優勝したチーム浜当目,「ほぼ完ぺきな走り」 ―― ETロボコン2007 チャンピオンシップ大会
2007年11月14日,パシフィコ横浜 会議センター(神奈川県横浜市)にて,LEGO MINDSTORMSを使ったライン・トレース競技会「ETロボコン2007 チャンピオンシップ大会」が開催された(写真1).地区予選に参加した181チームから選抜された24チームが走行を競った.会場がET(Embedded Technology)の展示会場とやや離れていたにもかかわらず,大勢の観客が観戦に訪れていた.
ETロボコンは,LEGO MINDSTORMSを使った小型自走式ロボットでソフトウェアの走行性能と設計モデルを競う競技会である.2007年6月に関東・東海・関西において地区予選が実施され,2007年7月14~15日に,地区予選を勝ち抜いた50チームによる選手権大会が実施された.今回のチャンピオンシップ大会は,その選手権大会で好成績を挙げたチームと各地区から推薦されたチーム,合計24チームが出場した.本競技は黒線に沿ってコースを2周することで完走と見なされるが,オプションとして設けられたZクランクや点線ショートカットなどの難所を通過したり,ゴール・ゲートを通過して50cm以内で停止したり(ゴール後停止)することにより,ボーナス・タイムを獲得できる.
●「記録より記憶に残る走りをしたい」
優勝したのは,東海地区から出場したチーム「浜当目(はまとうめ,個人参加)」.イン・コースとアウト・コースの両方を完走しただけでなく,Zクランクを2回走破,ゴール後停止を2回とも成功させ,設けられたボーナス・タイムをほとんどすべて獲得した上での勝利だった.
ETロボコンの競技会では,毎回,完走率と会場の環境(光の状態)が話題になる.今回は比較的良好な環境だったようだ(写真2).Zクランクなどに果敢に挑戦するチームが多かったにもかかわらず,完走率は66.66%.Zクランクを1回以上走破したチームは24チーム中11チームに上った.また,並走した2チームが2チームとも,ゴール・ラインを越えたとたんにぴたりと止まる「ゴール後停止(オーバランなし)」を決めてみせる場面などもあり,会場を大いに湧かせた.司会者が,とある参加者の発言として「記録より記憶に残る走りをしたい」という言葉を紹介していたが,そのような意気込みが競技の端々に表れていた.
●モデルは「要求,構造,挙動」の3点セットで
走行競技の終了後,ETロボコンの審査委員長であるオージス総研の渡辺 博之氏が,チャンピオンシップ大会に出場した24チームの設計モデルについて講評した.同氏によると,モデルに記載してほしいことは「何をやりたいのか(要求)」,「どのような構造で実現するのか(構造)」,「どのように制御するのか(挙動)」の3点だという(写真3).これらは,UMLの図でいうとそれぞれ「ユース・ケース図」,「クラス図,オブジェクト図」,「シーケンス図,ステート・マシン図」などに相当する.しかし,構造に関する記述や考察が足りないモデルが多いという.それも,走行競技で上位に入賞するチームのモデルにおいて,構造の分析が少ない傾向があるようだ.設計モデルを審査する審査委員会としては,「きちんとモジュール構成しないと走れないような競技に変更するべきではないか」といった議論も出ているという.
なお,モデルの良しあしは設計内容だけで決まるわけではない.「ぱっと見て,分かりやすいと思わせる工夫も大切.特に,マネージャ・クラスの人へのプレゼンテーションなどには利いてくる」(渡辺氏).イラストや吹き出し,色などを効果的に利用することを勧めた(写真4).