名著の著者が来日,さらに「はやぶさ」や「ソフトウェア品質会計」など,話題の講演が目白押し ―― JaSST'11 Tokyoプレビュー

小西 洋平

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レポート 2010年12月24日

 2010年は,日本でソフトウェア・テスト団体のイベントが開催され,海外の著名なテスト・エンジニア/研究者が多数来日した年でした.また,海外のテストにかかわる技術者のエッセイやノウハウを集めた和書も刊行され,テスト業界のグローバル化が感じられた年だったのではないでしょうか.

 さて,2011年1月25日(火)~26日(水)には目黒雅叙園にて,「ソフトウェアテストシンポジウム2011東京(JaSST'11 Tokyo) 」が開催されます.ソフトウェアテストシンポジウムは,ソフトウェア品質の評価や検証に対する関心の高まりと共に,東京だけでなく,北海道,東海,関西,四国,九州の各地域で開催される国内最大級のシンポジウムに成長しました.このシンポジウムは,ソフトウェア・テストにかかわるエンジニア,マネージャ,研究者,ツール・ベンダなどが一堂に会し,情報発信を行う場となっています(写真1).




写真1 昨年開催されたソフトウェアテストシンポジウム2010東京(JaSST'10 Tokyo)の様子

 

 ここでは,基調講演や招待講演,チュートリアルなど,「JaSST'11 Tokyo」の見どころについて紹介します.

●『はじめて学ぶソフトウェアのテスト技法』の著者が来日

 基調講演では,テスト業界で世界的にも著名なコンサルタントであり,ソフトウェア・テスト技法やエッセンスのつまった良書『はじめて学ぶソフトウェアのテスト技法』の著者であるSoftware Quality Engineering社のLee Copeland 氏を米国からお招きします.同氏の35年以上に渡るソフトウェア開発/テストのキャリアに基づいて,テスト・プロセスやテスト技術,ツール,アジャイル開発がもたらした変化,テスト・プロセスに関する最新トレンドやイノベーションについてご講演いただきます.多くの開発エンジニアの皆さんが興味を持たれる内容なのではないでしょうか.

●小惑星探査機「はやぶさ」のソフトウェア開発について紹介

 招待講演では,未だ記憶に新しい小惑星探査機「はやぶさ」にてミッションを完遂に導いたソフトウェア開発について,NEC東芝スペースシステムの檜原 弘樹 氏にご講演いただきます(写真2).地球から3億kmも離れた場所で動作させるソフトウェアについて,どのような開発プロセスで作られたのか,航空宇宙エレクトロニクスの世界ではいかにして高品質・高信頼性を確保するのか,について紹介していただきます.


写真2 NEC東芝スペースシステムの檜原 弘樹 氏

 

●「探索的テスト」と「ソフトウェア品質会計」の基礎を解説

 本シンポジウムでは,チュートリアルとして二つのセッションを用意しています.

 一つ目のセッションでは,Lee Copeland 氏が「探索的テスト(Exploratory Testing)」を中心に講演します.探索的テストは,テストという仕事の価値を最適化し続けるため,テスト担当者の責務と独立性を重要視したテスト技法です.「テスト対象の学習」,「テスト設計」,そして「テスト実行」といった三つの要素を同時並行的に実行します.

 探索的テストは,テスト・プロセス全体の効率化を考えている開発企業にとっては魅力的です.しかし,導入に際して,テスト方法やテスト担当者のスキルに不安があるという方もいることでしょう.本チュートリアルは,このような不安を払拭するために役立ちます.

 二つ目のセッションでは,ソフトウェア品質のプロフェッショナルであるNECの誉田 直美 氏が,「テストエンジニアのためのソフトウェア品質会計」というタイトルで講演します(写真3).同氏は,昨年の招待講演において「品質という王道を行こう」とテーマで講演し,好評を博しました.


写真3 NECの誉田 直美 氏

 

 今回は,主にテスト・エンジニアを対象として,テスト工程における「ソフトウェア品質会計」の適用方法,および出荷に向けて残存する品質問題をいかに分析し,つぶしていくかについて,ケース・スタディを交えながら解説します.品質向上に大きく貢献するソフトウェア品質会計について,誉田 氏の実践的な話を聞ける貴重な機会です.

●会場参加型のパネル・ディスカッションを開催

 パネル・セッションでは,「これからテストの話をしよう」をコンセプトに,従来のパネル・セッションの形にとらわれない,会場参加型のソフトウェア・テストに関するディスカッションを行います.パネリストとして,Lee Copeland 氏,細谷 泰夫 氏(三菱電機),湯本 剛 氏(日本ヒューレット・パッカード)をお迎えし,西 康晴 氏(電気通信大学)が司会進行を担当します.

 ぜひ,皆さんにもご出席いただき,これからのソフトウェア・テストの世界をいっしょに熱く語りましょう.

●テスト駆動開発をライブ形式で紹介

 注目の企画は,TDD(テスト駆動開発)研究会による「TDDライブ」です.TDDは,アジャイル開発手法であるXP(Extreme Programming)のプラクティスとして紹介されて以来,アジャイル開発に限らず多くのソフトウェア開発の現場で用いられるようになってきました.一方,TDDが多くの現場で用いられるようになるにつれて,成果物の一つであるテスト・ケースと従来のテスト工程で作られてきたテスト・ケースの間に溝があることが指摘されています.

 「TDDライブ」では,その二つのテスト・ケース間の溝がどのようなものかを明確にしたうえで,その溝を埋めるだけにとどまらず,両者を超える効果が得られるような新しいTDDの考え方,およびTDDを活用したアプローチについて,ライブ形式で紹介していきます.

●分野別に12本の論文・事例を発表

 これらの講演や企画のほか,テスト設計技法やテスト・プロセス,テスト自動化,レビュー技法などの分野で12本の発表が行われます.テーマごとに現場で役立つ新しい知見に立った発表が期待されます.また,ワークショップやミニ・パネル・セッション,初心者向けのミニ・チュートリアルなどの企画,および最新ツール/サービスの展示ブースなども用意されています.さらに本シンポジウムでは,1方向の情報発信ではなく,参加者同士が広く交流できるように,1日目のセッションの終了後に情報交換会(要申し込み)を開催します.

 見どころいっぱいの「JaSST'11 Tokyo」に,皆さんのご来場を心よりお待ちしています.

 プログラムの内容詳細,お申込み方法については,JaSST'11 TokyoのWebページを参照してください.


こにし・ようへい
JaSST '11 Tokyo 実行委員
http://jasst.jp/


◆筆者プロフィール◆
小西 洋平.北都システム チーフエンジニア.1998年より同社にて移動体通信関連のソフトウェア開発・テスト作業に従事.現在は通信端末の相互運用試験の分野で,国内,海外にて活動中.JaSST'11 Tokyo 実行委員.

 

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