組み込みシステムを理解する ―― マイコンとソフトウェアを活用してディジタル機器を設計する理由

山際 伸一

ここでは,「組み込み」と呼ばれている技術の基本について説明します.組み込みという言葉の意味からシステム開発の基本的な知識をまとめます. (編集部)

1.「組み込み」を知る

 複雑な機能を備えた便利な機器が身近に増えてきました.高度な機能を持つ機器が街にあふれ,わたしたちの生活を支えています(写真1).


自動車                                車載機器                                 液晶テレビ

工場や重機の制御                                調理機器                    携帯音楽プレーヤ
写真1 組み込み機器の例
マイクロプロセッサを搭載する機器のうち,パソコンのような汎用システム以外はすべて「組み込みシステム」である.情報機器に限らず,最近の家電製品はほとんどが組み込み機器といえる.また,工場の制御装置のような大型のシステムも含まれる.

 例えば,携帯電話やカー・ナビゲーション・システムのような機器は,最近10年くらいの間に普及した製品です.しかし今では,これらがないと生きていけなくなったといっても過言ではないほどに普及しています.

 また,電子レンジやエアコンのような従来からある製品も高性能化しています.細かな制御を必要とする電子機器は,今ではほとんどがマイクロプロセッサを搭載しています.そして,ネットワークにつながったり,人間の思考をまねた自律的な機能を持つようになりました.

 身近にあふれている機器のほとんどは,特定の用途に向けて設計されています.また,マイクロプロセッサを内蔵し,ソフトウェアを用いて制御されています.このように,あらかじめ決められた機能だけをマイクロプロセッサを用いて実現するシステムを,組み込みシステムと呼びます.

● 汎用以外はみんな組み込み

 マイクロプロセッサを用いた機器として真っ先に思いつくのはパソコンだと思います.パソコンはソフトウェアを入れ替えることで,さまざまな用途で利用できる汎用のシステム(コンピュータ)です.汎用のシステムとしては,パソコンのほかに,基幹業務や科学技術計算で使われる大型のコンピュータもあります.

 組み込みシステムは,特定の用途に向けて設計されたものです.つまり,汎用のシステム以外のマイクロプロセッサ搭載機器は,すべて組み込みシステムといえます(図1).



図1 汎用システム以外はすべて組み込みシステム
ソフトウェアを入れ替えることで,さまざまな用途で利用できるような汎用のシステム(コンピュータ)以外のマイクロプロセッサ搭載機器は,すべて組み込みシステムといえる.

● 組み込み技術者が求められている

 組み込みシステムは,大型の装置から小型の機器までさまざまです.高い需要があるため,組み込みシステムの開発費や開発技術者の数は増え続けています(図2).

 



図2 組み込みシステムの開発費と開発技術者の数(1)
経済産業省が2009年7月に発表したもの.組み込みソフトウェアの開発費は,組み込みシステムの開発費の約半分を占めている.組み込みソフトウェア技術者の不足は深刻な問題である.

 組み込みソフトウェアの開発費は,組み込みシステムの開発費の約半分を占めています.組み込みシステムは,マイクロプロセッサを使用しているので,ソフトウェアがなければ動作しません.ソフトウェアの開発が,ハードウェアの開発と同様に重要であることが分かります.

 開発技術者の不足は深刻な問題になっています.2009年の経済産業省の発表(1)では,組み込みソフトウェア技術者は6.9万人が不足しており,不足率は26.9%にもなっています.すなわち,組み込みシステムの世界は,これからの若い技術者が活躍するチャンスの多い業界であるともいえます.

組み込みキャッチアップ

お知らせ 一覧を見る

電子書籍の最新刊! FPGAマガジン No.12『ARMコアFPGA×Linux初体験』好評発売中

FPGAマガジン No.11『性能UP! アルゴリズム×手仕上げHDL』好評発売中! PDF版もあります

PICK UP用語

EV(電気自動車)

関連記事

EnOcean

関連記事

Android

関連記事

ニュース 一覧を見る
Tech Villageブログ

渡辺のぼるのロボコン・プロモータ日記

2年ぶりのブログ更新w

2016年10月 9日

Hamana Project

Hamana-8最終打ち上げ報告(その2)

2012年6月26日