Capers Jones氏,JaSSTでソフトウェア品質を語る ―― ソフトウェアテストシンポジウム2008東京(JaSST'08 Tokyo)

組み込みネット編集部

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レポート 2008年2月 1日

 2008年1月30日~31日,目黒雅叙園(東京都目黒区)にて,「ソフトウェアテストシンポジウム2008東京(JaSST'08 Tokyo)」が開催された(写真1).ソフトウェア開発の定量化手法や品質に関して多数の著書を持つ,米国Software Productivity Research(SPR)のCapers Jones氏が「Software Quality in 2008」と題した基調講演を行った.また,さまざまなテスト手法の適用事例や実施する際の要点,テスト・ツールやサービスなどを紹介する講演が行われた.主催は,特定非営利活動法人(NPO法人)であるソフトウェアテスト技術振興協会(ASTER)

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[写真1] 基調講演の様子
米国Software Productivity Research(SPR)のCapers Jones氏が来日し,ソフトウェアの品質確保の重要性とポイントについて講演した.

 Capers Jones氏は,コンサルティング組織であるSPRがこれまでに担当してきた事例に基づいて,さまざまな業種においてソフトウェアの失敗が多額の損失を引き起こしていることを検証してみせた.そして,そのためにソフトウェア技術者は企業の上層部から「大きな問題を生み出す人たち」とみなされがちであると指摘した.また,品質向上に効果的な手法とそうでないものを挙げつつ,ソフトウェア品質の向上においては,ただ一つの手法があればこと足りるということはないと述べた.

● ASTAメンバによるアジア各国からの講演も

 また今回は,本シンポジウムの初めての試みとして,国際的なソフトウェア・テストに関する組織「Asian Software Testing Alliance(ASTA)」によるセッションが設けられた(写真2).ASTAは,アジア圏においてソフトウェア・テスト産業や技術を発展させることを目的として2007年に設立された組織である.2007年10月には,韓国において第1回となる国際カンファレンス「ASTA 2007」を開催した.今回のセッションはASTA 2007に続く試みであり,中国や韓国,マレーシア,ベトナムといったASTA参加国がそれぞれ1講演ずつの発表を行った.

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[写真2] ASTAセッションの様子
ベトナム Software Testing Alliance Vietnam(STAV)のYongtae Jung氏は,テスト・マネージメントの手法について講演した.

● テスト手法の奥にある分析方法こそが肝

 ソニーの永田 敦氏は,HAYST法とマインド・マップを使ったテスト分析の実施例を紹介した(写真3).HAYST法は富士ゼロックスが考案した,直交表を用いるテスト手法であり,テスト対象を分析するために,機能や条件をFV表(Function Verification Table)として表現する.永田氏は,FV表を作成する前に,メニューや動作仕様といった仕様書の内容をマインド・マップで表現し,さらに顧客の視点で機能や機能以外の要求などを追記することにより,優先度の高いテスト項目を網羅できると述べた.

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[写真3] ソニー 永田 敦氏による講演「テスト分析の手法 ―HAYST法とマインドマップをつかって―」の様子
本セッションは,実際に講演が行われた第1会場のほか,第2会場で中継が行われた.第1会場,第2会場とも満席になるほどの人気だった.

● 楽しみながら考えさせる仕掛け作り

 ソフトウェア技術者ネットワーク(S-open)は,出荷判定会議を寸劇として実演し,出荷判定の判断基準について聴講者に意見を募った(写真4).寸劇には,販売する製品のソフトウェア開発担当者や品質保証部の担当者,メトリックス担当者,保守担当者,営業担当者などが登場し,それぞれの立場から出荷判定に関する材料を提供した.特に,「まれにしか発現しないがハングアップに至る不具合が残っている」という設定で,このまま出荷してよいかどうかを議論した.

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[写真4] ソフトウェア技術者ネットワーク(S-open)による出荷判定ライブ
開発担当,営業担当,メトリックス担当など,それぞれの担当者が堂に入った演技を披露した.

 東京工芸大学 教授の岩谷 徹氏は,「パックマンを事例としたゲーム設計のあり方」と題した講演を行った.岩谷氏は,1980年に発表されたコンピュータ・ゲーム「パックマン」シリーズを開発した元ゲーム・クリエータである.ゲーム・オーバにつながるような失敗の経緯をプレーヤに明確に理解させ,「こうすれば勝てるのではないか」という攻略方法が簡単に頭に浮かぶようにゲームを作ることが重要だという.それによって,プレーヤはその攻略方法を実行したくなり,そのゲームにはまっていくのだという.

 ゲームには,「楽しい,面白い」という要素が不可欠であり,それが継続する力になる.すでに傷病者のリハビリテーションなどにもそういった考え方が取り入れられており,岩谷氏は,ゲーム的な要素がこれからの社会にどんどん入っていくだろう,と述べた.

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