暮らしに役立つQC七つ道具(1) ―― 層別:「分ける」ことは「分かる」こと
この連載では,ソフトウェア開発の品質管理(QC:Quality Control)において使われている七つの技法「QC七つ道具」について解説する.QC七つ道具に関しては,関連書籍やWeb上の解説など多くの情報があるが,実際に自分で使ってみようとすると迷うところが出てくることが多い.ここでは,身近な例題を用いて,それぞれの技法をどのように活用すればよいのかを解説する.今回は,七つ道具の中でも特に重要で理解しにくい「層別」を取り上げる.(編集部)
皆さんは「QC七つ道具」をご存じでしょうか.「言葉としては聞いたことはあるけど...」という方も使ったことがなかったり,使い方に自信がない,といった方が多いように思います.
QC七つ道具とは,品質管理(QC:Quality Control)において,現象を定量的に分析するための基本的な七つの技法のことです."牛若丸と弁慶"として有名な,武蔵坊弁慶が持っていたと伝えられる七つの武器「弁慶の七つ道具」になぞらえて,そう呼ばれています.
QC七つ道具として挙げられるのは,以下のものです.「層別」と「グラフ」はかっこ書きにしていますが,このうちどちらをQC七つ道具に含めるのかは,人によって異なります.
- (層別)
- チェック・シート
- パレート図
- ヒストグラム
- (グラフ)
- 散布図
- 特性要因図
- 管理図
QC七つ道具は,主に集めた数値データの中から相互の関連や問題点を見つけ出すために用いるものです.これは,具体的な手法であると同時に,「問題解決」の汎用的な考え方の枠組み(フレームワーク)でもあります.
発生した「問題」にやみくもに対応し,問題を大きくしてしまったり,解決の役に立たないことをやってしまう,ということは,仕事や日常生活でありがちなことです.そのような場合に,QC七つ道具の主要な概念(concept)である「事実に基づくアプローチ」という考え方を身に付けていると,無駄な遠回りをせずに「問題解決」に向かっていくことができます.また,「問題を複数の視点から見る」ということの利点が「実感」できるというのも,QC七つ道具という「枠組み」を学ぶ上でのメリットでしょう.
●分かるようで分からない七つ道具の使い方,教えます
QC七つ道具に関しては,品質管理関連でさまざまな本が出版されていますし,Web上にも多くの情報があります.それらの説明を読むと,何となく「分かった」ように思えます.けれども,実際にやってみようとすると,どのように「使う」か,迷うところが出てきてしまうのではないでしょうか.
この連載は,QC七つ道具を身近な問題に実際に使ってみることで,どのように使えばよいのか,イメージを持っていただくことを狙いとしています.
●七つ道具その1:層別
さて,最初に取り上げるQC七つ道具は「層別」です.「層別」は,QC七つ道具の中では一つだけ種類が異なっています.そのほかの道具は具体的な「方法」なのですが,「層別」だけは「考え方」なのです.
「層別」とは,データを要因で切り分けて調べる,という考え方です.簡単に言えば「分ける」ということなのですが,この考え方はQC七つ道具を使う上で欠かせないものです.これが分かっていないと,ほかのQC七つ道具をうまく使うことができません.
「層別」を行う上では,以下のことが重要です.
- データを分ける目的を考えること.
- データの分け方が適切であること.
- データの分け方にモレ,ダブりがないこと.
「層別」の具体例としては,図書館などに表示してある図書分類表などが典型的なものです(図1).
QC七つ道具なのに「考え方」だということで,あまりピンとこないかもしれませんが,ほかの七つ道具を使う際にも合わせて使える重要な考え方であるということを,まず覚えておいてください.
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