進化するFPGAとIPを活用し,専用ボードを開発

(株)アバールデータ 営業部GM 仲山典邦

tag: 組み込み

キャッチアップ 2010年4月22日

FPGAの大規模化にともない産業用ボードでも,FPGAを単なるグルー・ロジックの集積ではなく,特定用途向けのLSI機能を実装する動きが出てきています.さらに,IP(知的財産権)コアを利用して,設計効率を上げる試みも出てきました.ここでは,汎用ボードとFPGAの組み合わせで,どのようにして特定用途向けの専用ボードを設計するか紹介します.

 組み込み機器に利用される,特定用途向けのハードウェア機能は,今まで主に専用LSIで実現されてきました.しかし,半導体プロセスの微細化に伴うフォト・マスク代の高騰などにより,ASICを開発するケースが少なくなり,近年では,必要な機能をFPGAで実現したいと望む声が多くなっています.これらの要求に応えるため,FPGAは,微細化による大規模化が進み大きく変化しています.その進化は目覚しく,専用LSIを採用しなくとも製品化が実現でき,なおかつ独自性を引き出すことが理論上可能となりました.ただし,いままで,専用LSIを利用していた設計者にとって,FPGA開発の難易度は高くなり,設計工数も肥大化する場合が多くあります.そこで今後,重要になると思われるのが完成度の高いFPGA用途のIP利用です.

FPGAでのIPの必要性


 アバールデータで,FPGAを画像処理に応用した事例として,無欠陥検査用ボードがあります.これは,工業用のラインカメラを用いて液晶用ガラスや工業用テープ・フィルムを検査するものです.FPGAによりリアルタイムでの欠陥候補検出を可能にしています.これを実現する画像処理の手段は,シェーディング補正や2次元フィルタといった画像処理のアゴリズム群です.これらをボード上のFPGAに組み込んで実現しています.しかし,こういった製品を開発する上で,その開発費は開発者にとっては大変悩ましいものとなります.開発をする上で何に時間を費やすかは,製品により異なります.例えば,画像処理を用いた検査システムを構築する場合,「何に対し一番工数をかける必要があるか」といえば,画像処理のアルゴリズムかもしれません.

 図1は,検査システムで画像処理をFPGAとCPUで分割する場合の例です.FPGAでハードウェア処理を行うシステムにおいて必要となる表1の①~⑤などの基本的な機能ブロックを初めから設計するには膨大な工数が必要です.設計プライオリティとして画像処理のアルゴリズムに専念すれば,機能ブロック(PCIExpress,メモリ/DMAコントローラなど)の設計に
集中できず,トータル的なパフォーマンスを見落としたりすることが多々あります.
 
 アバールデータでは,高速性を重視した画像処理ボード,通信ボード,A-Dコンバータ・ボードなどの自社製品と,これらをベースとしたカスタム設計を行っています.しかし,高性能で完成度の高い製品を短期間でリリースするためには,高品質のIPが必要不可欠になっています.当社では標準IP(図1のA)を用意し自社製品や受託開発に活用し,開発効率を上げています.

図1 FPGAとCPUで分割処理する例

表1 FPGAの基本的な機能ブロック

PCIExpressの進化にIPで対応


 PCIExpressは高速データ転送を可能にします.進化する転送レート(表2)をFPGAとIPで実現するためには,DMAコントローラ,メモリのマネージメントおよびFPGAの内部バスが最適化されなければなりません.
 
 アバールデータは,2008年11月に国内初となるPCIExpressブリッジ(製品名:AAE-B04)をまずASICとしてリリースしました.しかし,Gen2,Gen3の対応については,PCIExpressの進化に対応するためFPGAとIPで構築することにしました.また,各FPGAメーカに合った自社IPを用意します.理由としては,FPGAにより機能が異なる場合があるため,各メーカの特長やコストをトータル的に考え選択しなければ,ユーザが満足する製品を提供することができないからです.AAE-B04を設計した設計資産を有効利用することにより,FPGAの進化を待つだけでGen2,Gen3対応もIPとして容易に実現できます.

表2 PCIExpressの転送レート

カスタマイズ可能な組み込み製品


 FPGAの評価ボードは現在多く存在します.しかし,ボードが量産に耐えられる品質・コストではないのが一般的です.今後は,ユーザがFPGA設計するだけで,ボードを製品化できるカスタム可能なボードとその設計環境が必要となるでしょう.たとえば,DSPなどで処理していた演算がFPGAで構築でき,さらに周辺IOなど気にせずに主機能に注力できるようになります.
 
 アバールデータでは,自社製品で鍛えられたFPGA用途のIPと高速伝送路に耐えられる信頼性の高いハードウェアを提供することが組み込みベンダの新しいビジネス・モデルと考えます.現在,画像処理が可能なAPX-3318+PSM-3318(写真1)と高速サンプリングA-Dコンバータ・ボード(写真2)を自社製品として用意し,FPGAのカスタマイズを可能にしています.

 今後も,PCIExpress,DDR/2/3コントローラ,DMAC,クロスポイント内部バス,各種画像処理,各種信号処理など高品質なIP群を進化させ提供して行きます.加えて,PCB
アートワーク設計から生産まで質の高い一貫したサービスの提供も重要になると考えています.

写真1 APX-3318+PSM-3318


写真2 APX-500-414

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