組み込みシステムを理解する ―― マイコンとソフトウェアを活用してディジタル機器を設計する理由
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技術解説 2010年1月15日
2. 組み込みシステムの基本的な構成
組み込みシステムは,ハードウェアとソフトウェアを含むシステムです.システムの設計では,図3に示すような三つの構成をとるのが一般的です.
図3 組み込みシステムの基本的な構成
量産品は専用のハードウェアが使われる.少量多品種では市販のボードを活用する場合も多い.パソコンとソフトウェアだけで実現する特殊な例もある.
● 量産品は専用のハードウェアが使われる
組み込みシステムの多くでは,専用のハードウェアが用いられています.特に,大量生産される組み込みシステムでは,ほぼすべての場合で専用のハードウェアが使われています.
組み込みシステムは,特定の目的で用いられる専用システムです.従って,目的以外の機能を排除し,最適化した方が,回路規模やコストを抑えられると考えられます.例えば,携帯型の音楽プレーヤをノート・パソコンと同等の構成で実現しようとしたら,大きさもコストも見合わないことは,容易に想像できると思います.
大きさやコストを変えずに,より多くの機能を搭載することが求められる場合もあります.例えば,最近のカー・ナビゲーション・システムは,高性能化が進んでいます.基本機能であるナビゲーションに加えて,後進時に障害物を検出するバック・ソナー・システムや,周囲の様子を表示するカメラ・システムなどを持つようになりました.しかし,どんなに機能が増えても,カー・ナビゲーション・システムは決められたスペースに搭載できなければなりません.より多くの機能を一定の大きさで実現するためには,専用のハードウェアが必要になります.
専用のハードウェアとしては,汎用のマイコンを使って構成するほかに,ASICやFPGAといった専用の部品を用いる場合があります.独自の回路構成を採るハードウェアになるため,ソフトウェアでは,その回路構成に合わせて制御する必要があります.このため,過去の設計資産や市販のソフトウェア・ライブラリがあっても,そのまま再利用することはできません.ハードウェアの検証のみならず,ソフトウェアの検証にも多くの工数を要することになります.
ハードウェアの検証のために用いるソフトウェアは,ハードウェア技術者が記述しなければならない場合があります.ハードウェア技術者であっても,組み込みソフトウェアの設計技術が求められるといえます.
● 少量多品種では市販のボードを活用する
組み込みシステムの開発では,標準化された技術に沿って設計された市販のハードウェアを用いることもあります.特に少量多品種のシステムでは,開発コストを抑えるために有効な方法です.
パソコン用のメイン・ボードと同等の仕様のものや,特定の用途向けにあらかじめ周辺回路を搭載したマイコン・ボード,最低限の機能のみを搭載した小型のマイコン・ボードなどが市販されています(写真2).また,PCIインターフェースのEthernetアダプタやUSBインターフェースのカメラなどを組み合わせてシステムを構成することもあります.
![]() ![]() (a) 携帯情報機器向けにあらかじめ周辺回路を搭載したマイコン・ボード |
(b) 最低限の機器のみ搭載した小型のマイコン・ボード
写真2 市販されているマイコン・ボードの例
パソコン用のメイン・ボードと同等の仕様のものや,特定の用途向けにあらかじめ周辺回路を搭載したマイコン・ボード,最低限の機能のみを搭載した小型のマイコン・ボードなどが,組み込みシステム向けに市販されている.
市販のハードウェアを活用する場合,専用のハードウェアを設計する場合と比べて,ソフトウェアの開発効率を上げられる可能性があります.ハードウェアに合わせたソフトウェア・ライブラリが提供されている場合があるからです.あるいは過去に同じハードウェアを使ったことがあれば,その設計資産を活用できます.
高い機能が求められる組み込み機器では,OSを搭載することもあります.Windowsを搭載する組み込み機器も少なくありません.このようなとき,パソコンのメイン・ボードのような業界標準のハードウェアを使用していれば,OSの実装は比較的容易になります.
● パソコンとソフトだけの特殊なシステムもある
組み込みシステムとしては特殊な構成として,汎用のシステムと専用のソフトウェアを組み合わせて実現した機器があります.部材としては汎用のシステムを用いているものの,機能に注目すれば組み込みシステムに分類できる機器です.
目的の機能をソフトウェアだけで実現できるシステムとしては,例えば公共施設の案内掲示板があげられます.ハードウェアとしてはパソコンをそのまま使うことができます.画面表示にもパソコン用の液晶ディスプレイを使用します.ただし,案内掲示板向けのソフトウェアしか使えないようにします.専用のきょう筐体に収めることで,パソコンに見せないようにしている場合もあります.