印刷会社,端末メーカからグーグルまで,電子書籍の普及を見据えて各社が新製品を猛烈アピール ―― 第14回 デジタル パブリッシング フェア
●米国で今夏本格始動するGoogle Edition
グーグルは,2010年7月8日に発表した電子書籍サービス「Google Edition」についての説明に合わせて,「Google Books」のデモンストレーションを行った.Google Editionは米国では今夏に,日本でも早ければ2010年内に提供を開始するという.現在提供中のGoogle Booksは,登録パートナ企業が約3万社,タイトル数が200万以上となっており,ユーザは無料でこれらのタイトルの一部(全体の20%)を閲覧できる.Google Editionはこのサービスの延長線上にあり,有料でこれらのタイトルのすべてのページを閲覧できるようにするというものである.Google Booksは,書籍の全ページをスキャンしてディジタル画像として取り込み,OCRによって書かれている文字を認識することで検索などを可能としている(写真6).
書籍の掲載手続きには,出版社の許諾を得て出版物をディジタル化する「パートナー・プログラム」と,図書館の蔵書をディジタル化する「ライブラリ・プロジェクト」の2種類がある.今回提供を予定している「Google Edition」は,「パートナー・プログラム」が対象となる.
インターネットに接続していない状態でも閲覧できるように,HTML 5対応Webブラウザのオフライン機能をできるだけ利用して実現する方向で開発を進めている.これは,端末に依存しない閲覧環境をユーザに提供するためでもあるという.電子書籍の標準フォーマットであるePubについても公式に対応することもアピールした.例えば出版社がePubフォーマットで書籍データを用意することも可能.また,DRM(Digital Rights Management)については,Adobeの「ACS4(Adobe Content Server 4)」を採用することを明らかにした.電子書籍の売り上げの配分については,少なくとも希望小売価格の50%以上が出版社の取り分になるという.
写真6 グーグルの「Google Books」の画面
●富士通とNECが電子書籍対応の携帯端末を展示
富士通は,カラー電子ペーパを採用した携帯端末「FLEPia」のデモンストレーションを行った(写真7).外光を反射させて文字や画像をカラー表示しており,電力を必要とするのは画面の切り替え時のみ(画面保持に電力は不要).1回の充電で最大40時間の連続表示を実現している.
本端末の厚みは12.5mm,重量は約360g.表示画面サイズは8インチ型で,カラー電子ペーパの解像度は768ドット×1024ドット(XGA).各種ドキュメントを64色,4096色,26万色の色数で表示できる.電子書籍ビューアを搭載しており,対応するファイル形式は.book,XMDF,KeyringPDFの各形式.PDFビューアにはAdobe Reader LEを採用した.
写真7 富士通の「FLEPia」
NECは,Android 2.1を搭載した携帯端末「LifeTouch」を参考展示した(写真8).本端末は7インチ画面を搭載し,重さは約400gと,本や手帳をモチーフとした薄型のデザインとなっている.無線LANを標準搭載しており,無線LANの初期設定は「らくらく無線スタート」機能により,簡単に行えるという.また,自宅や外出先など,利用する場所ごとに接続設定を切り替えられる「無線通信簡易切替機能」を搭載している.フルサイズのSDカード・スロットを搭載しており,大容量のSDHCカードを使用してデジタル・カメラやパソコンから画像や動画,音声データを取り込むことができる.
写真8 NECの「LifeTouch」
きたむら・としゆき