「ものづくり」製造現場の品質管理を支える外観検査/計測の要素技術が一堂に ―― '09国際画像機器展レポート

北村 俊之

tag: 組み込み 電子回路

レポート 2009年12月 4日

 2009年12月2日~4日の3日間,パシフィコ横浜にて「'09国際画像機器展」が開催された.画像処理技術は,製造ラインの外観検査などに利用されている.こうした現場では,検査対象物そのものの品質向上や微小化への対応,製造工程の効率化やコスト削減など,「ものづくり」産業を支える技術として導入されてきた.また,セキュリティやITS(Intelligent Transport Systems),医療,ロボットなど,製造現場以外への応用も広がっている.本展示会は今年で31回目を迎える.主催は日本画像・計測機器協議会.

 本展示会と共に,「New Media Technology 立体Expo'09」,「先端光テクノロジー展2009」,「ViEW2009 ビジョン技術の実利用ワークショップ」,「2009国際画像セミナー」なども開催された.
 


写真1 会場受付の様子

 

●最大10万コマ/sの高速度カメラを展示

 ディテクトは,画素数が1,696ピクセル×1,710ピクセルの高解像度センサを使用して,最大10万コマ/sの速度で撮影できる高速度カメラ「HAS-D3」を展示した(写真2).例えばQVGA(320ピクセル×240ピクセル)画像は1万コマ/sで,SVGA(800ピクセル×600ピクセル)画像は2,000コマ/sで撮影できる.同社の従来機種と比較すると3倍の高感度を実現した.被写体に照明を当てることができない場合でも,高速に撮影できるという.

 同カメラには,キャプチャ・ボードと制御ソフトウェアが附属する.キャプチャ・ボードは,インターフェースにPCI Expressを採用し,さらにミニ・カメラ・リンク・コネクタを搭載する.同期マスタまたは同期スレーブとして動作し,カメラ・リンク・ケーブル経由でカメラに同期信号を送ることができる.


写真2 ディテクトの「HAS-D3」


●USB 2.0ビデオ・クラスに対応したカメラ・コントロールLSIを開発

 リコーは,USBビデオ・クラス(USB 2.0規格の拡張版)に準拠したカメラ・コントロール用LSI「R5U877」を展示した(写真3).本LSIとCMOSセンサを搭載したカメラ・モジュールを接続することにより,小型のUSBカメラ・モジュールを実現できる.主にカメラを搭載するノート・パソコンなどに利用される.

 CMOSセンサのインターフェースとして,SMIA(Standard Mobile Imaging Architecture)仕様のシリアル・インターフェースとパラレル・インターフェースに対応する.画像データの入力フォーマットは8ビットのRAWフォーマット(Bayer)と8ビットのYUV(YUV4:2:2)に,出力フォーマットはJPEGフォーマットに対応している.JPEGエンコーダを内蔵しており,QXGAの画像サイズを15フレーム/sで,UXGA(1,600ピクセル×1,200ピクセル)の画像サイズを30フレーム/sで転送可能.

 展示ブースでは,本LSIを搭載したカメラ付きボードとOSにμITRON搭載した携帯機器をUSBで接続し,動画を配信するデモンストレーションを行っていた.


写真3 リコーの「R5U877」を搭載したボードを使ったデモンストレーション


●画像処理で光学レンズの欠陥を自動検出

 アークライト・ソフトは,プラスチック製の透明な曲面体(光学レンズ)の表面,裏面の欠陥を検出する光学レンズ自動検査装置「PLA Detector-I」を展示した(写真4).本検査装置では,傷や膜抜け,異物など,表面,裏面,および内部の欠陥を1度の撮像で検査できるという.同社独自のソフトウェアで画像処理を行っている.解析結果をリアルタイムに画面に表示し,欠陥のあるレンズを拡大して表示できる.また,検査データをデータベース化し,集計・分析を行える.

