PICマイコンを使って測定ツールを作ってみよう(1) ―― クロック周波数やモータの回転数を測れるカウンタを作る(前編)
tag: 組み込み 電子回路 ディジタル・デザイン
エレキ系DIY 2009年8月25日
ここでは2,500円程度の低予算で,さまざまな計測に使える基板を作成する.USBインターフェースを備える市販のPICマイコン搭載基板(秋月電子通商のPIC18F2550-I/SO)を中心に構成するので,外付けが必要な部品の数は少ない.これにより,カウンタ,RS-485モニタからストレージ・オシロまで,10種類のアプリケーションを実現できる.連載第1回の今回は,使用する基板や部品の概要と,カウンタの実現方法について解説する.
世に測定機器は山ほどありますが,たいていの人は中身を知らずに使っています.筆者の職場でも,高価な測定機器が棚にあふれるほど置いてあり,必要になれば引っ張り出して使用します.最近の機器は,液晶表示,タッチパネル方式が主流になり,だいたいの連想で使い方をすぐにマスタできます.しかし,基本的な動作原理を理解していない人もいます.今回は,超低予算で,素人でも測定の基礎を理解できることを念頭に,実戦から学べるような基板を製作してみました.
1.使用する基板や部品の概要
●秋月電子通商のPICマイコン基板を中心に製作
構成部品はパーツ・ショップの秋月電子通商で入手できるものばかりです.表1に主要部品の一覧を掲載します.関東地区の方は,秋葉原まで出かけていただくか,通販を利用して取り寄せて組み立てることが可能です.関西地区や地方の方は通販しか購入手段はないのですが,2日も待てば届きます.表面実装部品などがすでに実装されている市販のPICマイコン基板を使うので,あとはICソケットやコネクタ,ピン・ヘッダ,スイッチ,LEDなどをはんだ付けするだけで動作します.
電源は,USBケーブルを接続したパソコンからもらいます.電池駆動も可能ですが,机上で使う限りパソコンはそばにあるでしょうから,実用上は問題ありません.
※ 当初, 掲載していた部品表に「MC33202」を追加しました.お詫びして訂正します.
感光基板での回路図を図1に示します.マイクロコントローラであるPIC18F2550を搭載した基板を中心に,8×2文字の液晶パネル,タクト・スイッチ,LED,コネクタなどがあります.また,オンボード・プログラミングが可能で,プログラムを修正するときにいちいちICソケットから外してライタに接続する必要はありません.基板の横に出ている6ピンのピン・ヘッダに書込み器であるPickit2を差し込めば,それだけでPICマイコン(PIC18F2550)に新しいプログラムを書き込めます.この便利な点は,電源が上がりっぱなしでもPickit2はそれを検出して外部電源に合わせた動作を行ってくれることです.いちいちUSBケーブルを外す必要はありません.
●感光基板を準備中,本格的な基板も業者に発注する予定
写真1は部品を実装した基板です.写真2のPICマイコン基板と8×2文字液晶パネルを右のユニバーサル基板に差し込むとできあがりです.コネクタなどのはんだ付けには注意してください.はんだ付けに失敗すると,接続不良が多発して,デバッグに苦労します.はんだ付けでは,はんだこてをピンに当てて十分にピンを暖め,はんだリールからはんだを近づけて,徐々にはんだを溶かします.ピンを中心に富士山型にはんだの裾野が広がる形になるのが理想です.はんだこてを離すのは,早すぎても遅すぎてもいけません.これは経験しだいで,慣れるしかありません.今回はICソケットを利用するので,たとえ10分はんだこてをピンに当てていても熱で壊れるようなことはありませんが,ICなどを実装する場合には温度上昇に注意してください.
写真1ではユニバーサル基板を利用していますが,まもなく感光基板ができあがる予定です.感光基板ではLEDが2個に減ります。またタクト・スイッチの位置も変わります。希望者の方には実費で配布したいと思います.
配布する基板は,当面は感光基板ですが,連載の回を重ねるうちに,業者に依頼して本格的な基板を作成したいと考えています.連載の後半では,A-DコンバータやSRAMを接続し,ストレージ・オシロの真似ごとまでする予定です.そのときには,感光基板を本格的な基板に取り替えないといけません.主要部品はすべてソケットに差し込む形なので,基板が変わっても再利用できます.スイッチやLEDは取り外すよりも,新しいのをはんだ付けしたほうがいいでしょう.
秋月電子通商のオンライン・ショップはhttp://akizukidenshi.com/catalog/です.感光基板,もしくは表1の部品の全部を注文したい方は筆者(sales@nslab.jp)までメールをください.
●10種類のアプリケーションを開発
写真3はユニバーサル基板上に回路を組んで動作させているところです.LEDの光が強すぎて,見づらいかもしれませんが,横7cm,縦4.5cmのサイズで,USBのミニBサイズのコネクタと比べても,非常にかわいらしい大きさです.手のひらにすっぽり隠れてしまいます.感光基板では,回路を増やすため7cm×7cmと大きくなります.
黄色と青色のタクト・スイッチでメニュー・リストを上下させます.実行したいメニューが液晶パネルの上の列に現れたら,緑色のタクト・スイッチを押して選択します.電源投入直後はカウンタ・モードに入っているので,メニュー選択モードにしたい場合はまず緑色SWを押します.緑色のタクト・スイッチがICとPICマイコン基板の間にはさまれていて押しづらいので,感光基板では位置を基板端に移します.
開発するアプリケーションには,以下のものを予定しています.1カ月に1テーマ程度の割合で発表していくつもりです.
- カウンタ
- RS-485モニタ
- 電圧ロガー
- 電流ロガー
- 交流電力ロガー
- I2Cモニタ
- SCIモニタ
- ロジック・アナライザ
- ストレージ・オシロ
- MP3プレーヤ
8番目のロジック・アナライザ以降については,SRAMとA-Dコンバータを搭載した基板を増設する必要があります.材料費は3,000円ぐらいで,そう高価なものではありません.