実写とCGをリアルタイム合成する展示に注目が集まる ―― 第15回 産業用バーチャル リアリティ展

組み込みネット編集部

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レポート 2007年7月18日

 2007年6月27日~29日,東京ビッグサイト(東京都江東区)にて,3次元表示や3次元計測,シミュレーション,CG(computer graphics)などに関する展示会「第15回 産業用バーチャル リアリティ展」が開催された(写真1).3次元表示などについての研究や装置の試作は十年来行われている.近年,パソコンのCPU性能が飛躍的に向上したことにより,実用化の時期を迎えた製品が増え,来場者の注目を集めた.

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[写真1] 第15回 産業用バーチャル リアリティ展の会場入り口付近
2007年6月27日~29日,東京ビッグサイトにて開催された.

●実写とCGをリアルタイム合成する

 ILTJは,実写映像とCG映像をリアルタイム合成するシステムのデモンストレーションを行った(写真2).例えば,CGで作った複数匹のパンダを実写映像中の机の上に整列させる.隊列は円や四角,三角などで,人の手の動きで隊列の形を指示できる.本システムは,ビデオ・カメラを接続した描画用パソコンと,人の動きを検出するセンサを接続したコンテンツ・サーバで構成する.

 人が指示する形の読み取りには,米国POLHEMUS社製の位置計測システムを使う.具体的には,机上に仕込まれたトランスミッタが発する磁気を,人が手にしているペン型のレシーバで読み取る.磁気センサの検出範囲はおよそ1m.カメラなどの動き検出デバイスに比べると誤差が少なく,ミリ単位の検出が可能.カメラによるマーカ計測と併用することで,カメラが写している範囲の人の動きを認識できる.

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[写真2] 実写とCGをリアルタイム合成するシステムによる画像

●質感や広さなどを評価できる3D画像表示ソフトウェア

 エルザ ジャパンは,自動車メーカのデザイナが,ヘッドライトやホイール,内装の質感や広さなどを評価できる3D画像表示ソフトウェア「RTT Delta Gen Ver.7.0」を展示した(写真3).例えば,自動車のメカ開発者が設計した外装やシート形状などの3次元CADのデータを取り込む.次に,人の目に見える範囲の形状データを抽出し,合成する.

 CATIA V4/V5,Maya,Pro/E,Alias studio Wire,UGなどの3次元CADに対応する.価格はソフトウェアと3次元CADのデータ・コンバータ,保守料金込みで600万円から.

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[写真3] 質感や広さなどを評価できる3D画像表示ソフトウェア

●宇宙飛行士のロボット・アーム操作訓練を模擬したシステム

 旭エレクトロニクスは,宇宙飛行士の運用訓練を模擬したシステム「ロボットアーム操作訓練シミュレータ」を展示した(写真4).独立行政法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA)の依頼を受け,米国NASA(National Aeronautics and Space Administration)で実際に使われているシミュレータを再現した.シミュレータのベース・ソフトウェアとして,同社が扱うディジタル評価検証支援ツール「VirDSE」を用いる.

 VirDSEは,CATIAやPro/ENGINEERなどの3次元CADに対応する.3次元CADのデータを取り込んでリアルな3次元映像として表示する機能や,さまざまなセンサの計測値を取り込んで処理する機能,画像の映り込みや陰影を描画する機能などを備える.

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[写真4] 宇宙飛行士のロボット・アーム操作訓練を模擬したシステム

●最大8.5mのドーム型スクリーンによる立体映像

 松下電工は,3次元映像を表示するシステム「CyberDome」を展示した.2台のプロジェクタから照射された映像を,平面ミラーを介してドーム型スクリーンに表示する(写真5).ドーム型スクリーンには,開口部の径が最も長い部分で1400mm,1800mm,3700mm,8500mmの4品種を用意する.美術館や博物館の展示,都市開発や土木事業の事前確認,観光ガイドなどにおける利用を見込む.

 コンテンツについては,ステレオ・カメラで取り込んだ画像や3次元CG作成ソフトウェアによる画像を,同社の専用プラグインで変換して作成する.

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[写真5] 開口部1.4mのドーム型スクリーンによる立体映像
専用の眼鏡をかけないと立体映像には見えない.

●ハイビジョン映像に対応する3次元画像作成・編集ソフトウェア

 レッツコーポレーションは,ハイビジョン映像に対応する3次元画像作成・編集ソフトウェア「Stereo Edit HD」を展示した(写真6).本ソフトウェアは,Windowsパソコン上で動作する.

 角度が異なるカメラ2台から撮影した2枚の画像の重ね合わせの程度を1フレームずつ調整できるため,立体感の微調整が可能.早稲田大学大学院 国際情報通信研究科の河合隆史研究室と共同開発した.

 XGA(1024×768ピクセル),SXGA(1280×1024ピクセル),UXGA(1600×1200ピクセル)の解像度に対応する.価格は21万円.

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[写真6] ハイビジョン映像に対応する3次元画像作成・編集ソフトウェア

●3次元プリンタを利用してJAXAから提供された地形データを印刷

 きもとは,米国Contex Scanning Technology社の3次元プリンタ「DESIGNmateCx」によって製作した立体地形データを展示した.独立行政法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA)から提供された八ヶ岳周辺の地形データを基に,縮尺を1/56000にして印刷した(写真7).陸橋工事や都市計画の策定に利用できるという.

 「DESIGNmateCx」は,石こうやでんぷん,セラミックスなどの粉(パウダ)を,600×540dpi(dots per inch)で254mm×356mmの範囲に印刷できる.高さは203mmまで対応可能.

 JAXAから提供されるGeoTIFF形式のデータを,本プリンタ向けのデータに変換するソフトウェアも提供する.

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[写真7] 「DESIGNmateCx」を利用して,八ヶ岳周辺の地形を縮尺1/56000で印刷

●光位置センサを利用して1μm以下の変位を測定

 豊中研究所は,光位置センサ(PSD:position sensitive detector)を利用して,位置の変位を測定できる装置「PS1630」を展示した(写真8).変位のサンプリング速度は25μs(40kHz).PSDの分解能は1/4000以上.レンズとの組み合わせや測定視野にもよるが,1μm以下の分解能を実現できる.

 会場では,スピーカにLEDを取り付け,その振動による光の変位を測定した.音源にはオルゴールを用いた.

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[写真8] 光位置センサを利用して微細な振動による変位を測定

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