 レンズを載せたトレイがXY軸に沿って自動で移動し,1枚ずつレンズを検査する.検査の際には,LED照明の輝度の低下や劣化を防止するため,1トレーの検査開始時に自動で点灯し,検査終了時に自動で消灯する.検査対象となるレンズは,ディジタル・カメラ用レンズや携帯カメラ用レンズ,コンタクト・レンズなど.眼鏡レンズやプロジェクタ用レンズ,複写機用レンズ,ピックアップ・レンズなどの検査へも転用可能.


写真4 アークライト・ソフトの「PLA Detector-Ⅰ」


●動画を撮影して熱分布画像と重ね合わせる

 アイ・アール・システムは,タッチ・パネルを搭載した携帯型サーモグラフィ「MobIR M8」を展示した(写真5).動画像を撮影して熱分布画像と重ね合わせたり,パソコンやリモコンを使って遠隔操作を行える.

 本サーモグラフィは,多様な熱を計測できる赤外線カメラである.測定温度範囲は-20℃~+250℃(オプションで350℃まで対応可能).動画撮影については,Mini SDカードに30分まで録画が可能で,温度の経時変化測定などに利用できる.一つの画面の中の必要な個所だけに熱分布を表示することも可能.これにより,例えば温度によって部位を特定することが容易になる.

 付属の解析ソフトウェアを使用すると,静止画,および動画の解析やレポート出力が行える.工場や発電所などの設備点検や金型の温度測定,基板の設計・開発,点検,人体の温度測定(パンデミック対策)など,幅広い用途に採用されている.


写真5 アイ・アール・システムの「MobIR M8」

 


●画像入力ボードが次世代カメラ規格CoaXPressに対応

 アバールデータは,CoaXPress対応の画像入力ボード「APX-3662」を展示した(写真6).本ボードを使うと,カメラから取り込んだ画像を1本の同軸ケーブルを使って,6.25Gビット/sの速度で伝送できる.ケーブルの長さは最大40m.マルチタップ出力カメラに対応した画像の並び替え機能を備えている.

 画像バッファとして512MバイトのDDR3メモリを搭載する.エンコーダ信号入力(RS-422)による画像入力制御が可能で,画像入力制御またはエンコーダ開始の外部トリガ(TTLまたはオープン・コレクタ)を入力できる.また,外部機器とのインターフェース用に汎用入力ピン(TTL入力)と汎用出力ピン(オープン・コレクタ出力)を装備する.

 オプションで,本ボードに対応したソフトウェア開発キット「ACAPLIB2 AZP-ACAP-02」を用意する.OSはWindows XP/Vistaをサポートする.


写真6 アバールデータの「APX-3662」


●赤外線TOF方式の3次元距離測定カメラ

 日本クラビスは,赤外線TOF(Time of Flight)方式の3次元距離測定カメラ「スイスレンジャー SR4000」(スイスMESA社製)を展示した(写真7).赤外線TOF(Time of Flight)方式では,前面のLEDより強度変調して出力された赤外線が,対象物体で反射して戻ってくるまでの時間を計測して,物体までの距離を測定する.特殊な1チップCMOS/CCDイメージ・センサ上に並ぶ約25,000個の画素の一つ一つが独立に,赤外線が戻ってくるまでの時間を計測する.

 最大50フレーム/sの速度で距離を測定し,反射強度情報(グレースケール)とともにディジタル出力する.本測定カメラは,絶対距離の誤差を補正するリアルタイム・セルフ・キャリブレーション機能,外部機器との同期が取るためのトリガ端子,各画素のデータの信頼性を示す信頼性マップ出力機能などを備える.

 外部インターフェースはUSBまたはEthernet.対応距離が5m(30MHz変調)と10m(15MHz変調)の2機種を用意する.産業用ロボットや監視ロボットの目,暗闇での室内外の異常物体監視,生体計測,前方・後方・側方障害物認識,ゲームなどの分野で関心を集めているという.


写真7 日本クラビスの「スイスレンジャー SR4000」

 

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