モデル検査やAUTOSARなどに関連したツールが登場 ―― 第11回 組込みシステム開発技術展(ESEC)レポート(2)

組み込みネット編集部

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レポート 2008年5月26日

 2008年5月14日~16日,東京ビッグサイト(東京都江東区)にて,組み込みシステムに関する展示会「第11回 組込みシステム開発技術展(ESEC)」が開催された(写真1).モデル検査やAUTOSARなどに関連した開発ツールが注目を集めていた.

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[写真1] 受付の様子
東京ビッグサイト(東京都江東区)にて開催された.

●モデル検査をシーケンス図や状態図に適用

 イーソルは,UMLのシーケンス図や状態図に対して,容易にモデル検査を適用できる検証環境を展示した(写真2).この検証環境は,UMLモデリング・ツール「Enterprise Architect」からモデル検査ツール「LTSA」用のファイルを出力するものである.モデル検査とは,形式手法(Formal Method)とも呼ばれ,数学的な手法を用いて対象モデルを検査する技術である.

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(a) Enterprise Architectの画面(シーケンス図)


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(b) LTSAの画面(自動生成したステート・マシン図)


[写真2] UMLモデリング・ツールとモデル検査ツールの連携例
(a)からファイルを出力し,LTSAに読み込ませて(b)のステート・マシン図を自動生成した.

●AUTOSARに対応したCASEツールを展示

 キャッツは,車載ソフトウェアの標準アーキテクチャである「AUTOSAR(Automotive Open System Architecture)」に対応した,開発中の組み込みソフトウェア開発用CASEツール「ZIPC AUTOSAR」のデモンストレーションを行った(写真3).AUTOSARで規定されているモデル図を作成できる.本ツールは,AUTOSARに準拠した開発工程のうち,システム設計とECU抽出に対応している.ECU抽出の結果はファイルとして出力し,後工程のECU構成ツールと連携できる.

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[写真3] ZIPC AUTOSARの画面例
AUTOSAR コンポジション図の例.

●ECU設計段階でターゲット・コードをシミュレーション可能

 ガイオ・テクノロジーは,仮想ECU検証環境「VECU-G」を展示した(写真4)MATLAB/Simulinkで設計された車両制御モデルを用いて,ECUのターゲット・コードを命令セット・シミュレータで実行する.これにより,ECUのシステム・シミュレーションを行える.

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[写真4] 仮想ECU検証環境「VECU-G」のデモンストレーションの様子
写っているのは,車両制御モデルの一部として用意されている車両操作パネルの画面である.

●Java ME用のアニメーションをFlashで作成

 エイ・エス・ヴィは,組み込み向けJava実行環境(Java ME:Java Platform, Micro Edition)向けの動画コンテンツ作成支援ツール「Flash Javaコンバータ」を展示した(写真5).組み込み向けのJava開発環境では,動きのある画像を表示したい場合に,複数の画像を用意してそれぞれ表示位置を指定し,パラパラマンガのように切り替えて見せていた.本ツールをFlashに組み込むことにより,Flashで作成した動きのある画像(モーション)を,Java ME実行環境で使用できるXML形式のデータとして書き出せる.Blu-rayディスクのメニュー画面やセットトップ・ボックス,携帯電話のコンテンツなどに適用可能.

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[写真5] Java ME向け動画コンテンツ作成支援ツールのデモンストレーション
本ツールをFlashに組み込むと,コンバート用のメニューが追加される.

●写真2枚で3次元データを取得

 SVMC社は,角度をずらして撮影した2枚の画像から3次元のCGデータを作成できる技術のデモンストレーションを行った(写真6).3次元データとして作成するので,見る角度をさまざまに変えることができる.物体の長さに関する実測との誤差は0.2%以内だという.

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[写真6] 2枚の写真から作成した3次元画像
画面上で角度を変えながら3次元画像を確認できる.家の右側が変型しているのは,元の写真にない部分を自動でそれらしく補っているためである.

 また,同技術を連続的に適用して作成した動画のデモンストレーションも行った(写真7).撮影した二つの映像のほか,上から見下ろした平面図も表示し,駐車場への自動車の出入りをリアルに表現してみせていた.

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[写真7] 駐車場への入退場を平面図として見せるデモンストレーション
自動車の位置を赤い点で表示した.時間の幅を持たせて表示しており,自動車の動きや速度を直感的に把握しやすい.

●TOPPERS/ASPカーネルに対応した開発ボード

 ヴィッツサニー技研は,TOPPERS/ASPカーネルに対応した開発ボード「TOPPERS Platform Board」を展示した(写真8).TOPPERS/ASPカーネルのほか,FlexRayやCAN,LIN,TCP/IPプロトコル・スタック,FAT準拠のファイル・システムなどのミドルウェアが合わせて提供される.TOPPERS/ASPカーネルは,μITRON4.0仕様を踏まえて実装されたOSカーネルであり,今後10年間の標準となるべく設計されたという.2008年5月14日から一般ユーザ向けに無償公開を開始したばかり.

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[写真8] TOPPERS Platform Board
TOPPERS OSやミドルウェアの動作確認が済んでいるボードなので,学習用や試作用に向いているという.価格については,学生のおこづかいで購入できる価格を目指して検討中とのこと.

●機能安全の重要性を鉄道模型でアピール

 ヴィッツは,鉄道模型を使って機能安全の重要性を訴えるデモンストレーションを行った(写真9).電車にはマイコンが組み込まれており,周囲の状況を確認しながら走行している.線路の各位置にはセンサが組み込まれており,踏切内への立ち入りなどを検知すると信号機の表示を切り替え,衝突事故を未然に防ぐ.通信にはLINプロトコルを使用している.

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[写真9] 鉄道模型によるデモンストレーション
開発担当者たちは,ゴールデン・ウィーク返上でこのデモンストレーションを作成したという.

●Windows CE/Mobile向けの障害解析ツールを開発

 横河ディジタルコンピュータコードギアは,デバッグ用ポートを持たないWindows CE/Mobile機器の不具合解析に使用できる動的障害解析ツール「QQFORCE」を共同開発した(写真10).展示会場の横河ディジタルコンピュータのブースでは,このツールの展示が行われていた.本ツールは,機器のCPUにAPI監視プログラムを常駐させる方法をとる.待ち状態のAPIをリストアップしたり,CPUの高負荷状態が続いているプロセスを検知したり,メモリ確保/開放関連のAPI呼び出しをチェックする.監視データを外部に取り出す方法も,いろいろと用意されている.例えば,シリアル・ポート経由やUSB経由で外部に取り出したり,外部記憶装置に記録したりできる.また,プログラムでイベントを与えたときに取り出したり,あらかじめ決まった時間に定期的に取り出したりすることも可能.

 同社によると,ユーザの操作に依存する状態や,めったに発生しない状態など,再現しにくい状態で起こるバグを検出する際に有効だという.対応するCPUはARM(XScaleを含む).

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[写真10] QQFORCEのデモンストレーションの様子
ARM9を搭載した寺岡精工の業務用入力端末(写真右上)の動作を解析している.このほか,ウィルコムの携帯情報端末(W-ZERO3)の解析も行っていた.


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