ET2009プレビュー企画
tag:
キャッチアップ 2009年10月23日
Android を新しい組み込みプラットフォームとして活用する団体
OESFの活動紹介
Google が提供する携帯電話用プラットフォームAndroid を,携帯電話以外の組込み機器プラットフォームとして共同開発・普及促進を行うため,2009 年にOpen Embedded Software Foundation(以下OESF)が設立されました.2009 年2 月現在,東アジアに4 つの拠点があり,既に45 会員の企業・学校法人が参画加盟しています.ここでは,OESF の活動概要を紹介します. OESF マーケティング&エデュケーションワーキング・グループ コーディネーター 満岡 秀一氏 | ![]() |
■ Android を組込みプラットフォームとしてどう使うのか~ OESF の考え方~
Google のOpen Handset Alliance が推進する携帯電話向けオープン・ソース・プロジェクトであるAndroid を使用した製品が世界各国で発売され話題になっています.Android 搭載の携帯電話は,iPhone のApp Store 同様,アプリケーションの販売/配布サイト『Android Market』を利用することで,ユーザがアプリケーションを追加することが出来きます.携帯電話の開発において,オープン・ソースを利用した共通プラットフォームを活用するのには,開発費高騰が背景にあります.一方,携帯電話以外の組込み機器でも,要求される機能の多さから,同じく開発コスト・開発期間増加が問題になっています.
そこで,Android を新しい組込みプラットフォームとして活用することを目的として一般社団法人O p e n Embedded Software Foundation が設立されました.OESF は,Android をベースとした組込みシステムの開発,構築等の事業に携わる企業により組織され,会員企業間での技術情報の共有,ベースとなるシステムの共同開発,技術者の育成,組込み市場に対する共同マーケティング等を通じて,市場の発展と,各会員の事業の拡大を目指しています.
■ 会員が具体的にAndroid をどのように使用しようとしているのか,取り組みの実例
OESF 会員は,Android を使用する目的がそれぞれ異なります.その中には,自社製品に競争力を持たせるためAndroid の採用を検討する機器メーカ,Android 製品開発の受託を目的としているS I e r , 自社半導体をAndroid 対応させることにより新たな製品開発の可能性が広がる半導体ベンダ,Android 端末とサーバ連携で新しいアプリケーションサービス提供を目指す業務系企業,トレーニング事業を準備する企業などがあります.
OESF では,Android をキーワードに集まった各企業が情報交換することでコラボレーションが生まれています.特にアプリケーションはJava で書かれているため,今まで組込み事業を行えていなかった企業が,参入するきっかけとして積極的に取り組んでいる例もあります.現在,8 つのワーキング・グループで各会員が成果をコントリビュート(貢献)しています.また,Android に関わる研究,開発等を目的とした教育機関に向けて支援も行っています.Academic Collaboration Program(ACP)は,企業ベースで取り組めない課題に挑戦,最新テクノロジの応用,新たな発想,独創性のあるアイデアを持っている教育機関の活動を支援することで将来のAndroidエンジニアが企業との連携を行う機会を提供しています.
■ Android で乗り越えなければならないこと,ワーキング・グループのテーマ内容
Android は携帯電話向けのため,組込み機器での活用としては不十分な点が多く,対応が必要な部分があります.例えば,有線LAN 対応,モニタ・サイズ変更対応,キーボー・マウス対応など通常の組込み開発を行う上では共通して必要な部分をワーキング・グループとして開発を行い,より使いやすいプラット・フォームに改変していきます.また,今後各企業でAndroid を使用した同じ製品が開発されると,当然API が企業毎に異なることが予想され,その結果,アプリケーションやミドルウェアの互換性が保てなくなり,独自仕様によってAndroid普及を阻害することが考えられます.このような状態を予め回避するために,必要になる部分のAPI 仕様をワーキング・グループで決定し公開していきます.決定した仕様に基づいて開発することで,汎用的に使用できメンテナンスの負担を軽減することを目的としています.
■ OESF が提供するEmbedded Master の概要
各ワーキング・グループの成果物を, O E S F Embedded Master(以下EM)ディストリビューションとして公開していきます(図1).
まず,最初のバージョン(EM1)を2009 年11 月にOESF 会員企業向けにリリースし,一般向けには2010 年2 月に公開する予定です.また,開発したソフトウェアは原則としてApache2.0 のライセンス契約に従い,無償のオープン・ソースとしてインターネット上で入手可能とします.
EM では,様々な機器に利用用途の広がる可能性のある以下の機能を追加します.
- IP Phone Extension(SIP/RTPスタック,NGNスタック)
- Digital TV Extension(デジタル放送・ケーブルテレビの視聴,BML ブラウザによる情報表示,EPG による番組予約)
- Multimedia Extension(ハイビジョン・クラスの静止画・動画コンテンツ再生)
- DLNA Extension(DLNA/UPnP スタック)
- Bluetooth Extension(Bluetooth 対応,HID プロファイル,SPP プロファイル,OBEX 機能)
- Remote Control Extension(赤外線対応のリモコンで操作するためのフレームワーク)
- Pointing Device Extension(マウスやポインタ・カーソル対応フレームワーク)
- Network Manager Extension(有線LAN 対応,ネットワーク設定API)
- User Interface Extension(大画面操作時ランチャー・アプリケーションなどのGUI 作成用API)
- SDK for Embedded Devices(EM を使用してアプリケーション開発を行うSDK)

図1 OESF Embedded Master の構成図
■ OESF が提供するエンジニア育成コース
既にAndroid 製品開発が進んでいる現在も,Android開発スキルを持ったエンジニア不足が言われています.今後は,EM の公開によってAndroid 開発が活発化し,更なるエンジニア不足が予想されます.そこで,エンジニアを育成するためにOESF 公認トレーニングを2 コース開催しております(表1).トレーニング受講者にはOESF 公認終了証書が発行されます.
また,トレーニングパートナーにはトレーニングをフランチャイズ提供することで多くのAndroid エンジニア育成を目指しています.
表1 OESF 公認トレーニング概要
Android プログラミング(※エミュレーターを使用してRSS リーダーアプリケーション作成)
対象 | ●Android アプリケーション開発の基礎を短期間で身 につけたい方 ●アーキテクチャ設計に関わる開発チームのリーダ ー・マネージャ様 |
期間 | 2 日間 |
レベル | 入門編(上級編については別途計画中) |
必要となる知識 | Java 言語経験者 |
Android 開発者のための組込Linux 入門
対象 | ●実機を使用したAndroid を動作させたい方 ●特定のターゲットにAndroid を実装したい方 |
期間 | 1 日間 |
レベル | 初級 |
必要となる知識 | C 言語経験者 |
■ OESF が今後行うこと
OESF は,東京を本部とし,支部を台北,ソウル,上海にそれぞれ設置しています.国際的な視点でAndroidの標準化,普及促進を図っています.EM を使用して開発された製品のために,サーティフィケイション・センタで認証・テストを行うことを予定しています.また,今後は,開発エンジニアを育成するとともにAndroid エンジニア認定制度を設け,Android 開発においてスキル指標として標準化を行うことも検討中です.
■ OESF が目指していること
OESF は,今後もプラットフォームとしてベースとなるシステムの共同開発,技術者の育成,組込み市場に対する共同マーケティング等を通じて,市場の発展と,各会員の事業の拡大を目指していきます.
11 月18 日から20 日にパシフィコ横浜で開催されるET2009 では,ブースの出展と日本Android の会(コミュニティ)とのスペシャル・セッションを予定しています.ご来場の際は,是非OESF ブースにもお立ち寄り下さい. http://www.oesf.jp/