拝啓 半導体エンジニアさま(12) ―― 制約をはずして広がる新境地とエンジニアリングの面白さ

ジョセフ 半月

tag: 半導体 電子回路

コラム 2010年4月26日

 海外製品のティア・ダウン(解体)記事などを読んでいると,こちらの感覚からすると,かなり割り切った設計をしているケースが見受けられます.なかには「トボケた」印象を受ける設計も見受けられるのですが,きちんと動いて製品になっているのですから,こちらの感覚がコンサバティブ(保守的)すぎるのかもしれません.それらの記事に共通するのは,「発想に対する制約のなさ」とでも言うものです.

 振り返って身の回りの設計を見渡してみると,ソフィスティケート(洗練)され,よく細かいところまで気を配って追い込んでいるな,と関心するものが多数です.

 しかし,繊細,微妙な設計であっても,意外性というか割り切り感があるものは,このごろほとんど目にしません.明示されているか暗黙的かは別にして,ある制約条件の範囲の中でいかに良いものを作るかを考えている感じです.それが国民性というものなのでしょうか.自分自身を考えても,変えようとしても変えられないものなのだと思います.では,考え方を大きく変えて割り切ったことができないのかというと,そうでもないようです.

●無理難題に取り組んでいると,従来の制約条件を外せることがある

 個人的には,そういう切り替えが起こる場合は「外圧」がかかわっていることが多いのではないかと考えています.外部の人から無理難題を持ち込まれたとき,その場で断ってしまえばそれきりで済むのですが,「やらねばならない」ということになり,背伸びをして無理難題に取り組まざるをえないこともあります.すると,従来の制約条件などを外さねばどうにもならず,制約を外したところに道を見つけられれば,設計思想を大きく変えることになる,といったシナリオでしょうか. 

 この場合,もともと変えようとひそかに準備していたのでなければ,どうしてもドロ縄的な対応が続くことになります.そのドロ縄をなんとか上手く切り抜けて先に進めればものになり,切り抜けられないと失敗することになります.

 外から持ち込まれた無理難題は確かに良いチャンスではありますが,受け入れる下地がないとダメだし,だいたいいつ飛び込んでくるかを自分ではコントロールできません.

 自分から無理難題を求めて営業をかけるというのは,普通できることではありませんし,技術に新境地を開かせてくれるような良い無理難題というのはそう簡単に見つからないと思います.「利益はみんな俺のもの」的な手前味噌の無理難題は,いくらでも見つけることができますが….

●新しい設計思想でやり直した場合のリスクと新境地

 自分でできることは,制約条件をまず明らかにすることではないかと考えます.制約条件が明示されているときは分かりやすいのですが,制約が暗黙的に課されているときは,得てして自分では気が付かないことがあります.

 制約の中には,自分自身で課しているものもあれば,歴史的,政治的に課されてきて,すでに習慣となっているものもあります.空気のようになっていて,すでに制約を制約とも思わなくなっているものもあるのではないでしょうか.

 それらを明らかにして再検討するためには,まず意識してひそかに書き出してみることです.次に,それぞれ制約が必要になった背景や適用範囲を考えてみます.すると,もはや制約を課す必要のないものや変更を要するものなどが浮かび上がってきます.

 制約を取り外し,新しい設計思想でやり直すというのは,たとえ小さい部分ではあってもリスクがあります.「動いているもの」は触らずそのままにしておくのは,一つの見識だと思います.しかし,触らないことそのものが制約条件になって,ほかのいろいろなものに影響を与え,ひいては全体の進歩を阻害しているのであれば,どこかで制約を外さなければなりません.

 一つ外すと思わぬ道が広がっていて驚くとともに,さらにいろいろ考えるべきこと,変えるべきことが次々と見つかってくるかもしれません.そこに,エンジニアリングの面白さがあるように思います.

ジョセフ・はんげつ

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