納入実績のある自動車・航空機関連の体感システムに人だかり ―― 産業用バーチャル リアリティ展

組み込みネット編集部

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レポート 2008年7月 1日

 3次元映像表示装置や3次元映像コンテンツなどに関する技術展示会「産業用バーチャル リアリティ展」が,2008年6月25日~27日,東京ビッグサイト(東京都江東区)にて開催された(写真1).会場では,自動車の内装の質感や色合いを体感的に確認できるシステムや管制官の訓練に利用する管制塔シミュレータなどが展示され,来場者の注目を集めた.視覚的に分かりやすい技術や体感可能な技術の展示が多く,来場者が一様に楽しげなのが本展示会の特徴でもある.

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[写真1] 産業用バーチャル リアリティ展の会場内
2008年6月25日~27日,東京ビッグサイトで開催された.

●自動車の内装や広さを3次元映像内に入り込んで確認

 クレッセントは自動車の内装や外装の色,あるいは形を体感的に確認できるシステムを展示した(写真2).自動車部品のCADデータをもとに仮想の3次元空間を構築する.デモンストレーションでは,ヘッド・マウント・ディスプレイを装着した使用者が車に近づき,ドアを開け,シートに腰掛けて車内を見渡し,室内の広さやシートの色合い,メータの質感などを確認していた.

 本システムは使用者が装着するヘッド・マウント・ディスプレイ,使用者の頭や手の動きを検知するモーション・キャプチャ・カメラ,CADデータから仮想の3次元空間を構築するソフトウェアで構成する.既に自動車関連メーカへの納入実績を持つ.システム一式の価格は約4,000万円.

 ヘッド・マウント・ディスプレイ(写真3)は同社の子会社であるVirtual-Eyeの「HEWDD-768」を利用する.レンズおよびLCOS(Liquid Crystal on Silicon)で構成されており,片目あたり1280ピクセル×768ピクセルの解像度を持つ.視野角は水平方向が140°,垂直方向が78°.

 モーション・キャプチャ・カメラ「MX-F」は,英国Vicon社が開発したもの.被写体に赤外線を照射し,被写体に取り付けた各マーカの反射光を400万画素のカメラで検出する.検出した光の3次元座標を,同社製の専用ソフトウェアを利用して取得する.本カメラを利用することで,使用者の頭の位置と両腕の位置を検知できる.

 仮想の3次元空間構築ソフトウェアは,例えば,CatiaやSolidWorks,Delmiaなどで作られた自動車部品のCADデータを元に,仮想空間を使用者にとって最適なサイズに調整したり,各部品の見た目を派手にしたり,インタラクティブ(双方向的)機能を持たせたりする.

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[写真2] CADデータから生成された車内の様子(試験者が装着したヘッド・マウント・ディスプレイで見た映像)

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[写真3] ヘッド・マウント・ディスプレイを装着した試験者

●管制塔からの景色を幅3mほどのスクリーンに表示

 キャドセンターは管制塔シミュレータを展示した(写真4).幅が約3mのスクリーン上に,空港の管制塔から見える景色に似せた映像を表示する.また,手元の3台のモニタ上には,飛行機の運航スケジュールやアラームなどを表示する.管制官を教育する複数の学校や施設に納入実績を持つ.

 映像コンテンツの生成には,米国Presagis社の仮想現実(VR)コンテンツ生成ツール「CREATOR」とVR表示ソフトウェア「Vega Prime」を利用する.映像は米国Christie Digital Systems社の映像表示システム「ARC Vision」に表示している.ARC Visionは2台のプロジェクタや大型スクリーンなどで構成される.

 キャドセンターは,このような映像コンテンツ,管制塔シミュレータおよびフライト・シミュレータの開発を受託している.Presagis社の航空機シミュレータ作成用ソフトウェアや,自動車および航空機に搭載する計測機器インターフェース開発用ソフトウェア,3次元グラフィクスのモデリング・ツールなどの国内販売代理店も務める.

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[写真4] キャドセンターが開発した管制塔シミュレータ

●直径1.5mの球形スクリーンに大陸や雲などを表示

 ユニバーサル・ビジネス・テクノロジーは,米国ARC Science Simulations社が開発した球形映像表示装置「OmniGlobe」を展示した(写真5).直径1.5mの球形スクリーンと2台のプロジェクタ,球形スクリーン内部に設置された2枚の凹面鏡で構成する.

 プロジェクタはChristie Digital Systems社の「CHRISTIE HD405」を利用している.スクリーンの解像度は約300万ピクセル.本映像表示装置の総重量は126kg,消費電力は1050W.

 球面画像変換ソフトウェアが付属する.デモンストレーションでは受付の女性の顔写真を本装置で表示していた.価格は2,336万円(税別).

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[写真5] 球形スクリーンに表示された地球

●マネキンに内蔵や血管を表示

 岐阜大学バーチャルシステム・ラボラトリーはバーチャル解剖模型「VAM」を展示した(写真6).プロジェクタから投射された消化器や血管走行モデルをマネキンに映し出す.

 マネキンの形をしたスクリーン,プロジェクタ,6軸磁気センサ2個で構成する.6軸磁気センサを使用者の目の位置とマネキン内部に設置することで,使用者がマネキンをどの方向から見ているのかが分かる.マネキンに表示する映像は,マネキンの背中や側部を使用者がどの方向から見ているのかに合わせて変える.これにより,例えばマネキンの頭側から腹部を見た映像と,足側から腹部を見た映像は異なる.

 ただし,消化器や血管走行モデルを,使用者の視点に合わせて自動生成できるソフトウェアは,現時点では提供されていない.

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[写真6] マネキンに表示された消化器

●フルハイビジョン液晶ディスプレイを利用したびょうぶ

 韓国デジタル・コンテンツ共同研究センターは,液晶ディスプレイによるディジタルびょうぶ「SIGNVRVIEW」を展示した(写真7).46インチのフルハイビジョン液晶ディスプレイを数枚組み合わせて実現した.山水画や海中写真など,さまざまな画像をびょうぶに表示できる.

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[写真7] 46インチの液晶ディスプレイを4台利用するディジタルびょうぶ

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