非接触給電技術やモバイル太陽電池技術に注目 ―― TECHNO-FRONTIER 2011 レポート
●モバイル機器用の太陽光発電システムを展示
太陽光発電の展示では,4セル以下と少ない太陽電池セルでモバイル機器を充電するシステムを想定した充電ICの展示が目立っていた.
ロームは,太陽電池の出力をノート・パソコンや携帯電話機などのモバイル機器に充電するIC「BU1840MUV」を開発中である.セル数が2セルと少ない太陽電池パネルの出力を,「BU1840MUV」を通じてノート・パソコンのリチウムイオン電池に充電する動作を実演していた(写真6).「BU1840MUV」は最大電力点追随(MPPT:Maximum Power Point Tracking)機能を持ち,0.7Vと低い入力電圧から動作する.2セルあるいは4セルの太陽電池パネルに対応する.
写真6 太陽電池の出力をノート・パソコンのバッテリに充電するデモンストレーション
充電にはMPPT機能付きの昇圧コンバータIC「BU1840MUV」(開発中)を使用した.

STマイクロエレクトロニクスも,太陽電池の出力をノート・パソコンや携帯電話機などのモバイル機器に充電するIC「SPV1040」を展示した(写真7).「SPV1040」は入力電圧の下限が0.3Vと低く,MPPT機能を備える.ブースでは,モバイル充電器への応用例を展示していた.
写真7 太陽電池を利用したモバイル充電器
MPPT機能付きの昇圧コンバータIC「SPV1040」を使用した.

リニアテクノロジーも,MPPT機能付きの昇圧コンバータIC「LTC3105」を展示していた.入力電圧範囲は0.225V~5Vと広い.1セルの太陽電池パネルの出力から,リチウムイオン電池を充電できる.
●フライホイールで20年と長寿命の蓄電システムを実現
蓄電システムでは,フライホイールを利用した蓄電システムをサンケン電気が展示し,来場者の目を引いていた.
フライホイールとは回転損失のきわめて少ないディスク状の回転体で,機械エネルギーや電気エネルギーなどを一時的に回転エネルギーに変換して貯えるために使われる.蓄電池に比べると寿命が長い,高温環境下でも使えるといった特徴を備える.一度設置すれば,20年以上は利用できるとする.
フライホイールを利用した蓄電システムは,フライホイール・ユニットとインバータ・ユニットで構成されている(写真8).フライホイール・ユニットでは回転エネルギーを3相交流電力に変換して出し入れする.フライホイールの最大回転速度は6000rpm,重量は285kgである.蓄電エネルギーは最大1MJ.インバータ・ユニットでは3相交流電力を直流電力や商用交流電力などに変換するとともに,フライホイールの動作を制御する.
写真8 フライホイールを利用した蓄電システム
左手前がインバータ・ユニット.右奥がフライホイール・ユニット(展示用に蓋の一部を削ったもの).フライホイールの開発と製造はベルテックと鈴木プレス工業が担当した.

ふくだ・あきら
フリーランス・テクノロジ・ライタ
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