一芸に秀でた画像センサに注目が集まる ―― SECURITY SHOW 2008

組み込みネット編集部

tag: 組み込み 電子回路

レポート 2008年3月10日

 防犯,防災に関する機器やシステム,サービスを紹介する「SECURITY SHOW 2008」が,2008年3月4日~7日,東京ビッグサイト(東京都江東区)にて開催された(写真1).出展社数は過去最多の268社.会場では,赤外線画像センサを利用した温度カメラや画素ごとに露光時間を変えられる画像センサ,人の動きをリアルタイムにトラッキングできる画像センサなど,くるまやロボット分野でも利用できそうな,一芸に秀でた画像センサが来場者の注目を集めた.

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[写真1] SECURITY SHOW 2008の会場入り口
2006年3月4日~7日,東京ビッグサイトで開催された.

● 赤外線画像センサを利用した温度カメラ・モジュール

 NECは,対象物の温度を0.075℃の分解能で取得できる温度カメラ・モジュール「HX0830M1」を展示した.同社の非冷却赤外線画像センサ「HX0830」を搭載する.この画像センサは,およそ800nm~14μmの波長(近赤外~遠赤外)に対応し,対象物の相対的な温度の違いを検出できる.そのため,夜間および煙の中でも対象物の相対的な温度を把握でき,火災現場における人命探索への利用実績をもつ.

 暗視カメラとしての利用も可能.赤外線を照射し,その反射光を検出する暗視カメラは数多く存在するが,本カメラ・モジュールは赤外線の照射が不要であることから,車や広い範囲を監視するカメラにおける利用が見込める.

 HX0830の画素数は320ピクセル×240ピクセル,画素ピッチは23.5μm×23.5μm,フレーム・レートは60Hzである.2007年4月ころから出荷しており,価格は50万円前後.

 会場では,画素数が640ピクセル×480ピクセルの赤外線画像センサ「HX3100」を搭載したモジュールが取得する画像も紹介していた(写真2).こちらは2008年中の製品化を予定している.価格は100万円前後を予定.

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[写真2] 画素数が640ピクセル×480ピクセルの赤外線画像センサ「HX3100」を組み込んだ試作カメラで撮影した会場のようす

● 画素ごとに露光時間を制御できるCMOS画像センサ

 米国Pixim社は,ダイナミック・レンジが100dB以上と広いCMOSカメラ・モジュールを展示した(写真3).画素数は38.8万画素.同社のCMOS画像センサ「D 1110」は,各画素にA-Dコンバータを搭載している.このデータを任意のタイミングおよび露光時間で取得できるため,従来の監視カメラで問題となっている画像の一部の白飛びやフリッカなどを軽減できる.

 会場におけるデモンストレーションでは,他社のカメラと比較しながら,50Hzで駆動する蛍光灯の下でフリッカが生じないこと,60Hzで駆動する蛍光灯の下で色の変動がないこと,60Hzで駆動するLED信号機の非表示状態に同期して撮影してしまう現象が起きないこと(60Hzで点滅するLED信号機を,59.94Hzで各フィールドを更新するカメラで撮影した場合,信号機が点灯していない状態に同期して撮影を続けることがある)などを示した.

 同社のCMOS画像センサを駆動するために必要なLSIは1個で,CPU側からは電源投入時に初期設定情報を送るだけで利用できる.また,上記の特徴をもつことから,カメラの設置現場に合わせた細かい調整は不要である.従来の監視カメラは,設置状況に合わせてカメラの感度やシャッタ・タイミングなどを設定する必要があった.こうした監視カメラの設置工事は夜間に行われることが多く,担当者が昼間,設定の良否を現場で確認する必要があった.

 価格は,一般のCCD画像センサと駆動用チップセットを購入した場合のおよそ1.1倍程度という.国内販売代理店は川商セミコンダクター.

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[写真3] ダイナミック・レンジが100dB以上と広いCMOSカメラ・モジュールの外観

● 人の動きをトラッキングできる画像センサを利用した通行人カウンタ

 ニューラルイメージは通行人カウンタ「Customer-in」を展示した(写真4).一定のエリア内に侵入した人を同社の画像センサ「Intelligent Vision Sensor Unit」を利用して追跡できる.そのため,従来からある赤外線通行カウンタと異なり,同じ人がセンサの前を行き来することで発生するカウント・エラーが生じない.

 Intelligent Vision Sensor Unitは,人の視覚について研究している大阪大学の研究室から技術提供を受け,同社が製品化したもの.CMOS画像センサ内に,対象画像の動き検出やエッジ検出,コントラスト強調などをリアルタイムに処理できる回路を搭載する.そのため,高速かつリアルタイムな画像処理が求められる自動車分野やロボット分野における利用に向く.

 Intelligent Vision Sensor UnitのインターフェースはUSB2.0または100Base-TX.画素数は128ピクセル×128ピクセル,フレーム速度は60フレーム/s,光学系のサイズは1インチ.価格は30万円から(アカデミック・ディスカウントあり).

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[写真4] 人の動きをトラッキングできる画像センサを利用した通行人カウンタ「Customer-in」の外観

● 電波による情報漏えいの可能性を低くした無線通信システム

 イトーキは,電波の干渉や情報漏えいの可能性が低い無線通信システム「2次元LANシステム」を展示した(写真5).無線LAN対応のパソコンやプロジェクタなどをLANシートと呼ばれる伝送媒体の上に置き,これを介してアクセス・ポイントからの電波を受け取る.従来の無線LANシステムは,アクセス・ポイントに対するデータの送受信を無線で行っている.そのため,第3者に情報が漏えいする可能性がある.本システムは,アクセス・ポイントから机上までの通信を有線LANで,机上のLANシートからパソコンまでの通信を無線で行う.机上から1m離れると通信できなくなるため,誰がいつLANに接続しているかを判断しやすい.

 LANシートは,ノート・パソコンなどと接触し電波をやりとりするメッシュ層,メッシュ層からの電波を伝搬する誘電層,電波漏洩を防ぐシールド層で構成される.2次元LANシステムはLANシート以外に,LANシートのメッシュ層に密着し電波を中継する近接コネクタ,有線LANのデータをLANシート内に伝わる電波に変換するLANシート用アクセス・ポイントで構成される.開発したのは東京大学の研究者が創設したベンチャ企業のセルクロス.

 無線LAN部の規格はIEEE802.11a.周波数帯域は5.18GHz~5.320GHz,通信速度は理論値で54Mbps,チャネル数は8.

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[写真5] 電波による情報漏えいの可能性が低い無線通信システム「2次元LANシステム」(女性の足もとにあるのがLANシート用アクセス・ポイント,ノート・パソコンの下にある黒いシートがLANシート)

● 最大検知距離150mの侵入者センサ

 日立国際電気エンジニアリングは,マイクロ波を利用した侵入者センサ「KIA-8824-03B」を展示した(写真6).対向型で24.15GHzのマイクロ波を利用する.最大検知距離は150m,検知幅は約1.3mである.人および車両を検知対象とし,雨や雪,小動物,落ち葉などによる誤検出を防止するAGC(automatic gain control)機能を持つことが特徴.電波の設定チャネル数は12.

 送信出力は10mW以下で,無線局免許の申請は不要.外形寸法は120mm×56mm×122mm,重量は0.7kg以下.

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[写真6] 最大検知距離150mの侵入者センサ「KIA-8824-03B」の外観

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