暮らしに役立つQC七つ道具(1) ―― 層別:「分ける」ことは「分かる」こと
●シナリオ:お金が足りない!
それでは,QC七つ道具の使い方を理解するのに手ごろな例題を考えてみましょう.QC七つ道具は,数値データを扱う問題が得意です.そのため,普段の生活の中で数値を扱うものが適切な例題となります.
普段の生活の中で数値を扱うものといえば,どんなものがあるでしょうか? 数値というと,ダイエット(体重)や給料(金額)などが思い浮かびます.この連載では金銭管理を取り上げてみることにしましょう.

なぜか,いつも月末になるとお金が足りなくなってしまうのです.貯金もしたいのですが,今のままではとてもできません.特に無駄遣いをしているつもりもないのに,どうしてお金が足りなくなってしまうのか,分からないのです.「なぜ,お金が足りなくなるのか」ということを探っていくにはどうすればよいでしょう?
最初にしなければならないことは,お金が足りなくなる原因を見つけることです.お金が足りなくなる原因が分かれば,そのための対策を考えることができるようになります.それでは,お金が足りない原因として考えられそうなことを,思いつくままに挙げてみましょう.
給料が少ない,ボーナスがカットされた,家賃が高い,洋服代がかかる,車のローンがある,タバコ代が高い,飲み代がかかる,etc....お金が足りなくなる原因として考えられそうなことは,どうやらいろいろありそうです.では,その中の何が本当の原因なのか,すぐに分かるでしょうか?
ほとんどの場合,原因がいくつもあったり,それらが絡み合っているので,パッと分かることはないだろうと思います.こういう状態を「問題が大きすぎる」状態といいます.
●分けると「分かる」
人が一度に扱える複雑さには限界があります.限界を超えた複雑さを扱おうとすると,考えることができなくなるのです.そういうときには,どうすればよいのでしょうか?
そう,自分が扱える大きさに複雑さを「分けて」しまえばよいのです.それが「層別」という考え方です.
それでは,どう分けてみましょうか?
個々の事柄を考えると,考えなければいけないことが多くなりすぎますね.そこで,お金が足りないという原因を抽象化(モデル化)してみましょう.例えば,原因は「収入が少ない」と「出費が多い」の2種類に分けることができます(図2).
[図2] お金が足りない原因
先ほどお金が足りない原因をいろいろ挙げてきましたが,それらはすべて,この中に納まりますね.もやもやとした「原因」を解きほぐすには,一つ一つ丁寧に「分けて」いくことが大切です.
どういうところから探っていけばよいのか,なんとなく見通しがついてきました.ここで,お金を貯められるようになるための「計画」を立ててみましょう.ざっと,こんな感じでしょうか.
- 収入と支出(出費)を確認する.
- 確認した結果から,お金が足りない原因を分析する.
- 分析した結果から,対策を考える.
- 対策を実行してみる.
- 実行結果を確認する.
- 確認結果から,もう一度,対策を考える.
それでは,次回から,この「計画」に基づいて実行してみることにしましょう.
次回はQC七つ道具の「チェック・シート」を取り上げます.お楽しみに.(^^)
くにひろ・よういち
◆筆者プロフィール◆

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