拝啓 半導体エンジニアさま(1) ―― 模倣と安売りの「システムLSI」,行くところまで行っちゃってる「メモリ」

ジョセフ半月

 今年は半導体業界でビックリするようなニュースが続きました.この1カ月ほどはインフルエンザの問題に目が行っているためか,ニュースになるような発表が少なく,「とても静か」に感じます.そのくらい,4月までが激動だったと言えるでしょう.表面的には静かでも,業界再編の動きは水面下で必然性を持って進んでいるのだと思います.

 日本の場合,「ルネサス テクノロジとNECエレクトロニクスがくっついてしまったら,残った会社はどうするのだ」といった話も聞きます.まあ,「くっついて大きくなれば生き残れる」というわけでもないと思うのですが,「大きいほうが何となく安心」という印象を受けるかもしれません.現在進行中の米国自動車業界の「再建」劇を見ていると,大きくなりすぎるのも大変だと思います.

●「安い・早い」の世界でもそこそこのシステムLSIを作れるうように

 日本国内ではシステムLSI系企業の合併が注目を浴びています.国外に目を向けると,こうした企業の前途の多難さを感じます.日本ではあまり購入する人はいないと思うのですが,海外の「コンセプトとデザインいただき」的な商品を見ていると,変なところに関心してしまいます.確かに「まねっこ」商品はずるいし,安いばかりで品質的にもどうかと思うのですが,中で使われているシステムLSIなどは,結構いいところまで作れる実力が付いてきているのではないでしょうか.

 確かにIPコアの権利などは怪しいものが多く,灰色どころか真っ黒のものもありそうです.しかし,いろいろな技術を盛り込んだLSIを「かなり怪しい,出所も明確でないようなところ」が素早く作れてしまう,という事実があります.

 今後,日本的な「かゆいところに手が届く」繊細な作りでお値段の高い製品よりも,荒削りな割り切りで「安い・早い」製品が主流になってしまうと,日本のメーカにとってはなかなか辛いかもしれません.アナリストなどの中には,日本のメーカも世界市場で戦えるように,(言っちゃ悪いが)「安かろう悪かろう」に舵を切るべきだ,といった方針を述べる人もいます.そういう主張には違和感を感じるのですが,でも,システムLSIの現状は確かにかなり危険です.そんな中,その手の「まねっこ」商品の内部であっても,逃げもかくれもできない名の通ったメーカ製のLSIが使われている部分があります.メモリですね.

●メモリ分野は「あえて手を出さない」向こう岸

 メモリは論理的な機能は単純ですが,技術はとても深い上に,お値段を考えると「怪しい」メーカが「パクリ」商品を作ってもうけられるようなレンジではありません.ちょっとメモリの値段が下げ止まったとは言え,もはや業界のアウトサイダが手を出せるような世界ではないのだと思います.

 そんなメモリ業界を考えると,気になる会社が二つあります.DRAMのQimonda社とフラッシュROMのSpansion社です.日本だけでなく米国,欧州にまたがるので法律の名前は挙げ切れませんが,日本の会社更生法に当たるような法律の申請をした,という報道が数カ月前に流れました.どちらの会社も,「当面のオペレーションは続ける」,「お金を出してくれるパートナを見つける」と述べているようですが,その後,続報がありません.どうなったのでしょうか.

 キマンダ ジャパンのホームページに行ったところ,既にリンクは切れていました.しかしドイツでは再建に向けての動きが続いているようで,そのようなニュース・リリースが出ていました.ただし,これといったパートナの名前は挙がっていません.

 Spansion社の場合はどうでしょう.こちらは日本に主力工場があり,純粋な海外の会社とは言えず,福島県の地場産業の一つとなっています.ホームページに行くと,つい最近「新製品」が発表されており,前向きに見えます.日米両国の法人とも操業を続け,再建を目指しているようです.でも,やはり「自主再建」路線なのでしょうか,こちらもこれといって手を上げているパートナの名前は挙がっていないようです.

 なんとなく「メモリ」ビジネスはリスクが大きすぎるので,このご時世では誰も積極的に手を挙げたがらない,というように見えます.日本のメーカにとっては,もはや「対岸」という感じでしょうか.でも,システムLSIのようにまねて安売りされるような領域にはなく,既に「行くところまで行っちゃっている」ので,やりようによっては「まだまし」なような気もします.

●転職時のストレスにご注意

 もちろん,リストラは避けられません.米国でSpansion社のエンジニアの再就職説明会にApple社が参加,とかいううわさを聞きました.筆者も何度か経験があるのですが,迫られて行う転職はひどくストレスがたまるものです.ましてや狭い業界だけでなく世界中が大不況なので,行き先が見つかるかドキドキものです. 

 なんとか転職できれば,ホッとするかもしれませんが,注意しないといけません.誰でも新しい環境に入ると,適応のため身体はアドレナリンを出してがんばっちゃうようです.そういうもろもろのストレスが後になって身体に出てくると大病になりかねません.ましてや新型インフルエンザの話もあります.皆さま,お身体だけは大切に.

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