ソフトウェア・プロダクト・ライン開発手法の実践的導入事例(1) ―― 管理者は「石の上にも3世代目」

岩崎 孝司

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技術解説 2011年9月16日

●導入拡大期~現在:大きな成功事例の出現

 しかし,2010年になって,大規模開発プロジェクトであるシステム・ファームウェア開発において,定量的かつ大きな成果が報告されました.プロダクト・ライン導入2年目にして,投資額をほぼ回収したプロダクト・ライン適用の成功事例が生まれました.このプロジェクトの詳細な適用事例は,次回の連載で紹介しますが,このプロジェクトは,以下に示すような大規模なものでした.

  • 開発期間:1年以上
  • 開発メンバ:約300名
  • 開発規模;数百kLine以上

 このような,大規模プロジェクトへの設計から実装にわたる全工程へのプロダクト・ライン適用の投資は大きなものでしたが,後述するように,それに見合う投資効果を得ることができました.一般に,プロダクト・ラインの導入効果が現れるのは開発の3世代目と言われていますが,このプロジェクトでは,2世代目の開発時点で,それまでのプロダクト・ライン導入に投入した全社の投資を,このプロジェクトの削減コストだけで回収するほどの成果を上げることができました.

 このプロジェクトの成功事例により,開発部門自らが進んでソフトウェア・プロダクト・ラインを開発プロジェクトに導入するなど,ソフトウェア・プロダクト・ラインの全社への適用が大きく加速しました.2011年以降は,異なる開発タイプの大規模プロジェクトへのプロダクト・ライン導入など,今まで以上に多くの開発人員の取り組みが予定されています.


●ソフトウェア・プロダクト・ライン導入の投資対効果

 図3は,弊社の全プロダクト・ライン開発プロジェクトに対する投資額累計と開発コスト削減額累計を年度別に示したものです(2010年度以降分は見積もり値).

 

図3 当社でのSPL導入による投資と成果

 

 

 この「投資額」は,外部委託によるコンサルティングを含む,先行調査にかかった費用や導入ワーキング・グループ活動などの人件費の費用です.なお,実際の開発でプロダクト・ライン適用によるコア資産開発などに関する費用は各プロジェクトの負担としているため,投資額には含まれていません.開発コストの「削減額」は,各プロジェクトで設計したプロダクト・ライン適用による削減コストから,プロダクト・ライン適用のために発生したコストを減算したものです.

 図3のプロジェクトA,B,Cは,プロダクト・ラインを全工程に導入した主要3プロジェクトを示しています.先に紹介したプロジェクトは,最大で30%弱の効率向上を達成しており,コスト削減額累積の半分以上はそのプロジェクトによるものとなっています.開発部門やシステム規模,プロダクト・ライン開発手法を導入した工程によって適用効果はさまざまでしたが,およそ3年をかけて会社全体の投資額を回収する見込みです.プロダクト・ライン開発手法の初期導入には一定の成果を収めたものと考えています.

*          *          *

 今回の経験から,プロダクト・ライン導入の初期投資コストは決して少なくはないものの,適切な導入を行えば,短期間で,初期投資の回収が可能なことが分かりました.次回以降は,各プロジェクトについての具体的な適用事例や,プロダクト・ライン導入を成功に導くためのポイントなどを紹介する予定です.


いわさき・たかし
富士通九州ネットワークテクノロジーズ(株)

 

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