生徒が欲しい「物」,製作プロジェクト 第4回 ―― 夜,人が近づくと点灯するカンテラの製作

栗田淳一

tag: 電子回路

エレキ系DIY 2008年5月 1日

 生徒が欲しいものを生徒自身に作ってもらうプロジェクトの第4回である.プロジェクト 第1回で製作したカンテラに人感センサを取り付け,人が近づいたときのみ点灯するように改造を加えた.  (編集部)

 赤外線センサや超音波センサなど,物体の存在や物体への距離を検出するセンサは多数ありますが,ここでは焦電素子を利用した赤外線センサを使ってみることにしました.焦電素子は赤外線を含む光を検出する素子です.微弱な熱源から放出される赤外線を検出できるので,人体の熱源にも反応し,人感センサとして用いられることが多いようです.

 最近はホームセンタに置いてあり,近づくと突然,ライトが点灯したりします(いきなり光るので,スピード違反で写真を撮られたようなひやり感があります).

● 人感センサの入手方法

 素子だけなら100円くらいで販売されているのですが,出力信号の電圧レベルがとても小さく,手軽に「生徒と一緒に電子工作」とはいきません.オシロスコープで波形を観測すると,確かに信号は出力されていますが,数千倍ほど信号を増幅する回路を設計しなくてはなりません.

 「きっと増幅回路を搭載した品種もあるはずだ」と,インターネットで調べたところ,ありました.松下電工のWebページに載っていました.商品名は「焦電型MPモーションセンサ ナピオン NaPiOn」,型名は「AMN11112」です.写真1に焦電型MPモーションセンサと,プロジェクト 第2回で紹介したCdS(硫化カドミウム・セル)を並べてみました.さほど大きさは変わりません.なお,AMN11112は,マルツパーツ館WebShopにて,1,590円で購入しました.

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[写真1] 焦電型MPモーションセンサとCdSの外観

● 人感センサからのパルス信号を引き延ばすタイマIC

 AMN11112から出力された信号は,単発のパルス信号です.LEDをしばらく点灯させておくために,30秒ほどセンサの出力を保持しなければなりません.ここでは,タイマ用として有名な「NE555」というICを用います.タイマICを利用する際の基本回路を図1に示します.なお,今回はNE555のCMOS版「LMC555」を用いました.5個で100円という価格で,秋月電子通商(秋葉原)にて販売されています.

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[図1] タイマIC周りの基本的な回路

● 夜,人が近づくと点灯するカンテラの回路

 以上のセンサとタイマ用IC,そしてプロジェクト 第2回で紹介したCdSを組み合わせて,「夜,人が近づくと点灯するカンテラ」を製作しました.図2に回路図を示します.

 回路を簡素化するために,タイマICのRESET端子に直接,CdSを接続しています.これは筆者がたびたび使う手で,ディジタル系ICのRESET端子を0V付近にして,動作を停止します.考え方としては,E(Enable)端子やCS(Chip Select)端子と同じように使います.

 せっかくですからCdSにスイッチを追加した回路も考えてみました.スイッチをオープンにするとRESET端子が"H"となるために,昼間でも人が近づくと点灯します.今回はスイッチを追加していません.

 データシートによると,タイマの動作時間τは,τ=1.1×Rt×Ct [s]となります.この回路の定数では,点灯時間が約30秒くらいの計算になります.点灯時間を変更する際には,コンデンサCtまたは抵抗器Rtの定数を変えてください.なお,Rtに可変型抵抗器を用いる場合は,直列に数十kΩ程度の固定抵抗器を入れておくことをお勧めします(図3).Rtを最小(数Ω)にしたときに,瞬間的に大電流がCtに流れ込み,Rtを損傷しかねないからです.

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[図2] 夜,人が近づくと点灯を始めるカンテラの回路図

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[図3] Rtが数Ωになったとき,大電流がCtに流れ込むのを防ぐ数十kΩの抵抗

● 回路をブレッドボード上で組んで動作を確認した

 回路はブレッドボードと呼ばれる試作用のボード上で作ってみました(写真2).見事に設計通りに動作しました.数m離れたところから手を振っても反応してくれます.試作にはこのようなブレッドボードを使用します.この程度の大きさならば400円程度で入手できると思います.使っている被覆線のしん線は単線の品種が扱いやすいと思います.しん線の直径は0.5mmを使っています.

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[写真2] ブレッドボード上で回路を組み,動作を確認した

● プリント基板に部品をはんだ付けする

 写真3に部品搭載後の基板の外観を示します.絶縁のために抵抗器とコンデンサには,直径3mmの熱収縮チューブをかぶせます.人感センサとCdSは,カンテラのケース本体に取り付けるので,リード線で基板と接続しておきます.できれば,人感センサとCdS,LEDはコネクタ接続としておき,基板から取り外しができると,作業を進めやすいです.リード線が長いとケースに収まりきらないので,6cmか7cm程度が良いでしょう.

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[写真3] 部品搭載後の基板の外観

● カンテラを組み立てる

 組み上げた基板を厚手の両面テープでカンテラの底に取り付けたものが写真4です.センサとCdSは目立たない個所に取り付けたいのですが,今回はカンテラの正面(スイッチ側)に穴を開けて接着剤で固定しました.CdSは裏側に穴を開けて固定しました.離れて見れば目立たないと思います.完成したものが写真5です.

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[写真4] カンテラの裏ぶたを外し,底に基板を取り付ける

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[写真5] 夜,人が近づくと点灯するカンテラ

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