組み込み機器への導入が進むKDDIの通信モジュール ―― 自動車のテレマティクス・サービスや産業装置,電子看板,NC工作機械まで

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インタビュー 2009年8月25日

 次々とソリューションやビジネスが生まれている無線通信モジュールの組み込みは,厳しいビジネス環境において,新たな可能性が期待できると,各分野で導入が加速しています.いすゞ自動車株式会社が提供する運行管理サービス「みまもりくんオンラインサービス」にもKDDI通信モジュール「KCMV-200」が採用されています.本サービスでは3万台を超えるKDDI の通信モジュールが稼働しているとのことです.ここではKDDI の通信モジュールの概要について,同社ソリューション事業本部の増田正彦氏と同社ソリューション推進本部の中嶋浩氏にお話しをうかがいました.(CQ 出版クロスメディア部企画室)


  
KDDI 株式会社
ソリューション事業本部
ソリューション第1 営業本部
モジュール営業開発部長
増田正彦氏
KDDI 株式会社
ソリューション推進本部
モバイルブロードバンドソリューション部
モジュール2 グループリーダー課長
中嶋浩氏


 ――携帯電話をベースとする無線通信モジュールの導入には,どのような利点がありますか?

増田氏まず一つ目は,機器の設置環境を選ばないということです.通信モジュールは回線工事が不要なので,機器の移動が頻繁な環境や,機器の納入先(客先)で回線工事が難しいケースでも容易に設置が可能です.au のエリア内であれば,どこでもご利用いただけます.また,通信モジュール内蔵のアダプタを利用すれば,機器への取り付けも容易なので,設置と撤去が多く,恒久的仕組みの設置が難しい環境でもスムーズに導入が可能です.今まで,回線の敷設ができないなどの理由でリモート化をあきらめていた環境でも,柔軟な通信環境の構築が可能となり,新たなソリューションの可能性が拡大します.

 ニつ目は,無線通信モジュールならではの多彩な機能を活用し機器の付加価値を高めることができます.例えばgpsOne™ 機能は,GPS 衛星とau 基地局の位置情報を併用するため,au のエリア内であれば,衛星電波の届かない屋内や地下のような場所でもおおよその位置測位ができます.この機能を使って,通信モジュールを組み込んだ機器の,概略から高精度な位置を特定することが可能となり,運行管理や盗難対策などで活用されています.KDDI の通信モジュールはgpsOne™ 機能が搭載されているため,別付けのGPS ユニットを追加することなくGPS 測位が実現できます.

 OTA(Over The Air)機能は,通信モジュールを組み込んだ機器を製造したあと,製品を流通させる過程で通信機能をアクティベート(活性化)します.例えば自動車に組み込む場合は,製造時や輸送時に通信機能が働く必要はありません.顧客に納車するときに回線が開通すればよいわけです.緊急地震速報機能を利用すると,例えば地震が発生したときに工場のラインを止めたり,電力や燃料の供給を停止し被害を軽減することができます.また,地震の揺れがおさまった後も,遠隔地から機器の稼働状況を確認することができるため,被害状況を即座に確認できます.

中嶋氏:開発者から見たときの利点は,キャリア(通信事業者)が提供しているということです.通信モジュールと共にセキュアなネットワークも提供していますので,お客様が設置したサーバとお客様装置間でトータルのセキュリティが確保できます.また,gpsOne™機能やOTA 機能などキャリアが提供するサービスは通信モジュールを組み込むことにより,複雑な設計や設定などは必要なく,そのままご利用いただけます.

 その他にも,KDDI の通信モジュールには,プロトコル変換機能も搭載されており,機器側でTCP/IP,PPP プロトコル・スタックを持つ必要がなく,安価なワンチップCPU でも制御可能なため開発コストや機器コストも抑えられます.また,日時情報取得機能により,NTP サーバにアクセスすることなく,正確な時刻を無料で取得することができます.

――貴社製品はどのような用途で利用されていますか?

増田氏:例えば,いすゞ自動車が提供する運行管理サービス「みまもりくんオンラインサービス」です.このサービスを利用すると,車両の位置や運行状況,ドライバごとの操作情報,移動経路をリアルタイムで把握し,運行記録や燃料消費情報までを収集することができるため,急発進や急加速などを行うドライバに管理者側から必要に応じて注意を促すこともできます.本サービスは,経済産業省の平成20 年度省エネ大賞で「経済産業大臣賞」を受賞しました.

 最近,需要が伸びているのはディジタル・サイネージ(電子看板)です.スーパーの特売コーナや実演販売コーナにディスプレイを置いて,レシピなどの画像を表示していますが,こうしたデータの中には,通信モジュールを使って一括配信されているものもあります.

――想定外の環境で使われたことはありますか?

増田氏:海洋ブイの中に通信モジュールを内蔵し,海流や波の状態を遠隔で監視するのに利用されました.また,山間部の地滑り監視に使われたこともあります.他に面白い使われ方として,エコモット株式会社が提供する「ミルモット」は,ソーラ・パネルによって内蔵バッテリーを充電し,撮影した写真をワイヤレスで伝送することにより,山間部の工事現場や農地など電源や通信回線を用意できない場所にも設置することができます.

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