ET2009プレビュー企画

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キャッチアップ 2009年10月23日

今年新しく加わったセミナを中心に,最近の組み込み業界の状況を
ET 実行委員長に聴く

組み込みシステム技術は,この数年間で,民生・産業用を問わずさまざまな製品分野へと拡大してきた.情報家電やカー・エレクトロニクス,制御装置・ロボットなど,あらゆる産業の最先端機器を支えるテクノロジは,応用分野の成長とともに社会の進化を加速するテクノロジへと発展しようとしている.
 

Embedded Technology 実行委員会委員長 山田 敏行氏〈横河ディジタルコンピュータ(株)〉


組み込みシステム技術は,この数年間で,民生・産業用を問わずさまざまな製品分野へと拡大してきた.情報家電やカー・エレクトロニクス,制御装置・ロボットなど,あらゆる産業の最先端機器を支えるテクノロジは,応用分野の成長とともに社会の進化を加速するテクノロジへと発展しようとしている.
Embedded Technology 実行委員会委員長 山田敏行〈横河ディジタルコンピュータ(株)〉


―― 今年から新たに実行委員長に就任され意気込みを聞かせて下さい.
山田氏: ET の主催者である(社)組込みシステム技術協会(JASA)が,このイベントへの支援体制をさらに強化するため,組織体制や担当役員などの見直しを行いました.これまで外部の有識者にお願いしていた実行委員長も会員企業の中から選出することになりました.その結果,このイベントに長年関わってきた当社[横河ディジタルコンピュータ(株)]を代表して私が実行委員長に就任しました.新たに企画するET にご期待下さい.

―― それでは,今年,新しく加わった技術テーマやトラックがあれば,紹介してください.
山田氏:カンファレンスでは,設計・検証ツール・トラックがあります.またスペシャル・セッションとしてAndroid 特別セミナーなどがあります.

 



昨年のET2008 におけるカンファレンスの様子

―― そのテーマを選んだ背景を説明していただけますか.
山田氏:背景にあるキーワードとしては,Android,機能安全,低消費電力とマルチコアなどがあります.組み込み業界では,複雑化,短納期化,低価格化そして大規模化という四つの傾向があります.さらにこの不況下では, 今までの半分のコストで商品にしなさいとか,エンジニアは知恵を絞らなくてはいけない.少ないコスト,少ない人材で物を作らなくてはいけなくなってきていました.そうなると 開発現場で何が変化してくるかというと,プラット・フォームのあり方が変化せざるをえなくなります.今まで一番大事だったのは,プラット・フォームをどうやって自社で作っていくかというのが,キーワードだったのですが,プラット・フォームはもうよそから買って持ってこようということに変わってきています.
 この顕著な変化が,Linux の導入だったり,Androidの導入だったりというところにきています.Android のように無料で使えるようなものが出てくると,大手企業はAndroid を調べればいいのですが,なかなか中小企業はAndroid でものを作れません.そこで,Android というのはどういうものなのかを,集中的にセミナーでやります. Android のOS がどうなっているのか,モノ作りはどうなっているのか,というようなところですね.

―― プラット・フォームは,作り上げる時代ではなく,他社製品を組み合わせて使う.つまりデザインからインテグレーションに変化しているということですね.
山田氏:そうです.今後のプラット・フォーム展開を考えると,すべてを自分で作らなくなると思います.いろんなものを組み合わせるようになるわけです.つまり,自分で作っていないものばかりが組み合わさっています.それでは,その品質保証はどうするのか,ということが非常に大きな問題になります.たまたま動かなくなると何を調べていいのか分からないとか.
 プラット・フォームではブラック・ボックス部分が増えてくるので,それをどう検証していけばいいのか.そのため,設計・検証ツール・トラックを新設しました.Android と設計・検証はストーリーとしてつながっています.また,不景気で開発費と人が削減され,プラット・フォームの導入が展開される.するとブラック・ボックスが増加,品質保証が難しくなるということです.
 あと,もうひとつ新しいテーマとしては,機能安全という言葉が最近は非常に叫ばれています.組み込み技術は,情報家電や携帯電話などの規模の小さいものだけでなく,自動車,電車,飛行機の走行やエンジン制御,電力制御,飛行機,電車,プラント・システムなどの制御などにも使われてきています.つまりシステムが融合したり,インテリジェント・システムにどんどん変わってきています.そういったプログラムが,人の命にかかわることになります.機能安全ですと,コーディングから,たとえばUML でモデル設計を作るとか,いろんな考え方ができます.

―― 技術セミナーでは,形式手法や,モデルベースなどのセミナーにも,非常に力を入れてきていますね.
山田氏:はい.ここで一つ最近の変化で重要なポイントがあります.それは組み込みのスペシャリストがだんだん減ってきているということです.なぜ減るか.プラット・フォームを導入すると,作るのはアプリケーション・レイヤになってしまう.組み込みの重要なところが分からない.そういったエンジニアがどんどん増えているのに,スペシャリストが使うツールばかりを用意しても意味がありません.
 プラット・フォームの内部の動きが見えるようになるかが,重要点です.ブラック・ボックスを可視化する検証ツールが求められています.そこが開発ツール・メーカの大きな変化にもなっています.理想としてはモデリングとかいろんなものがありますが,現場では,目の前にある問題を片付けないことには,仕事は進みません.動的解析という形を今までは,ICE,JTAG でやってきましたが,大規模アプリケーション,主にブラック・ボックスのところを,いかに動的解析できるか,見える状態にできるかが求められています.

―― もう一つのテーマである,低消費電力とマルチコアはどのように関連しているのでしょうか.
山田氏:低消費電力,グリーンIT は非常に重要ですね.バッテリ系以外のAC 電源で動く機器も,低消費電力を実現しなくてはいけない時代になっています.ハードウェアからみると低消費電力は,実はマルチコアだったり,マルチコアを採用する理由は,すべて低消費につながっているところがあります.
 マルチコアというと,パソコンを想像し,高速処理をイメージしがちです.しかし,簡単に言いますと,複数のマイコンを載せることによって,1 個のマイコンの働く量を減す事です.複数で役割分担するわけです.そうすると,1 個のマイコンが必要とする消費電力が減り,フルパワーで動かす必要がなくなります.その結果,フルパワーで動かさないマイコンを並べた方が,トータルで見た消費電力は少なくなるということです.
 今回のパネルセッションでも,「組み込みマルチコアの技術着地点は見えたか? パート2」があるのですが,組み込みのマルチコア技術はちょうど過渡期にあります.マルチコアは,今までは役割分担していました.携帯電話だったら,Web はこのマイコン,通信はこのマイコン,電話はこのマイコンというように役割分担していました.
 しかし現在は,ひとつの役割を複数のマイコンにやらせる時代に変わってきています.

―― 技術セミナーの内容以外で,何か努力されて点はありますか.
山田氏: ET では一部のセミナーを除いてほとんどの技術セミナーを無料でご提供しています.(10 月1 日現在のセミナー数は,無料64 セッション,有料9 セッション)展示会というのは,単にブースを見学して終わりということではありません.エンジニアが何かひとつでも学び取れる場を提供しなくてはいけないと思っています.

―― 最後に,本誌の読者である組み込みエンジニアにひと言メッセージをお願いします.
山田氏:今,モノ作りの現場は,大きな変化を迎えています.この大きな変化の中で,組み込みエンジニアも当然変わらなくてはいけない.そうした変化を体感できる場です.読者の皆さまのご来場をお待ちしております.

カンファレンスへのお申し込みは下記へ
https://www.entryweb.jp/et2009/

 

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