PICマイコンを使って測定ツールを作ってみよう(4) ―― ネットワークでセンサ・データを集めて省電力生活を目指す

中西 紫朗

tag: 組み込み 電子回路

エレキ系DIY 2011年6月10日

前回の記事(連載第3回)では,2,500円程度の低予算で作成できるPICマイコン基板を4台接続して,簡易ネットワークを構築した.ホスト・パソコンから希望するPICマイコン基板の液晶ディスプレイにメッセージを送り,表示した.今回はこの基板に各種のセンサを接続してパソコンにデータを送り,収集したデータをグラフで表示する.センサとして,温度センサ,湿度センサ,照度センサ,赤外線センサ,紫外線センサ,交流電流センサ,放射線センサ(ガイガーカウンタ)などを接続する予定.1回だけでは説明しきれないので,複数回に分けて説明する.

 

エレキ系DIY・連載「PICマイコンを使って測定ツールを作ってみよう」 バック・ナンバ
第1回  クロック周波数やモータの回転数を測れるカウンタを作る(前編)
第2回  クロック周波数やモータの回転数を測れるカウンタを作る(後編)
第3回  Visual BasicでPICマイコンを制御する

 

 今回から数回に渡って,家庭内の正味の電力消費を「見える化」するための製作事例を紹介します.「今,どの部屋の電力消費量が多いか」,「何時ごろに最大電力を消費しているのか」などがすぐに分かるようにします.政府は「計画停電はない」と言っていますが,今夏が猛暑になれば,電力消費量が供給量を上回るかもしれません.そのような場合に備えて,家庭向けの非常用電源も大手家電メーカから売り出されていますが,かなり高価です.常日ごろから我が家の電力消費量を把握して,できるだけ無駄を排し,省電力の生活を目指すのが現実的な対応だと思います.

 

●生活の中にはさまざまなセンサが存在する

 私たちの周りでは,すでにいろいろなセンサが使われています.ただし,それらは家電製品などに組み込まれており,その製品の中では立派に機能していますが,計測値を外部に取り出して使うことはほとんど出来ません.

 電力消費という観点からみると,冷暖房機器や給湯蓄熱機器,冷蔵庫,洗濯機,掃除機,大型テレビ,照明器具などが代表的な電力消費機器でしょう.20年前はインバータ・エアコンなどはなく,その動作も間欠的で,電力の変動が大きかったのですが,最近はインバータの普及により電力消費量は激減し,電力の変動も少なくなってきています.

 冷暖房や給湯機器の電力消費は,外気の温度に大きく左右されます.熱遮蔽効率の高い壁や天井,また太陽光放熱効果の高い植物などを採用している家は,さほど外気温度に影響されず,冬場でも電力使用を抑えられます.夏場は逆に,いかに熱を放散させるか,いかに風通しを良くするか,ということが課題になりますが,最近の建築物はこういう点にも配慮した構造になっています.なんらかの新しい試みを導入したとき,導入前と比べてどれだけ効果があったかを測定することは,その対策の価値を正しく評価するという意味で重要です.

 私たちの生活に一番大きな影響を与えるパラメータは「温度」です.ただし,気持ちよさについては「湿度」が影響します.人間は機械と違い,温度が少々高くても(あるいは低くても)体が慣れ,環境に適応してしまいます.冷暖房機器を使うときは,外気温も一つのパラメータにしてしまい,できるだけ電力消費を最小にする運転を行うことが重要です.また,LED電球の普及もあり,照明の電力消費量は減少していますが,それでもなお家庭内では大きな割合を占めています.外部の照度により室内の照度を調節することは,目にとっても良いと思います.

 お肌の健康には,紫外線が大きく影響します.紫外線に全然あたらないことは,かえって不健康ですが,強度の紫外線は有害です.そういう意味で,戸外の紫外線がどの程度あるかを測定することは,有益な情報と言えます.

 特殊なセンサとして,ガイガーカウンタがあります.福島第1原発では大量の放射性物質が漏えいし,空気中に拡散しました.放射能の測定機器は高価ですが,精度が低いものであれば,日曜工作程度で作れます.マイコンを使うので,出力は数値で出てきます.これは相対的な比較に使えると考えています.放射性物質が体外にあるときは一度だけの被ばくですが,体内に取り込まれると長期にわたって被ばくすることになります.そういう意味で,放射線量を簡単に測定できると,安心して生活できます.

 

●センサ情報をネットワークを介して収集する

 図1にPICマイコンを使った家庭用センサ・ネットワークの全体のイメージを示します.

 

図1 家庭用センサ・ネットワークのイメージ

 

 PICマイコンにはアナログ入力があります.これにいろいろなセンサを接続して,アナログ値を読み取ります.アナログ値は内部のA-Dコンバータでディジタル値に変換され,液晶ディスプレイに表示されます.センサは,家の内外のいろいろな場所に配置します.一つのPICマイコンでは処理できないので,複数のPICマイコンをネットワークでつなぎ,ホスト・パソコンにデータを集めるという形になります.

 PICマイコン間は,電話用ケーブルに使われている細いツイスト・ペア線でつなぎます.RS-485は,200m程度の距離なら十分に機能し,家の周囲ぐらいは届きます.その家の状況により,収集すべきデータの組み合わせはいろいろと変化します.そういう変化に対応するには,VB(Visual Basic)による制御が最適です.

 

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