追い風の中,目指すは「関西発世界標準」 ―― ET West 2008の見どころ
2007年8月に関西経済連合会が「組込みソフト産業推進会議」を立ち上げるなど,関西の組み込み業界に追い風が吹いている.そのような中,「Embedded Technology West(ET West;組込み総合技術展 関西)2008」が2008年6月5日~6日,インテックス大阪(大阪市住之江区)にて開催される(写真1).関西の組み込みシステム関連企業だけでなく,関東圏からも多くの企業が出展する.
[写真1] 昨年のET Westの様子
昨年はマイドームおおさか(大阪市中央区)にて開催された.
●会場内にてETロボコンの草レースを実施
展示会場内で注目したいのが,実寸で設置されるETロボコンの競技コースである.これは,Microsoft社が提唱するSoftware Factoriesの手法を組み込みシステムに適用しようと試みているコミュニティであるEEst(Excellent Embedded Software Technology)と,ETロボコン実行委員会の手によるものである.
会期中,このコースにおいて,Software Factoriesの展示や試走会,ETロボコン体験会が行われる.また,6月6日の午後からは「ET West杯」と銘打ったロボコン競技会(非公式の競技会.いわば"草レース")が開催される(写真2).ただし計測システムなどは本番と同じものが用いられる.また,某大物司会者が登場するとの噂もあり,本番さながらの盛り上がりが期待される.会場では機材を貸し出しており,スケジュールの許す範囲であれば飛び入り参加も可能であるようだ.ETロボコン実行委員から興味深い話も聞けるだろう.
[写真2] ETロボコンの非公式レースの一例
2006年9月17日に伊丹市ラスタホール(兵庫県伊丹市)にて行われた,「LEGOロボット競技 関西大会(通称:負け犬大会)」の様子.
なお,Software Factoriesについては,6月5日10:00~12:00のコミュニティ・セッション「はじめようSoftware Factories - ETロボコンへの適用」と題した解説セミナ(無料)が開催される.講演するのは,EEstを主宰する太田 寛氏(マイクロソフト デベロッパー&プラットフォーム統括本部 エンベデッド エバンジェリスト).こちらへの参加もお勧めしたい.
●開発秘話や業界動向が聞ける基調講演
ET West 2008では,「関西発世界標準」をテーマに,関西から世界に通じる技術情報を発信する.初日の基調講演としては,テレビCMで話題の「ムラタセイサク君」の開発秘話を,開発者である村田製作所の吉川 浩一氏が講演する.あの愛らしい動きをする「ムラタセイサク君」の秘密は何か? 技術者でなくとも興味を引かれる内容だ.
次に特別基調講演として,ディジタル家電の雄である松下電器産業 シニアフェローの櫛木 好明氏が,ディジタル家電における組み込みソフトウェアのこの10年の総括と,目指すべき次のステージについて講演する.彼らが何を考えながらこの10年を創ってきたのか? 彼らが目指す地平はどこか? それを知ることができるだろう.
2日目の基調講演の一つめは,PS(Partner Satisfaction)研究会 代表の松尾谷 徹氏が,技術者を人として活かすための考え方や仕組みを「Partner Satisfaction(パートナ満足)」の観点から講演する.講演タイトルにある「情工哀史からの脱却」,これは組み込み業界やソフトウェア業界の健全な発展のために必須のキーワードだろう.本講演は,同日開催する「JaSST'08 Kansai(ソフトウェアテストシンポジウム2008 関西)」との共同基調講演である.
最後の基調講演として,神戸大学 大学院工学研究科 機械工学専攻 教授の大須賀 公一氏がレスキュー・ロボットの開発・研究動向を紹介する.自然災害が起こった際に,いち早くレスキュー活動を始められるかどうかが人命救助の成否を分けることはよく知られている.緊迫した現場で活躍するレスキュー・ロボットは,組み込み技術が世の中の役に立っていると実感できる具体的な例である.
●開発の上流工程や技術者教育についてのパネル・ディスカッションを実施
パネル・セッションも注目度が高い.「組込み開発で『要求』は誰の手中にあるのか?」といった抽象的なテーマをそれぞれの分野で強い思いを持つ個性的なパネリストたちが語るセッションや,関西における組み込み技術者教育を,当事者や教育関係者が語るセッションなどが開催される.
企業の枠を超えて活動するコミュニティの活動を紹介する「コミュニティ・セッション」では,アジャイル・ソフトウェア開発を推進する日本XPユーザグループ関西(XPJUG関西)や,人のつながりを重視するProject Facilitation Project(PFP)などに登壇いただく.FPGA,DSP,アナログ・デバイスの主要ベンダによる各トラックでは,これらのデバイスの最新情報や活用事例について解説する.テクニカル・セッション(有料)も,定番の「RTOS基礎」から形式手法,プロセス改善,組み込みC++言語,DLNA,車戴ソフトウェアの動向などが用意されている.
カンファレンスの事前登録は5月末で締め切られる(ただし,当日でも空席があれば聴講可能).
●業界交流会はJaSST'08 Kansaiと共催
6月5日(木)の17:30~19:30,インテックス大阪会場内にあるビアホール(ニューミュンヘン)にて組み込み業界関連の交流会が開催される.JaSST'08 Kansaiの情報交換会との共催であり,XPJUG関西やPFPなどの関西コミュニティとも交流を深められる.多くの技術者と知り合える場であるので,お時間の許す限りの参加をお勧めしたい.参加費は3,000円で,2時間飲み放題とのことである.
しゅくぐち・まさひろ
ET West カンファレンス委員長