暮らしに役立つQC七つ道具(3) ―― パレート図:「何」が「重要」なのか?

国広 洋一

tag: 組み込み 半導体

技術解説 2009年5月20日

 この連載では,ソフトウェア開発の品質管理(QC:Quality Control)において使われている七つの技法「QC七つ道具」について解説している.今回は,現状の把握や改善目標を決めるのに役立つ「パレート図」を取り上げる.パレート図を作ることにより,問題のある項目が一目で分かるようになる.(編集部)

●七つ道具その3:パレート図

 今回取り上げるQC七つ道具は,「パレート図」です.一般的な経験則として,多くの場合,問題は2種類に分かれることが多いようです.すなわち,数は少ないが重要な問題と,数は多いが些細な問題の2種類です.これは「パレートの法則注1」と呼ばれています.

注1:パレートの法則とは,全体の数値の大部分は,全体の一部の要素が生み出しているという説のことです.「パレート」の名前は,19世紀のイタリアの経済学者であるヴィルフレド・パレートに由来します.これは,イタリアにおいて,2割の金持ちに社会全体の8割の富が集中し,残りの2割の富が8割の低所得者に配分されるという現象の発見から生まれました.ソフトウェア・テストの分野では,テストの一般原則の原則4「欠陥の偏在」として知られています.

 この問題の偏りという性質(偏在性)を前提として,複数の現象を頻度によって分類する分析方法をパレート分析と呼びます.パレート分析で作成されるグラフがパレート図です.

 パレート図とは,棒グラフに折れ線グラフが重なった形のグラフです.項目別に「層別」にして,出現頻度を大きさの順に並べるとともに,累積和を示した図になります.パレート図は,現状の把握や改善目標を決めるのに役立ちます.

 パレート図の特徴は,以下の三つです.

  1. 重要な項目が一目で分かる
  2. 重要な項目が全体のどれだけを占めているか分かる
  3. 対策の的が絞りやすい
     

 パレート図を図1に示します.


[図1] パレート図の例

 パレート分析では,頻度の高い順に,Aグループ,Bグループ,Cグループ,のように重要度別に分け,それぞれのグループに対して異なった対策を立てることから,「ABC分析注2」とも呼ばれます.なおパレート図は,1950年にジュラン博士(Dr. Joseph Moses Juran)によって品質管理の分野で最初に定義されました.

注2:「ABC分析」という言葉は,ここで取り上げたもの以外に,製造間接費の管理方法(Activity Based Costing)の略語として使われる場合もあります.これは,某勉強会でABC分析について話が噛み合わなかったときに知りました.どちらもコスト関係で使われる言葉なので,しばらくは違うことを話していることに気づきませんでした.知っていると「思い込んで」しまうのは危険である,ということを気づかせてくれた,よい教訓になりました.(^ ^;

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