はやぶさのソフトウェア開発者,テストを語る ―― ソフトウェアテストシンポジウム 2011東京(JaSST'11 Tokyo)レポート

北村 俊之

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レポート 2011年2月 3日

●ユーザ作成テストや小規模ワークショップに期待大

 アジャイル開発の視点では,「Test-first Development」,「Acceptance Test-driven deveropment(ATDD)」について解説した.「Test-first Development」は,あらかじめテスト・ケースを作成しておき,テストを行いながらコーディングを行い,そのつど不具合をつぶしていくという手法である(写真7).また「Acceptance Test-driven deveropment(ATDD)」は,ユーザ側がテスト・ケースを用意するという手法である(写真8).特にこの手法では,ユーザ自身がテスト・ケースを作成するため,それがそのままソフトウェアの仕様書となるメリットがある.

写真7 「Test-first Development」について

 

写真8 「Acceptance Test-driven deveropment(ATDD)」について

 

 教育の視点では,「Really Good Books」,「(Big)Testing Conference」,「(Small)Testing Conference」,「Freedom of the Press」について解説した.特に「Testing Conference」では,今回のJaSSTのような大規模なコンファレンスはもちろんだが,15~20名規模の小規模なコンファレンスに注目が集まっているという.こうした小規模なコンファレンスは,小さなトピックでワークショップを行うような形態が多くなっており,より深く学習を行いたいと思っているテスタは,ぜひ参加してみるべきだろうと推奨した.

 技術とツールの視点では,「Open-source tools」,「Virtualization」,「Testing in the Cloud」について解説した.以前とは異なり,現在ではテスト環境やその手法のバリエーションが充実しているため,さまざまな選択肢が用意されていることを指摘した上で,例えばオープン・ソース・ツールの検討,仮想化技術の導入,状況に応じたテスト作業の委託などは,テスト効率の向上とコストの削減に大きく貢献すると指摘した.

 プロセス改善の視点では,まずTPI(Test Process Improvement)を挙げた(写真9).TPIは改善手法を20のキー・エリアに分け,それぞれの達成レベルを表にして,その結果に応じたアドバイスなどが行われるというものだが,あまり普及していない.もう一つはTMMiで,こちらはCMMI(Capability Maturity Model Integration)互換のテスト能力の成熟度を測るモデルである(写真10).こうした評価による改善を探る手法は,米国ではあまり受け入れられないが,欧州では受け入れられつつあるという.

写真9 TPI(Test Process Improvement)について

 

写真10 TMMiについて

 

 講演の最後に,同氏は「Future Innovations?」として,オブジェクト指向プログラミングの基礎を築いた功労者であり,同氏の友人でもあるAlan Key氏の言葉"The best way to predict the future is to invent it."を引用し,「決して満足することなく,イノベーションを続けることを忘れないで欲しい」と述べて講演を締めくくった.

●担当技術者が「はやぶさ」のソフトウェア開発を語る

 開催2日目には,NEC東芝スペースシステムの檜原 弘樹氏による招待講演「『はやぶさ』をミッション完遂に導いたソフトウェア開発」が行われた(写真11).同氏は,人工衛星の構造が携帯電話端末と類似しており,人工衛星開発がそう特殊なものではないことを説明した.宇宙関連は「夢がある」とよく言われるが,開発を受ける企業の立場からするとビジネスの一つであると語った.また,高信頼性システムを実現するための方針として,「最初から正しく作る(試験できるような機能を設計する)」,「見逃さない」,「リスクに備える」,「コンティンジェンシ(予期しない事態)に対応する」の四つを挙げ,はやぶさのソフトウェア開発について振り返った.

写真11 講演する檜原 弘樹氏

 

 講演の最後に檜原氏は,技術が”ガラパゴス”であることにも良い点があると語った.独自技術のインキュベータは日本にもあり,皆ができそうにないと思うことでも「やろう」と決めて取り組めばできることもあるという.また,今回の開発にあたって米国NASA(National Aeronautics and Space Administration)とやりとりする際に,日本的な発音の英語(Janglish)でも通じたことや,Janglishに意外と聞きとりやすい面もあるようだと述べ,英語の発音にコンプレックスを持っている日本人技術者にエールを送った.

きたむら・としゆき

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