「納期に間に合わない」という焦りで失敗しないためには? ―― 第12回 組込みシステム技術に関するサマーワークショップ(SWEST12)

山本 雅基

tag: 組み込み Interface

レポート 2010年9月 6日

●多様な話題で盛り上がるのがSWESTの醍醐味

 筆者は,清水さんとの会話の中で,陽明学(編注:儒教の学説の一つ)という言葉が出てきたことに驚き,かつ,楽しく思った.筆者は,最近,三島 由紀夫の著作を読み返しているのだが,彼を通じて,陽明学や「葉隠(はがくれ)」に関心を持っていた.筆者は,力強くソフトウェア開発を行うためには,先人たちの思想を学ぶ価値があると考えている.しかしこの業界では,そういう話をする機会は全くないと思っていたところ,清水さんが陽明学者の安岡 正篤の名前を出されたので,筆者は驚いたのである.清水さんは,陽明学や論語をはじめとする多くの教養に支えられて,筋の通ったしごとをするようになり,XDDPを提唱するに至ったのではないだろうか.

 筆者は,懇親会のときにハイボールを飲み(3杯目までは覚えている),気持ちよく酔っ払っていたが,さまざまなバックグラウンドを持つ皆さんと楽しく話すことができた(写真3).幅広い話ができることが,筆者にとってのSWESTの楽しみである.SWESTには,産学双方の,さまざまな年代の方が出席されている.しかも,DAシンポジウムとの共催なので,ハードウェアの専門家も参加している.参加者の多様性が,想定を超えた話の広がりをもたらし,知的な関心をかき立ててくれる.

写真3 SWESTとDAシンポジウムの合同懇親会(夕食)

 さて,清水さんとの楽しい話の後に,よせばいいのに,さらに冷酒を飲んで悪酔いした筆者は,夜の分科会が開催されている部屋へ乱入した(写真4).既に分科会は終了していたが,コーディネータの太田 寛氏をつかまえて,「モデル・ベース開発が普及したときに教育者は何を教えればよいのか」という,最近筆者が関心を持つ問いで議論を挑む狼藉を働いてしまった(この酔っ払いにどう対処すればよいのか困惑されている紳士の太田さんの顔が,今でも思い浮かぶ.大変失礼しました).筆者は,過去にも,1度SWESTで酔っ払い,大変な失敗をやらかしている.この場を借りて,来年のSWESTでは,飲まないことを誓わせていただく.

写真4 SWESTのセッション「夜の分科会」
左が「モデル駆動型開発 ~ソフトウェア開発は自動化してしまえ~」,右が「ぐるぐるマインドマップ」の様子である.

 最後に,2日目のDAシンポジウムとSWESTの合同パネルにおける,中島 震氏の「UMLでスケッチを描いたからといって,対象を厳密に理解したとは言えない.モデリングの難しさは,対象の厳密な理解にある」という趣旨の言葉が印象に残ったことを記録しておく(写真5).問題意識を持ってSWESTに参加すると,問題を解くヒントが得られるようだ.

写真5 合同パネル「システム検証の現実と理想と将来」

 こうして,2日間のSWESTは終了した.会場では,閉会あいさつの後に,運営委員のミーティングが行われ,新しく参加される方を拍手で迎えた.その側から,ホテルのスタッフの手でスクリーンが下ろされ,会場の仕切り壁も外され,撤収が始まった.その取り外されつつある壁の隙間から隣の部屋を見ると,純白のテーブル・クロスがかけられた円卓がたくさん並べられ,その上には,きれいに折りたたまれたテーブル・ナプキンが置かれていた.どうやら,結婚披露宴の準備が始まったようである.明日,ここから,幸せな二人が旅立つ.

 SWESTは,幸せな明日を切り開く.皆様の来年のSWESTへのご参加を,今から,お待ち申し上げている.

やまもと・まさき
名古屋大学 NCES

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