タッチ・パネル市場の成長に期待，関連展示に注目集まる ―― Display 2009レポート

　2009年4月15日～17日の3日間，フラットパネル・ディスプレイの総合展示会「Display 2009（第5回 国際フラットパネルディスプレイ展）」が，東京ビッグサイト（東京都江東区）にて開催された．世界的な不況の中で，FPD（Flat Panel Display）産業も打撃を受けているといわれている．その中で，iPhoneやNintendo DSなど，多くの電子機器に標準搭載されつつあるタッチ・パネルは，普及率と出荷台数が急速に伸張している分野である．世界の出荷額は，2007年の12億ドルから，2015年には52億ドルに伸びると予想されている．また，2011年の地上デジタル放送への完全移行に向けて薄型テレビへの買い換えが進んでおり，テレビ・メーカ各社は大規模な設備投資の再開を予定しているという．ユーザビリティや省エネなどの研究開発も活発に行われている．
　併催は「第19回 ファインテック・ジャパン（フラットパネルディスプレイ研究開発・製造技術展）」，「第4回 FPD部品・材料EXPO」，「第1回 国際タッチパネル技術展」，「第1回 次世代照明 技術展 ライティングジャパン」（写真1）．主催はリード エグジビジョン ジャパン．

［写真1］ 会場受付の様子（併設展であるファインテック・ジャパンなどの受付）

●赤外線とカメラを使ったタッチ・パネルを展示

　イーアイティは，独自の光学式センサ技術「XYFer Technology」を採用したタッチ・パネルを展示した（写真2）．XYFer Technologyでは，枠の3辺に貼られた再帰反射テープにセンサ側から発行された赤外線が当たると，入射角と同じ方向に反射して赤外線が戻る．この戻ってきた赤外線をセンサに内蔵したカメラで撮像する．指などでタッチした部分は，センサから出ている赤外線をさえぎる形となり，カメラからは影となって見えることになる．この影の位置を，三角測量で計算して，X，Y座標を検出するという方式である．これにより，従来の抵抗膜方式や超音波方式と比較して，分解能，感度ともに優れているという．また，本技術は，複数点の同時認識も可能である．

［写真2］ イーアイティの赤外線イメージ・センサ方式タッチ・パネル

●タッチ・パネル応用のGUI部品で社員食堂のデモ

　マイクロサーカスは，Visual Studio 2008開発環境において，タッチ・パネル操作に特化したGUIを実現するコンポーネント「.touch」のデモンストレーションを行った（写真3）．本コンポーネントを利用することにより，使い勝手の良いパネル操作やボタン，スイッチなどを作成できるという．
　デモンストレーションでは，あらかじめデータベース化されている社員情報と食堂のメニュー選択を組み合わせた．社員情報のデータベースには，その社員が摂取できるカロリの上限が設定されている．タッチ・パネル上でメニューを選択し，摂取カロリの上限を超えると，徐々にトレイに送られる速度が緩慢になる．無理にメニューを追加しようとすると，アラートが表示される．

［写真3］ マイクロサーカスの「.touch」のデモンストレーションの様子

●大手は薄型有機ELと裸眼立体視のディスプレイを展示

　ソニーは，21V型の薄型有機ELディスプレイを参考展示した（写真4）．2009年1月に米国ネバダ州Las Vegasで開催された「2009 International CES」では発表されていたが，国内では初披露となる．厚さは1cmで，パネルは1.4mm厚．表示解像度は1066ピクセル×768ピクセル，コントラスト比は100万：1である．TFT（Thin Film Transistor）回路の上側から光を取り出すトップ・エミッション構造に加え，有機層をそれぞれの色に適した厚さにする独自技術「Super Top Emission」を利用している．中空をなくした完全個体構造を採用し，薄型化を実現しているという．

［写真4］ ソニーの21V型有機ELディスプレイ