実行委員長)

 

●「テスト道」には5段階がある

―― この12月に開催する「WACATE2011 冬」のテーマは「咲かせてみせようテスト道」となっていますが,どのような思いが込められているのでしょうか?

山崎氏:ボーリス バイザー氏が書籍『ソフトウェアテスト技法』の中で「テスト担当者の精神面による区分」(1*)を示しているのですが,それを電気通信大学の西 康晴先生が「テスト道」と呼んでおり,今回はその言葉を拝借しています.

 テスト道は,テストの目的やテストに対する考え方について5段階に区分されていますが,ぜひWACATEを通じてテスト道の段階を駆け上がるきっかけを得て,みごと大輪の花を咲かせてほしいという思いから,今回のテーマを「咲かせてみせようテスト道」としました.

―― ワークショップを構成するプログラムは,どのように選んだのでしょうか.

山崎氏:個々のセッションについては,実行委員会での話し合いによって決めています.主にブレスト(ブレーン・ストーミング)によってどのようなセッションをやりたいのかを出し合い,その中でテーマ性や全体の構成を調整しつつ,セッションの実現可能性なども勘案して決定しています.

 

●初参加でも大丈夫?

―― WACATEワークショップは今回で9回目となりますが,リピータ率はどれくらいなのでしょうか?

山崎氏:ここに,WACATEの初参加者の比率を示したグラフがあります(図1).初回はもちろん100%が初参加者ですが,それ以降はだいたい50%前後で推移しています.グラフで示している値は初参加者ですので,その逆が複数回WACATEに参加している人の割合になります.

 初参加者とリピータの割合が極端にどちらかに偏ってしまうのは,WACATEという場としてあまり健全ではないと考えていますが,現在のところ,ありがたいことに非常に良い状態になっていると思います.

 

図1 WACATEの初参加者比率(2007年冬~2011年夏までを集計したもの)

 

―― 初参加だと浮いてしまう,ということはありませんか?

山崎氏:確かに,ワークショップという形態を主としているため,初参加では周囲から浮いてしまうのではないかという懸念を持たれるかもしれません.しかしWACATEでは,円滑に議論や演習を行っていただけるようにさまざまな工夫を行っています.

 例えば,参加者には必ず自分自身について述べたA4用紙1枚程度のポジション・ペーパを提出してもらっています.このポジション・ペーパを使って,オープニング後のセッションでそれぞれ自己紹介をしてもらい,演習や議論の前に,まずお互いを知る機会を設けています.

 また,多くのセッションは班単位で構成されますが,この班の構成にも気を配っています.なるべく年代がばらけるようにしたり,WACATEへの参加率が高い方を各班に1名含めるようにするなど,班を構成するにあたって考慮する項目は数多くあります.

 名札も参加回数によって色分けし,常連さんには初参加者をなるべく気遣っていただけるように,また初参加者には積極的に常連さんにWACATEの雰囲気などを質問できるようにしています.

 そのほかにもさまざまな工夫を行っているので,初参加だからとためらっている方には,ぜひ安心して参加していただきたいと思います.

―― 今回のWACATE2011の一番の目玉となるプログラムを教えてください.

山崎氏:本当にどれもこれもお勧めなのですが(笑),その中であえて選ぶとすると,招待講演とテスト・プロセスのセッションでしょうか.

 WACATEでは,2日間の締めくくりとして,この業界の先輩から若手技術者に向けてメッセージをいただくべく,クロージング・セッションという招待講演を毎回企画しています.今回は,日本電気の誉田 直美氏にご講演いただきます.実は以前に実行委員が誉田氏の講演を拝聴したのですが,その講演に感銘を受け,ぜひWACATEという場で若い技術者に向けてお話しいただきたいと考えたのがきっかけです.ぶしつけながら講演をお願いしたところ,快くお引き受けいただき,実行委員会のメンバもいまから講演を楽しみにしています.

 また,もう一つのテスト・プロセスに関するセッションですが,このセッションはトータルで4時間の長丁場となります.実際に手を動かしたり,班で話し合ったりと,WACATEの特徴であるワークショップを存分に楽しんでいただけるセッションになるかと思います.

―― ディナー・セッションや夜の分科会では,特別な出し物があるらしいと聞いたのですが?

山崎氏:ディナー・セッションでは,参加者の皆さんに楽しんでいただけるよう,単に夕食を共にするだけではなく,いろいろな出し物を用意しています.

 過去には大がかりなバンド演奏などを行ったこともありますが,これは参加メンバの予定などがカッチリと合ったためにできた特殊な例ですね.今後も機会があれば挑戦したいと思っています.

 今回については,大がかりな仕掛けは難しいですが,何かしたいとは考えています.詳細についてはネタバレになるため,ご容赦ください....け,決してまだネタを決めていないわけではありませんよ(笑).

