MATLAB/Simulinkによるモデル・ベース設計をアピール ―― MATLAB EXPO 2007
サイバネットシステムとMath-Works社は「世界を動かす,次世代のモノづくりが見えてきた!」をテーマに,MATLAB/Simulinkによるソリューションが一堂に会する技術コンファレンス「MATLAB EXPO 2007」を2007年11月28日,東京プリンスホテル パークタワー(東京都港区)で開催した(写真1).本コンファレンスは,研究者・開発エンジニアを対象に,課題の解決に有用なMATLAB/Simulinkファミリの適用事例や導入事例の紹介,最新技術動向などの情報の提供を目的としている.
展示会場では,「MATLAB展示コーナー」,「サイバネットシステム展示コーナー」,「体験コーナー」など,全体を五つのコーナに分け,アルゴリズム開発やデータ解析,制御系設計,信号処理,通信システム開発などの用途で使用されているMATLAB/Simulinkの最新製品やサービスを多数展示した.また,自動車やエレクトロニクス,通信,重工業など,40社以上のパートナ企業が出展し,MATLABの導入効果をアピールした.
また,千葉大学大学院 工学研究科 人工システム科学専攻(機械系コース)教授の野波 健蔵氏による「最近の自立制御技術の動向とロボティクスへの応用」(写真2),モーションコントロール技術研究所 所長の大川 進氏による「物創り時代の企業内外での技術者教育」など,四つのキーノート・トラックをはじめとして,ユーザ,ベンダ,テクニカル,パートナなどの5分野で,60以上のセッションが催された.
● モデル・ベース・デザインをアピール
「MATLAB展示コーナー」では,アルゴリズム開発やデータ解析,制御系設計,信号処理,通信システム開発などの用途で使用されているMATLAB/Simulinkファミリの最新製品や,モデル・ベース設計の中核となるSimulinkの適用事例,大規模開発で使いこなすためのノウハウなどが紹介された(写真3).
「通信処理ハードウェア・ソフトウェア実装」のコーナでは,Simulinkモデルを基に開発を進める,モデル・ベース設計を利用したデモンストレーションが示された.ここでは,Simulinkで作成した一つのモデルから,DSPとFPGAに実装し,動作検証を行い,統一環境下においてソフトウェアとハードウェアに実装可能なことをアピールした.シミュレーションを行った統一環境下でコード生成からテスト・検証までをシームレスに行うことができるため,開発資産の流用による開発効率の向上や修正工数の低減が期待できるという.
「MATLAB/Simulinkとモデルベース設計による二足歩行ロボット・シミュレーション」のコーナでは,ゼットエムピー製の二足歩行ロボット教材「e-nuvo」(写真4)を利用して,ロボットの制御則の評価/検証をSILS(Software in the Loop Simulation)で行う事例を紹介した.モデル・ベース設計におけるSILSは,シミュレーション環境上に構築した制御対象のモデルに対して,制御方式をソフトウェアとして評価,検証するものである.事例紹介では,レガシ・コードと等価なSimulinkモデルの作成,Cコードの自動生成とその評価,SILS環境の構築などの一連の処理をデモンストレーションした.
「JMAAB制定スキル標準対応 MBDトレーニングのご紹介」のコーナでは,同社が開催を予定している,MBD(Model Based Develop-ment)技術者の人材育成フレームワークに対応するMBDトレーニングで取り上げる内容の一部を紹介した.会場では,トレーニングに利用が予定されている,LEGO MINDSTORMS NXTによる制御ロジックの作成,組み込みから実機検証までの流れの紹介と,Bluetoothによるラジコン操作が可能な自動車「NXTGT」,および車両移動型倒立振子ロボット「NXTway」(写真5)が展示されていた.
● システム・レベル設計検証プラットホーム
日立情報通信エンジニアリングは,システム・レベル設計の検証用ボードである「LogicBenchシリーズ」(写真6)を展示した.本製品は,Xilinx社のFPGA Virtex-5シリーズを搭載している.実機完成前にデバッグが可能で,実チップの完成前にシステムの動作を確認できる.また,専用のLogic Bench Compilerによる論理分割とデバッグに対応しており,論理分割ではオート/セミオート/マニュアルにより,的確にFPGAの分割を実現しているという.
● DSPリアルタイム・シミュレータ
システムデザインサービスは,ポータブル型DSPリアルタイム・シミュレータ「PDRS-6000」(写真7)の展示を行った.本製品は,MATLAB/Simulink上で,制御対象物の数学的モデルをブロック線図を用いて作成し,DSPによる演算処理と入出力制御を行い,リアルタイム・シミュレーションを行う.Ethernetによりノート・パソコンなどと接続することで,ポータブルな計測・制御システムを実現できるという.16ビット,16チャネル,100kHzのA-D変換,16ビット,8チャネル,100kHzのD-A変換,および16点ディジタル入出力の機能を標準で装備している.