スマート・ハンドヘルド機が台頭,COMPUTEXにおける日本企業の存在感は低下!? ―― COMPUTEX TAIPEI 2011

大西 秀一

tag: 組み込み

レポート 2011年6月 6日

 2011年5月31日~6月4日,アジア最大規模のコンピュータ見本市である「COMPUTEX TAIPEI 2011」がTaipei World Trade CenterおよびTaipei International Convention Center(台北市,台湾)にて開催された(写真1).本イベントは,世界各国のバイヤーが商品の買い付けに訪れる,非常に活気のある催しである.筆者自身はバイヤーではないので,組み込みシステム(特にソフトウェア)を開発する側の視点で報告する.

写真1 COMPUTEX TAIPEI 2011の会場の様子


 Taipei Computer Association(TCA) Tokyo Officeの吉村 章氏によると,今回のCOMPUTEXのキーワードは「Smart Handheld Devices」だという.また,三つの見どころとして,「COMPUTREND」と「Best Choice AWARD」,「Microsoft」を紹介いただいた.これらを念頭に,会場を回ってみることにした.

●タブレット機をはじめとしたハンドヘルド機が流行の兆し

 Smart Handheld Devicesは,直訳すると「賢い手持ちの機器(ハンドヘルド機)」である.会場では,多くのブースで薄型のタブレット機を展示していた(写真2写真4).Wi-Fiだけでなく,3GやWiMAXに対応した機器も数多くある.各社は,通信ネットワークを利用することで,インタラクティブな機能を提供する機器(ハードウェア)をそれぞれ発表していた.

写真2 Acer社のWindows7搭載のタッチパネル付きタブレットPC


写真3 PIPO TECHNOLOGY社のブース


写真4 SHENZHEN SKYWORLD TECNOLOGY社のブース


 ただし,組み込みソフトウェア開発者の観点から見ると「それではソフトウェアはどうするの?」という疑問が沸いてくる.この疑問を現地のソフトウェア会社の営業担当者にぶつけたところ,「そこが台湾の電子業界の弱みであり,ビジネス・チャンスである」との回答が返ってきた.台湾はハードウェアのアジアの工場として発展を続けており,今後も発展していくだろう.しかし,通信インフラを用いたサービスや作り込みの点では,自国で提供する部分がまだ弱いようである.

 今冬のハードウェアのトレンドはSmart Handheld Devicesである,という会場の雰囲気はつかめたが,そのデバイスを利用して何を実現するのかは市場の要望を待っている状況のようだ.このあたりにビジネス・チャンスがあると思われる.

●興味深いBest Choice AWARD

 Best Choice AWARDは,本イベントの開催前に投票で選ばれた,もっとも優れた機器やもっとも売れた機器に対して贈られる賞である(写真5).そのため,既に流行した「Best Choice」を追いかけて,これからビジネスに参入しようとしても既に遅い.しかし,筆者のようなエンジニアにとっては飛びつきたくなるエリアだった.

写真5 Best Choice AWARDに選ばれたASUSTeK Computer社の「Eee Pad Transformer」

 

●Microsoftがスマート・デバイスで猛反撃

 Microsoft社は,自社OSを搭載しているデバイスを一同に集めて展示していた(写真6).つまり,Microsoft社のブースを訪れれば,MicrosoftのOSを搭載している全デバイスを評価できるということになる.そのせいかブースは盛況であり,デバイスとしては,Windows7を搭載したタブレットPCとWindows Phone 7搭載のスマートフォンが目を引いた.競合他社に対してどこまで盛り返すことができるかをにらんだ積極的な展示であった.また,ブース内の特設エリアでは,ITサービスや健康などといった将来性のありそうな技術紹介を行っていた.

写真6 Microsoft社のブース

 

●台湾企業が日本を見なくなりつつある

 本イベントの会場は6ホールにわたり,ホール間を結ぶシャトルバスが運行されるなど,非常に巨大な催しものだった(写真7).COMPUTEXには,クリスマス商戦の商材を買い付けにバイヤーが世界中から集まるそうだ.よってバイヤーたちが一番選択したモノが今冬のトレンドになりやすい.最終的に選択するのは消費者だが,流行するであろうデバイスを先に見ることができる本イベントは非常に楽しく,興味を引いた.

写真7 会場の様子


 最後に,TCAの吉村氏から聞いた忘れられない言葉がある.「今回のCOMPUTEXでは日本離れが顕著だ.日本はスピードが遅い,柔軟さがない,慎重すぎる.そのため,台湾企業は日本を見なくなりつつある」というのだ.

 台湾は親日家が多いことで有名だが,その台湾においても日本の評価が下がっていることを寂しく感じた.1人当たりの購買力平価ベースのGDP(Gross Domestic Product;国内総生産)では,2010年に日本は台湾に抜かれている.成長著しい台湾と,マイナス成長が続く日本.日本はパートナーをもっと外に得る必要があるのではないだろうか? そのようなことも考えさせられたイベントだった.


おおにし・しゅういち
(株)ヴィッツ

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