 分科会は,各テーマごとにグループに分かれて話し合うセッションですが,夕食後ということもあり,飲みつつ,つまみつつといった雰囲気の中で行われます.朝からここまでテスト漬けだったにもかかわらず,話が尽きることはないようで,毎回,最後まで盛り上がっています.

●実行委員会の舞台裏を覗く

―― WACATE実行委員会の皆さんは忙しいエンジニアの方々だと思うのですが,企画や運営のための時間はどのようにして捻出していますか?

山崎氏:実行委員の活動は,基本的に個人のプライベートな時間を使って行っています.潤沢な時間が確保できるわけではないので,会議や話し合いなどについては,いろいろな方法を使って進めています.

 顔を合わせて話し合うのが一番効率が良いのですが,なかなか都合を合わせるのが難しいため,実際に集まる会議は基本的に月1回のペースで実施しています.また,Skypeなどの音声チャットを週1回で2時間程度,それ以外はメーリング・リストによって話を進めています.また,大きなマイルストーンの前などに合宿をすることなどもあります(写真2).例年だと,プログラム公開や受付開始前などに行うことが多かったようです.情報の蓄積などには主にWikiを活用しています.

 

写真2 WACATE 2011 冬に向けての実行委員会合宿(2011年9月に開催した)

 

 あらためて考えてみると,決して楽な作業ではありませんが,実行委員としての活動は個人としてのスキルを伸ばすことに着実に繋がっています.WACATEに何度も参加している方には,ぜひ次のステップとして実行委員になっていただけけると嬉しいですね(写真3).

 

写真3 WACATE2011 夏の実行委員

 

―― WACATEを企画していて,「ネタ切れになった」と思うことはありませんか?

山崎氏:単純にネタ切れということはありません.毎回どのようなセッションをやりたいかブレストしていき,その中でテーマに沿ったものやセッションとして成立しそうなものを選んでいます.また,セッションによってはテストに直接的に関係するというよりは,間接的なものもあったりします.過去の例では,レビューやメトリクスなどは,直接的にはテストのセッションではありませんが,テストを考えるうえで関連性が高く,非常に重要なものであると考えて,取り上げたこともあります.

―― WACATEの運営側は,最初は"若手"でも,何年か続けているうちにベテランに近づいてきていると思いますが,"若手"の立場に立つために何か工夫をしていますか.

山崎氏:セッションを企画する軸として,「若手のエンジニアにとってどうなのか」を常に意識するようにしています.例えば,テスト業界でホットなトピックがあったとしても,それが若手に向いていないと判断した場合は取り上げなかったりもします.

 また,WACATEはテストのワークショップ・イベントですが,1泊2日の大勉強会と言った方が分かりやすいかもしれません.参加者にはある程度事前に予習をしてきてもらうことが前提となっているので,若手向きイコール「簡単である」というわけではありません.

 ですので,WACATEという場が開催を重ねることにブラッシュアップされていくことはあっても,ベテラン向けの場になっていくということはないと考えています

 また,実行委員自身もなるべく若手が中心となるように心がけています.少ない人数で切り盛りしているので,なかなか難しいところもあるのですが,新しい仲間を迎えるとともに,実行委員で成長した者はWACATEを卒業して次のステップに進んでいけるような体制を作っていこうとしています.

―― WACATEに参加すると得られる一番の成果は何ですか?

山崎氏:参加者の皆さんには,いろいろな気づきを得てもらえるように,各セッションで工夫をこらしています.いろいろなものを持ち帰っていただけると思うのですが,その中でも一番のものは,モチベーションを得られるということかもしれません.

 1泊2日の間,どっぷりとテスト漬けの時間を過ごします.テストを専門としている技術者でも,ここまで高密度にテストについて考えることはまれでしょう.また,テストという分野はソフトウェア開発の中でも比較的新しい分野であるため,会社でテストについて聞いたり議論したりできる場がないということも少なくありません.

 WACATEという場はテストというキーワードで集った仲間がいます.そんな仲間たちと,コミュニケーションを主とした各種セッションに参加し,温泉で裸のつきあいをし,同じ釜の飯を食べ,2日間を過ごします.この2日間の体験そのものが,WACATEに参加して得られる一番のものなのかもしれません.

 

※2011年12月17日(土)~18日(日)に開催される「WACATE 2011 冬」の参加申し込み締め切りは2011年11月13日(日)です.なお,参加募集人員に達した場合,この日より前に締め切る可能性があります.希望される方は,お早めにお申し込みください.

 

参考・引用*文献
(1*)ボーリス バイザー;『ソフトウェアテスト技法―自動化、品質保証、そしてバグの未然防止のために』,日経BP出版センター,1994年2月.

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