ハイパワーLEDやパワー・モジュール向けの放熱基板が熱い ―― JPCA Show 2007

組み込みネット編集部

tag: 実装

レポート 2007年6月14日

 2007年5月30日~6月1日,東京ビッグサイト(東京都江東区)にて,プリント基板や実装技術に関する展示会「JPCA Show 2007」が開催された(写真1).会場では,高輝度/ハイ・パワーLEDやパワーモジュールなどから発生する熱を空気中やきょう体に効率良く逃がす基板の展示に注目が集まった.

 主催は社団法人日本電子回路工業会(JPCA).JPCA Show 2007は,2007 プリント配線板総合技術展(PWB Technology EXPO 2007)や2007 FPC技術展(FPC EXPO 2007),2007 デザイン・エンジニアリング・ソリューション展(DES EXPO 2007),2007 試験・検査・評価・分析総合技術展(MicroTEST 2007)から構成される.

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[写真1] JPCA Show 2007会場入り口付近
5月30日~6月1日,東京ビッグサイトにて開催された.

●1MHz伝送時の誘電損失がFR-4基板の1/100と低いLTCC基板を展示

 電子部品・基板メーカのコーア(KOA)は,LTCC(low temperature co-fired ceramics;低温同時焼成セラミックス)ベースの多層配線基板を展示した(写真2).LTCCはセラミックスを850℃くらいで焼結させたもので,放熱性や耐熱性,耐湿性,高周波特性に優れる.融点が960℃前後のCuやAgを内部にパターンニングでき,多層化が可能.

 1MHz伝送時の本基板の誘電損失は,FR-4基板の約1/100,1GHz伝送時は約1/5と低いという.また,基板の内層にコンデンサやインダクタ,抵抗といった受動部品を容易に形成できる.携帯電話や無線LAN,アンテナなどの基板に向くという.

 セラミックスそのものの熱伝導率は3W/m・kと樹脂基板に比べて高い.さらに,サーマル・ビアを設けることで熱を裏面のヒートシンクに逃がすことができる.そのため,パワー・モジュールやパワーLED向けの放熱基板として利用可能である.

 同社ではLTCC基板の配線形成に,スクリーン印刷ではなく「インクジェット配線法」を用いることで配線幅/配線間隔が30μm/30μmのパターンを実現する技術を確立している.なお,微細配線を可能にしたインクジェット配線法は,セイコーエプソンと同社が共同で開発した.

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[写真2] LTCC上に形成された配線パターン

●メタル・ベース配線板やメタル・コア配線板のラインアップを展示

 日本シイエムケイは放熱基板「CMK-COMP」を展示した(写真3).メタル・ベース配線板とメタル・コア配線板,表面の銅箔を100μm~400μmと厚くした両面厚膜銅配線板の3種類がある.

 メタル・ベース配線板の構造には片面配線,両面配線,両面配線キャビティ構造の3種類がある.さらに,絶縁層に用いる樹脂材料の異なる基板を用意する.すなわち,誘電率の低い材料を使い,高周波信号に向く「MB-1」,熱伝導率が高い樹脂を使って放熱性を高たパワー・モジュール向けの「MB-2」,弾性が低く収縮に強い,車載機器向けの「MB-3」がある.

 メタル・コア配線板には1層コアの品種と2層コアの品種がある.2層コアの品種には,例えば6層基板において,3,4層目にコアを配置する品種と2,5層目にコアを配置する品種がある.後者はBVH(blind via hole)により,表面部品の発熱を間に樹脂を介在させることなくコアに伝えることが可能.

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[写真3] パワー・モジュールを銅コアに直付けした基板

●熱拡散シートを表面に設置して放熱性を高めた基板を展示

 ユーアイ電子はカーボンでできた同社独自の熱拡散シートを,配線パターンとベース基板の間に挟み込み,放熱性を高めたプリント基板を展示した.従来,基板に搭載される部品の熱を拡散させる方法として,アルミや銅をベース基板とする方法や,厚い銅を内層に埋め込む方法があった.前者には多層化が難しいという欠点が,後者には基板内で熱を拡散させることは可能だが,熱そのものを外に逃がすことが難しいという欠点がある.同社の熱拡散シートは,熱が拡散するだけでなく,基板端からの放熱が可能である.そのため,きょう体などへ熱を逃がしやすいという特徴がある.

 例えば,写真4のような1WクラスのLEDが2cm間隔で並んだ基板において,熱拡散シートが無いときは電流制限抵抗の周りの温度が75℃,熱拡散シートを挟んだ基板では電流制限抵抗の周りの温度が55℃という測定結果が得られた.

 価格は両面基板で従来基板の3倍ほど.層数が増えたり出荷枚数が増えれば,コストを抑えられるという.

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(a)1W級のLEDが2cm間隔で並んでいる

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(b)FR-4基板と同社製放熱基板の比較

[写真4] 熱拡散シートを表面に設置して放熱性を高めた基板

●熱伝導率が1.8W/m・Kと高い基板を展示

 パナソニック エレクトロニックデバイスは,高熱伝導基板を展示した.車載向けとして3年後の実用化を目指す.従来の一般樹脂基板の熱伝導率(0.4W/m・K)より高い熱伝導率を持つ樹脂を採用することで,1.8W/m・Kを実現できるという(写真5).また,従来の基板表面にはソルダ・レジストが使われていたが,太陽インキから調達した放熱用の特殊なレジストを利用することで,さらに基板の放熱性を高めたという.

 同社では,自動車のモータ駆動部,DC-DCコンバータ,インバータ回路,ハイブリッド電源などにおける需要を見込んでいる.

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[写真5] 熱伝導率が1.8W/m・Kの高熱伝導基板の構造

●自動車で採用実績のある「組み立て時に折り曲げ可能な基板」を展示

 ドイツのruwel社は,組み立て時に折り曲げ可能なセミフレックス基板を展示した(写真6).通常のリジッド基板の一部を高精度ルータで削り,最小曲げ半径5mm,最大曲げ角度180°,最大曲げ回数3回のフレキシブルな部分を形成する.

 同社はさらに,大電流対応の厚膜銅はく基板を展示した.銅厚みが105μm,140μm,175μm,210μm,400μmの5品種を揃える.自動車のジャンクション・ボックス(ヒューズ・ボックス)において,複数のメーカによる採用実績を持つ.

 国内の販売代理店は加賀電子

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[写真6] 最大折り曲げ回数3回のセミフレックス基板

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