インテグリティな技術コラム(7) ―― スタブの反射はSSTLで回避
●スタブ抵抗の有無で波形が変わる
図5に,スタブが4個で,スタブ抵抗がない場合のメモリ入力の波形を示します.データ周期で反射波が収束してないため,データ幅が異なると反射波形もさらに変化します.異なるデータ幅を考慮すると,アイ・パターンによる評価が必要となりますが,これについてはまた別の機会に触れます.
図5 スタブ抵抗なし
図6に,信号の立ち上がり時間trを,スタブ長の遅延時間τに対して変化させたときのメモリ入力波形を示します.遅い立ち上がりに対しては,スタブの影響がそれほど現れていないことが分かります.昔の遅いシステムはこのような状態で,スタブに対する対策はそれほど考えられていませんでした.
図6 立ち上がり時間とスタブ長の関係
図7に,スタブ抵抗を入れたときの波形を示します.スタブによる多重反射が軽減されて,きれいな波形になっていることが分かります.
図7 スタブ抵抗あり
ここでは,コントローラからメモリへの信号,すなわちWrite時の波形を示しました.メモリからコントローラ,すなわちRead時についても,ほぼ同じような傾向を示します.
●メモリ増設の利便性とスタブ問題にはトレードオフがある
スタブのほとんど存在しないメモリ・バスはあるのでしょうか.それは,メモリ素子をメイン・ボードに直付けすれば実現できます.ただし,メモリの増設が難しいので,汎用性が求められるパソコンには不向きです.一部分をメイン・ボードに直付けして,増設分だけをDIMMにしている例はありますが,相性問題(本コラムの第6回を参照)がよく発生するようです.配線がより複雑になるからでしょう.
そのほかの解として,Direct Rambusがあります.Direct Rambusではメモリ・バスがモジュール上を通るので,スタブはほとんど存在しません.そのため,波形乱れは少なく,伝送路としてみれば理想的なバスを形成します.ただし,バスを利用する際のもう一つの利点である,モジュールの増設は基本的には不可能なので,パソコンへの適用は限られたものに終わりました.増設が不要のゲーム機ではよく用いられています.
うすい・ゆうぞう
シグナル インテグリティ コンサルタント
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